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不死

間結VS不死の対決

 不死界、元から生命が無い存在が大量に存在する世界。

 そこでは、僅かな生命力を求め、奪い合う。

 その中、偶々この世界にやってきた者がアンデッドと呼ばれる。

 そして、彼等の性質は、伝染するのであった。



 異界転移八極陣での間結の戦いは、持久力を試される戦いであった。

 アンデッドの大半は、動きも遅く、高い攻撃力も無い為、危険は、他の異邪に較べて低いが、間結とその分家が張った陣に次々と侵入してくるのを昇華するしか、完全に滅ぼす方法が無かった。

 長期間、広範囲の陣の維持に分家の人間達は、最初の数時間で倒れていくのであった。

 そんな中、一際強力な力を持つアンデッドが居た。

『我は、吸血王ドランキュス。汝等の生命力を全て頂く!』

 その宣言と共に、次々と分家の人間達の血と生命力を吸収していくドランキュス。

 それに対し、間結の次期長にて、八刃学園の理事長の女性、間結光ヒカリが言う。

「ただでさえヴァンパイアは、面倒なのに、あの吸収スピードは、普通じゃないよ」

 それを横に居た、その執事、谷走鏡キョウが頷く。

「クリムゾンクラスの異邪です。一筋縄で行く訳は、ありません」

 光がため息を吐きながら言う。

「どうにかして動きを止めないと」

 それに対して、鏡が言う。

「私がやってみせましょう。『影走』」

 影に消えた鏡が、分家の人間の血と生命力を吸っていたドランキュスの背後に現れる。

『影断』

 影の攻撃がドランキュスを狙うが、ドランキュスは、霧と変化して避けてしまう。

『無駄、無駄、無駄! 我は、不死身の吸血の王。お前等のみたいな下位世界の人間に捉えられる事は、無いわ!』

 眉を顰める鏡。

「霧変化が通常のそれよりも格段早いですね」

「その上、こいつ、明らかにこちらと戦う気が無い。隙を突いて、弱い奴から生命力を奪う事しか考えてないわ。防御に専念したヴァンパイアを倒すのは、簡単じゃない」

 光が舌打ちする。

『我を捕らえる事は、何人たりとも出来ん!』

 高笑いをあげるドランキュスであった。



 その頃、八刃学園では、アンデッドの大量発生によるトラブルが発生していた。

 特殊司令室で、較が舌打ちをする。

「まさか、不死者の伝染能力が、八岐大蛇ヤマタノオロチまで効果があるなんて」

「前から、思っていたんだが、その八岐大蛇って何だ?」

 良美の質問に較が答える。

「前の大戦、異空門閉鎖大戦の際に、敵の異邪九龍が復活させた日本神話にも出てくる、強力な龍で、この東京湾にある、東京二十四区目、竜夢区リュウムクの土台になっているの」

 良美が頬を掻きながら言う。

「あたし達ってとんでもない物の上で生活してたんだね」

 較が小さくため息を吐く。

「八刃が住んでいたのは、八岐大蛇の封印強化の意味もあったんだけどね。今問題なのは、大量のアンデッドの所為で、それがアンデッドとして復活しようとしているって事だよ。もしもそんなことになったら、竜夢区もただでは、済まない」

 その時、間結の長、陽炎カゲロウから通信が入る。

『八刃の長。ここは、私に任せて貰おう』

「どうするつもりですか?」

 較の質問に対して陽炎が答える。

『間結の終奥義、大地蛇ダイチジャならば、封印の強化が可能の筈だ』

 眉を顰める較。

「しかし、その奥義は、成功率は、低く、成功しても、その身を長い封印の礎にしなければなりません。そんな奥義を使わせるのを承認出来ません」

 陽炎が苦笑する。

『八刃の長よ、成功率が低いのは、今回の貴女の作戦も同じ筈だ』

 良美が言う。

「痛い所を突かれたな」

 較が軽く良美を叩いてから言う。

「それでも、長期封印は、死と同じです。だから事前の打ち合わせで使用を禁じた筈です」

 それに対して陽炎が答える。

『闇様は、無事に封印から開放された。私もそれにかける。回りの人間は、少し悲しむかもしれないが、奴らが長生きすれば又会える可能性が高い。老い先短い私だ、開放後に玄孫を見るのを楽しみにしても良いと思わないか?』

