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神鳥

遠糸VS神鳥の対決

 神鳥界、彼等は、神の遣いとして働く事が運命付けられた存在。

 生まれた時より、遣える神を決められ、その神の信託を守る為に命を落とす。

 そんな束縛から逃れようと彼等は、この世界にやってきた。



 異界転移八極陣での神鳥との戦いで一番の戦力になっていたのは、遠糸の長の女性、トオルとその妹、アユミだった。

 先祖伝来の神器、九尾弓キュウビキュウを使って、次々と神鳥達を射落としていた。

 そんな中、金色の翼を持つクリムゾンクラスの神鳥が現れる。

『我の、金翼鳥コンジーの邪魔をするな! 我らは、自由になるのだ!』

 それに対して通が怒鳴り返す。

「こっちの世界に移住したいんだったら、神様に許可貰ってからしてよ! そうでない限りは、不法入界だ!」

『神々が我等の脱界を許すわけが無かろうが! 問答無用!』

 そう言って、金色の羽根を飛ばしてくるコンジー。

 強力な力を持ったそれを、防いだのは、竜の鱗を思わせる装備、超竜武装した、百剣だった。

「百剣さん、ありがとう」

 歩がお礼を言うと、百剣がコンジーを睨みながら言う。

「油断するな」

 通は、不機嫌そうに羽矢筒から、純白ジュンパク色鳥矢シキチョウヤを取り出し、番える。

「解ってるわよ!」

 射られた純白色鳥矢は、コンジーに吸いつけられるように進んで行き、直撃した。

「直撃、これだったらダメージがある筈だよね」

 歩がそういった時、通が叫ぶ。

「反射された、避けて!」

 通は、咄嗟に横に避けるが、歩の回避行動は、遅れた。

 避けきれないと思った時、百剣の剣が振るわれる。

『シャドーコメット』

 闇の星が戻ってきた光と対消滅する。

『この程度の力では、我は、滅ぼせぬぞ!』

 コンジーの言葉を聞いて百剣が質問する。

「完全に反射されたのか?」

 通は、コンジーを観察して言う。

「違う。小さいけど、ダメージは、ある。でも、あの威力は、あたしが放ったのとほぼ同様よ」

 それを聞いていたのかコンジーが告げる。

『そうだ。我は、人が愚かにも天に唾を吐いた時にその唾が自らにかかるのと同じ、神に弓引いた物の攻撃をその身で受け、同じ力の攻撃を返す能力を持つ』

 通が舌打ちする。

「完全に反射ならまだ、手があるのに?」

「同じじゃないの?」

 歩の言葉に百剣が答える。

「反射なら、反射を許さない連射で有効なダメージを与える事が可能だが、一度ダメージを吸収してから打ち返してきて、特に神の代行者としての能力としたら、あいつが死んでも反射は、あるぞ」

 コンジーが宣言する。

『我を倒すには、自ら死ぬ覚悟を持って来い!』



 神鳥達は、上空から攻めてきて居た。

 その数に、遠糸の分家達だけでは、追いつかない。

 そこで較は、追加戦力を用意していた。

 昔、霧流の長、七華ナナカと共にDDCが繰り出す竜兵器と戦った事もある、戦闘機乗り達だ。

「これ、貰っていいんだよな?」

 最新型の対異邪装備を搭載したマサムネⅢに乗る、晴晴ハレバレ五郎ゴロウの言葉に、相棒でムサラメⅢに乗っている、晴野ハレノ九十九ツクモが通信機越しに答える。

『これの維持費がどれだけするのか解ってるのか?』

 暫く沈黙した後、五郎が答える。

「月百万もかかるわけ無いよな?」

『一回の出撃に百万かかるそうだ。持って帰っても運用出来ないな』

 九十九の答えにため息を吐く五郎。

「これがあれば、どんな異邪が来ても即に倒せるのにな」

 真剣な声で九十九が言う。

『異邪の中には、どうしようもない化け物が居るって事くらい、DSS時代に理解したと思ったがな』

 頬を掻きながら五郎が言う。

「そうだったな。まあ、とりあえず今は、目の前の敵を倒す事が優先だ!」

 次々と神鳥達を撃墜していく五郎達であったが、その中、信じられない物を発見する。

「おい、あれって目の錯覚じゃないよな?」

『残念ながら、こっちのレーダーにもちゃんと映っている』

 九十九の答え通り、マサムネⅢのレーダーにもちゃんとそれは、映っていた。

「どうしろって言うんだ?」

 五郎のボヤキに九十九が言う。

『取り敢えず、八刃の長に連絡だ』

 こうして、状況は、較に通達されるのであった。



 特殊司令室で朱雀エリアに侵入してきた神鳥の集団を見て良美が言う。

「しかし、これだけの集団がどうして、ここまで発見されなかったんだ?」

 較が資料を確認しながら答える。

「伊達に神の遣いをやっていた訳じゃないでしょ。そこそこ頭は、ある。バラバラに移動して、こっちの迎撃範囲に入った所で密集型陣形をとってる。ついでに言えば防御をリンクさせる事で、防御力も桁外れに上げてて、現在の迎撃体制じゃ迎撃不可能だよ」

