ありす 謹賀新年!
あけましておめでとうございます。
今年が皆様にとって良いとしでありますように。
「あけまして……」
「「「おめでとうございまああああああああっす!」」」
かしゃん!と高く上げられた杯に二つの杯がうち合わされる音。
声高らかに慶を謳う。
初日の出は屋根の上で見た。綺麗だった。
寒かったのも忘れるような気がして、見惚れた。
今日は元旦。一年の始め。
今年もきっとまた素敵で当たり前の一日が続くんだ。
窓が何回も割れたり、障子はもう使わないことにしたけど、きっとものは壊れる。
なんて素敵。
当たり前だから、何より素敵。
今はまだあにたちは暴れ始めてない。
その方がいいんだけどね。
◇◆◇
……。
あれ、おかしいな。さっきまで暴れてなかったのにどうしてこんなことなった。どうして新年早々紙吹雪が舞ってるんだろう?
いや、うん。雪みたいで綺麗だけどさ。
とりあえず思い出してみよう。
まず……兄がお酒を飲んだ。成人してるからいいんだけどね。
で、義兄に進めた。……駄目じゃね?義兄十八歳だよ?それともお正月ならいいのか?
一触即発★
って感じになったので年賀状を取りに行った私。
あまり届いてなかったけど、でも確かに届いてた。
枚数的に言うと、
兄>私>>>越えられない壁>>>義兄
って感じだった。
まぁ、ね。義兄引きこもってるし。
小学校中学校と極力人と関わらないようにしてたしね。ツンツンしてて……可愛かった。
……いや、その当時私も義兄も女の子だと思ってたし。美少女だったし。
あ、今も美少女か。
で、部屋に戻ると、まぁ、まだ何も壊れてなかった。とりあえず意識をそらそうと思い立ち、分けた年賀状を兄に投げてみた。
フリスビーの要領で。
投げた年賀状は義兄に抱きつこうとしていた兄の顔面にクリーンヒット。
え、義兄の年賀状?ないよそんなもの。
兄は吹っ飛んだ!
……あれ、やばい。無意識に全力でやっちゃった?
大丈夫だよね?多分。死んでないよね?一応勇者だったもんね?
そんなこと思ってたら手に持ってた私宛の年賀状が取られた。
義兄だ。
なんだと思って見てたら名前を確認しだして幾つか抜き取った。
あれ、義兄宛のやつ混じってた?
抜き取った年賀状を義兄は……
ビリビリに破いた。
…………………………え。
はらはらと落ちる紙吹雪は年賀状。
ちょっと拾って差出人を確認……できなかった。主に名前のあたりが重点的にビリビリにされてる。
……何故だ。
「有守にぃ」
「なぁに?」
「その年賀状さ……どうして破いたの?」
にこにこにこにこ。
ニコニコニコニコ。
義兄は笑顔。
私も笑顔。ただし私の笑顔には威圧を乗せてみた。
いやね、私もあんまり年賀状もらえるわけじゃないからさ。ちょっとでもいただけた年賀状は嬉しいから大切にとっときたいんだよね。なのに……びりびり。
ちょーーっと、気になるのですよ。
「それより有子さ、誰から届いてたか、見た?」
……?あんまり見てないけど。
「俺というものがありながら他の男からものが届くなんて絶対駄目」
なんじゃそりゃ。
義兄は私の中じゃ半分くらい女の子だよ?とびきり美少女、胸がないだけの。
ていうか、他の男って。……誰だ?
「とりあえず、気にしちゃ駄目。ね、忘れて?」
解せぬ。
◆◇◆
夜遅く。有子が眠ってしまった、そのあと。
「有朱兄さん?」
「何ですか有守」
有朱の胸ぐらを掴んだ有守がいた。
恐ろしいほどにキラッキラした笑顔で胸ぐらを掴み上げ、首元にスタンガンを突きつけていた。
「有子の年賀状、どうしてあんなことが起きたのかなぁ?」
「いやぁ、すみません。こっちもうっかり忙しかったんです」
「うざいからその口調やめてよ。それに忙しかったなんて言い訳にならないよね」
ニコニコという擬音がつきそうなほどに笑顔な義兄は胸ぐらを握る手に力を込めた。
下手したら有朱の首が閉まるかもしれないというギリギリのライン。
「有朱兄さんがしっかりしてないせいで俺が今から有子に年賀状を下さった方々に社会的に抹殺しなくちゃいけないでしょ?」
「とかいいつつ楽しんでますね」
有守は一瞬きょとん、とした顔をした。
けど、すぐに笑顔に戻る。
「そうだね」
そして二人は笑顔で顔を見合わせた。
「有子にはずっとこの家にいてもらわなきゃいけないしね」
……本当は、今回はあんまりヤンデレっぽくなくてほのぼの日常の予定でした。