 較は、長い沈黙の後に言う。

「特別に許可します。しかし、もしも失敗した時は、直ぐに陣の放棄して下さい。そうすればきっと、助かる可能性が高くなる筈です」

 陽炎が苦笑する。

『陣の事は、八刃の長よりも詳しいぞ』

 そのまま通信が切れる。

「上手く行くことを祈るしかないわな」

 良美の言葉に較が頷く。



「陽炎さん、準備は、OKです」

 準備を手伝って居た曙の言葉に陽炎が頭を下げる。

「ありがとうございます」

 それに慌てる華夏。

「間結の長、頭を下げないで下さい!」

 陽炎が頭を上げていう。

「曙さんは、闇の娘さんだ。幾ら礼を払っても払い過ぎは、無い」

 その一言に曙は、困った顔をする。

「ヤヤさんからは、散々文句を言われていますよ」

 陽炎が苦笑する。

「八刃の長は、まだ若い。自分の可能性を信じすぎている。しかし、私は、それでも良いと思っている。命を軽視するやり方は、全部私達が引き受ける」

 そして、陽炎は、呪文を唱え始めた。

『ああ、我等が守護者、大地に住まいし蛇、偉大なりし八百刃の使徒、我が魂の誓に答え、その繋がりを、我に結び給え。間結流終奥義 大地蛇』

 地面が捲り上がり、陽炎を取り込み、陣が発動し始めるのを見て、華夏が祈る。

「上手くいって!」

 珍しく真剣な顔をして曙が大きなため息を吐く。

「華夏。次は、あちきがやるから準備をお願い」

 それを聞いて華夏が驚く。

「どういうこと?」

 次の瞬間、地面から陽炎が押し出される。

 全身で激しく息をし、死に掛けの陽炎に周囲の人間が駆け寄る。

 そんな中、曙が頭を掻きながら陽炎が呪文を唱えた場所に向かって歩き出す。

 華夏が慌てる。

「八刃の長に相談すべきよ!」

 曙が手を横に振る。

「相談したら絶対に反対されるよ。安心して、多分、お母さんよりは、早く解放されるから」

 微笑む曙。

「ならん!」

 いきなりの怒声に周りの人間が驚く中、陽炎が無理やり陣を起動させ始めた。

「陽炎さん、普通にやったら、ちゃんと封印できませんよ」

 曙の忠告に地面から立ち上がれないままの陽炎が言う。

「大地蛇が途中で途切れたが、私の体内には、その力の残留が残っています。それを全て使えば、大丈夫です」

 その言葉に華夏が戸惑う。

「曙、本当?」

 曙が大声を出す。

「陽炎さんを止めて! それは、お母さんがやったのと同じ、自分の身体を触媒にすることだから!」

 華夏が止める為に駆け出すが、その前に陽炎の守護役で、谷走の長、湖月コゲツが立ち塞がる。

「長、このままでは、間結の長が亡くなります!」

 湖月が淡々と答える。

「間結の長が仰っただろう。命を軽視するやり方は、私達が引き受けると。全ての罪は、私が受ける」

「そんな問題じゃ無いです!」

 曙の声に湖月が首を横に振る。

「そういう問題なのだよ。何故ならば、八刃にとって一番大切なのは、どれだけ、明日への希望を残せるかだ。その為にだったら、私達の命は、少なすぎる程だ」

『影走』

 華夏が影から抜けようとするが、湖月が阻む。

『影操』

 遮断された影から押し出される華夏。

「陽炎さん!」

 曙の絶叫が響く中、陽炎の身体が陣に吸収されていき、八岐大蛇の復活は、無くなった。



 異界転移八極陣の中では、光がドランキュスを倒せるだけの魔法陣を生み出していた。

「後は、この中心に呼び込んで、陣の発動まで足止めするだけなんだけどな……」

 それが難しい事は、明らかだった。

 そんな中、間結とその分家の陣発生を取り仕切っていた、光の父親、オボロが甥のアキラに告げる。

「後の事を任せて良いかい?」

 晃は、驚くが自分が信用されての事と思ったのか、元気に答える。

「任せて下さい! きっとやり遂げて見せます」

 そして、朧は、光の所に行き告げる。

「私が、囮になる」

 光が慌てる。

「お父さん、危険だよ!」

 朧が首を横に振る。

「お父さんは、術でこそ、光にも負けるが、体術には、自身は、あるんだぞ」

 そういって、朧は、光が作った魔方陣の中央に立ち、脱力する。

 それに誘われる様にドランキュスが姿をとり、朧にその牙を立てる。

「お父さん!」

 思わず叫ぶ光に鏡が言う。

「光様、急いで下さい。このままでは、朧様が無駄に犠牲になるだけです」

 光は、今までの中で最高のスピードで印を刻み、呪文を唱える。

 それに反応して魔方陣がその力を発動し始めた。

 それを感知したドランキュスは、苦笑する。

『こんなあからさまなトラップに掛かると思ったのか!』

 ドランキュスは、牙を引き抜いて飛び立とうとした。

 しかし、その牙が抜かれる事は、無かった。

「残念だが、私も無駄に命を捨てるつもりは、ありません」

 朧の上着が脱げ、魔方陣が発動して居た。

 光が目を見開く。

「嘘! あれって、描いた相手からエネルギーを最後まで吸収する殲滅用の魔方陣。何でそれを自分に!」

「あの魔方陣は、術者か、描かれた相手が抵抗しない限り、吸収は、止まらない筈です。その特性を利用したのでしょう」

 鏡の言葉の通り、必死にドランキュスが牙を抜こうとするが、完全に生命力の流れが固定化されて、吸い終わるまで抜けない状態になっていた。

『馬鹿な!』

 ドランキュスは、朧の血と生命力を吸いながら、光の魔方陣で消滅した。

 ドランキュスが滅びた後、光が駆け寄る。

「お父さん、まだ死なないよね?」

 すると、朧の目が真赤に変色して居た。

『我は、不死身だ!』

 牙を伸ばして光に襲い掛かろうとした。

『影刀』

 鏡がそのドランキュスに侵食された朧に影の刀を振り上げた。

 咄嗟に飛びのくドランキュス。

『まだだ、我は、生気を吸収して生き続け……』

 そこで言葉が止まり、どんどんとやせ衰えていった。

『馬鹿な、生気が抜けていく。どこから?』

 戸惑うドランキュスだったが、それは、直ぐに判明した。

 朧が発動した魔方陣は、まだ止まっていなかった。

『止まれ、止まれ、止まれ! 止ま……』

 そのまま完全に生気を失い灰と化して消えていくのであった。

「お父さん……」

 涙を流す光に鏡がハンカチを差し出す。

 それを受け取り、涙を拭いて光が宣言する。

「まだまだ終ってない。頑張るよ!」

 そして光は、戦いを再開するのであった。

 そんな中、誰にも聞こえないように小さく呟く。

「お父さんの最後の瞬間まで、あたしを護ろうとした思いは、絶対に忘れない」

 アンデッドの侵攻は、まだまだ続くのであった。



 残り、十八時間。

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