 良美があっさり言う。

「それで、どの奥の手を使うの?」

 較が眉を顰めて言う。

「奥の手を隠して置けるほど、こっちには、余裕なんてないよ」

 平然と良美が言う。

「それでも、手があるんでしょ?」

 較がため息混じりに言う。

「確実性が低い手がね。四門さん、あれの成功率は、どのくらいですか?」

 通信機から元DDCの科学者で、オーフェンにもいた上、先行者にもなった、何度も八刃と敵対行動をとっていた雲集四門が答える。

『界の狭間からサルベージした、万年竜の背骨を使った特別ミサイルだったら、二割が良い所だぞ』

 較が頬を掻きながら言う。

「失敗した時のこっちの被害は、どうなります?」

『空中で爆発する限り、フォローは、十分可能だな。しかし、一発しかないのを使っても良いのか?』

 四門の質問に較が頷く。

「私は、確立が低い兵器を温存して、被害を広げるつもりは、ありません。失敗しても良いから撃っちゃって下さい」

『解った、軌道と影響範囲の予測を送るから、退避の指示を頼むぞ』

「了解」

 較は、送られて来た情報を元に、退避支持を出す較に良美が言う。

「ふと思ったんだが、このミサイルにしろ、マサムネⅢとかって日本国内で所有していて問題ないのか?」

 較が遠くを見て答える。

「あちきのホワイトファングの方が数倍危険だって認識してるから、特におとがめないよ」

「なるほどな。八刃って存在そのものが最終兵器だもんな」

 納得する良美であった。



『そういうことで、指示した範囲からは、退避してください』

 較からの通信をマサムネⅢのコックピットで受けた五郎が言う。

「核ミサイルで武装しているより危険な学校だな」

『生身で竜と喧嘩出来る奴がゴロゴロしてるんだ。今更だろう』

 九十九の言葉に思わず頷く五郎。

 そんな目の前で、グランドが開き、そこから巨大なミサイルが発射され、神鳥の集団とぶつかった。

「……爆発しないな?」

 五郎は、鳥の群の前で空中停止する巨大ミサイルというシュールな風景を眺める事になってしまった。



『すまない。上手く、爆発機能が連動しなかったみたいだ』

 四門からの報告に小さくため息を吐いてから較が言う。

「駄目もとでしたから気にしないで下さい。また別の手を考えます」

 通信を切り、悩む較。

「これが駄目だとなると、異界転移八極陣から誰かを呼び戻すしかないな」

「向うにそんな余裕があるのか?」

 良美の質問に較が首を横に振る。

「最悪は、道を一本捨てる事になるかもしれないけど、八刃学園が落とされる可能性を考えたら仕方ない判断だよ」

 良美が真剣な顔をして告げる。

「そうなれば世界中の多くの人間が死ぬ事になるんじゃないのか? いっその事……」

 良美の言葉に較が真剣な顔をして答える。

「あちきがここを離れるのは、本気で最後だよ。八刃学園を放棄する必要が出た時のみ。それ以外では、異界転移八極陣の継続を諦める事になってもしない。あちきは、生き残りたいからね」

 苦笑する良美。

「今の台詞を死んだ奴らが聞いたらさぞ怒るだろうな」

 較が平然と言う。

「勝手に死んだ奴らに何と思われても良いよ。問題は、どれだけ仲間を生き残らせられるかなんだからね」

 良美が言う。

「あたし達の目的は、自分と自分の大切な人間、全員を護る事だからね。あたし達が死んだら何にもならない」

 そんな時、九十九から通信が入る。

『八刃の長、巨大ミサイルに近づくヘリがありますけど、なんだか解りますか?』

 較は、慌てて確認する。

「これって、四門さんの所のヘリコプター。何を考えているの?」

 すぐさま通信回線を開く。

「四門さん、何をするつもりなんですか!」

『爆発機能が上手く連動しないから手動でやるのだよ』

 当然の事のように答える四門に較が怒鳴る。

「そんな事をしたら死ぬでしょうが! その集団の対処は、こっちでやりますから、直ぐに戻ってください!」

 すると、四門が答える。

『そんな余力が無い事くらい知っているぞ。どうせお前さんの事だ、恨み言を全部自分ひとりで背負う覚悟だろうが、こっちは、老い先短いのだ。後悔が無いように好きにやらせてもらう』

