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邂逅

作者: 美緒

 あと1ヶ月。

 その日は私の誕生日。

 そして……あなたと初めて会った日。

 あなたは覚えているだろうか?

 あの日交わした約束を――。


 あなたはどうしてここにいるの?

 あなたの望みは何?

 そう問いかけたとき、あなたは光を宿さない瞳でこう告げた。

 ――望み? そんなものないよ。私は、全てを失ったのだから。

 悲しそうな瞳。触れたらすぐに壊れてしまいそうな心。

 そんな笑顔を失った少女は、冷たくそう言い放った。

 ――全てを拒絶しているかのように見えた幼き少女。

 私はあなたに何ができるだろうか?

 失ったならまた手に入れれば良いじゃない。全く同じものじゃないかもしれないけど、それ以上のものが手に入るかもしれない。

 そう彼女を励ました。

 ――そんなの、ただの夢物語でしょ? あなたに何がわかるの? 大切なものを失う悲しみも、辛さも、わかるわけない!

 そのとき私は痛感した。

 彼女が負った傷は大きく、とても深いものなのだと。

 13歳という精神的にも不安定な時期にそんな傷を負い、古傷までもを悪化させてしまった少女。

 まだ幼き彼女にその傷は、重すぎる――。

 あなたは独りじゃない。大丈夫。私はずっと、あなたの傍にいるから。

 彼女の助けになりたいと、支えになりたいと、そう強く願った。

 ――本当に……? 私のこと、嫌いじゃない? ずっと……傍にいてくれる?

 今にでも消えてしまいそうな声で、彼女はそう問いかける。

 その様は、とても13歳とは思えなかった。生まれたての赤子のように弱弱しく、今にでも消えてしまいそうだった。

 それほどまでに、彼女は弱っていたのだ。

 約束しよう。私はずっとあなたの傍にいる。あなたのことを、決して嫌いにはならない。

 あの日、私は幼き少女と約束を交わした。決して破られることのない約束を――。

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