「落ち着いてください。まだ最悪な展開になると決まった訳じゃないんですよ!」

 必死に止める較に対して四門は、巨大ミサイルに強引に乗り込み、操作を開始しながら答える。

『私は、確立が悪い賭けを続けて、最後の勝ちを望めるほど気長では、無いのだ。確実に勝てる一手で勝つ。自分の生き方だ、文句を言わせない!』

 そして、巨大ミサイルが爆発し、神鳥の集団は、消し飛ぶのであった。

「最後の最後まで、こっちの手におえる人じゃなかったね」

 良美の言葉に悔しそうに頷く較べであった。



 異界転移八極陣の中では、通と歩、百剣が息絶え絶えであった。

「あいつタフすぎる」

 歩の言うとおり、コンジーは、タフであった。

 通と歩が交互に九尾弓を使った、最高出力の純白色鳥矢に射られているのに関わらず、まだ普通に飛んでいるのだから。

 逆に通達は、その反撃で食らうダメージを上手く殺しているのにも関わらず、力が尽き掛けていた。

 百剣が言う。

「俺の必殺技ならば倒せるかもしれないが、その場合、俺は、ともかく周りの人間がただでは、すまない」

『どうした、それでお終いか! 我は、まだまだ戦えるぞ!』

 ゴンジーの言葉に通が決心する。

「百剣さん、必殺技の準備を。あたしと歩で遠糸の終奥義を使いますから、その反射を相殺してください」

 百剣が頷く。

 そして、通と歩が同時に九尾弓の弦を引き、呪文を唱える。

『『おお、我等が守護者、九つの尾を持ちし鳥、偉大なりし八百刃の使徒、我が魂の力に答え、その力を、我に注ぎ給え、遠糸流終奥義 九尾鳥キュウビチョウ』』

 通と歩の力が篭った矢がゴンゾーを貫いた。

『これ程の力、人間に耐えられると思っているのか!』

 その声と共にその力が反射される。

 同時に、ゴンゾーも墜落していく。

 そして、百剣に装備されている元々は、霧流の長の兄で、百剣がライバル視していた男、一刃カズバに親を殺されたダークスタードラゴン、センが言う。

『私の力を信じて下さい!』

 百剣が頷き、反射された力に向かって剣を振り下ろす。

『ノヴァブレイク』

 恒星が生まれるような強烈な力を秘めた一撃がゴンゾーから反射した力とぶつかり合い、どんどん相殺していく。

 力を限界まで消耗したセンが百剣から離れて、この世界で安定する小竜の姿になった。

『やりましたね』

「ああ」

 簡単に返事をする百剣。

『まだだ! 我が同胞の為にもお前達を道連れにしてやろう!』

 ゴンゾーは、まだ相殺しきっていない力の塊に自ら飛びこもうとした。

「出来るだけ遠くに逃げて!」

 通が叫び、歩と共に遠くに逃げようとした時、百剣は、力に向かって飛び込んでいた。

 そして、力が均等だった為、動かなかった状態から、ゴンゾーに向かって打ち落す形に変化させた。

 ゴンゾーにぶつかった力は、ゴンゾーを確実に滅ぼす事になったが、その力は、最後に力を篭めた百剣に向かって反射されるのであった。

 致命傷を受けて地面に落下する百剣にセンが飛びつく。

『百剣! 死んだらだめよ!』

 もはや定まらない視線で遠くを見るように百剣が言う。

「これも運命だ。下らないライバル心からオーフェンに協力してしまった俺には、十分過ぎる最後だ」

「誰もそんな事を気にしていないよ」

 通の言葉に百剣が言う。

「俺が気にしているんだ。まあ、一つだけ心残りは、一刃に勝てないままだった事だけだ」

 センが必死に言う。

『いまだったら、あんな奴にも負けないわ!』

 苦笑する百剣。

「どうせ、あの馬鹿も早死にするだろうから、伝言を頼む。先に地獄で待っているから、こっちで決着をつけようとな」

 そのまま動かなくなる百剣であった。

『百剣!』

 泣き続けるセンを残し、通が言う。

「命を捨てて助けてくれた百剣の為にも、一匹もこの道を通させない」

「勿論!」

 歩も頷き、神鳥達に向かっていくのであった。



 残り、九時間。

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