第21話:フェルゼンの町並み
俺はもう一度、望遠鏡を覗いた。
(……せっかくだし、“改善点”でも探してみるか。ポイント欲しいし)
まず視界に入ったのは、城門前の大通りだった。
荷馬車が何台も並び、人と馬と荷物がごちゃごちゃに詰まっている。
怒鳴り声、手振り、立ち往生。完全にボトルネックだ。
(あれ絶対ムダ多いよな……荷馬車の進行方向、片側に統一するとか、時間帯で分けるとか……“車線”の概念ないのか?)
望遠鏡を少し動かすと、井戸の周りに人だかりができていた。
バケツを持った人たちが列を作り、順番待ちでダラダラしている。
(給水ポイント少なすぎだろ……もう一個井戸掘るか、貯水タンク作って分散させればいいのに。てか水運ぶのも重労働だよな……パイプとか無理でも、樋くらいなら作れそうだな)
市場の広場に視線を移す。
露店がぎゅうぎゅうに詰まりすぎて、通路が細くなっている。
人がすれ違うたびに肩がぶつかり、荷物が落ち、怒鳴り声が飛ぶ。
(動線、完全に死んでるな……真ん中に一本“通り抜け専用”の道作るだけで、だいぶマシになるのに。露店の配置も、種類ごとにゾーン分けした方が絶対効率いいだろ)
城壁の上に目を向ける。
騎士たちは以前より軽やかに動いているが、それでも同じ場所を何度も行ったり来たりしている。
(見張り台の位置、ちょっと悪いな……あれ、死角多いだろ。高い塔を数本増やして、そこに“固定監視”置いて、あとは巡回ルート減らせばいいのに。疲労も減るし、効率も上がる)
町の外れにある畑を見ると、農民たちが一列に並んで、ひたすら鍬を振るっている。
(うわ、完全に人力頼みだな……畝の向きバラバラだし、水路も適当だし……あれ整えるだけで収穫量だいぶ変わるぞ。てか“共同で使える道具置き場”とか作れば、もっと楽になるのに)
望遠鏡を少し引き、町全体を俯瞰する。
屋根の高さはバラバラ、道は細く曲がりくねり、行き止まりも多い。
(火事起きたら一発アウトだな……“避難路”の概念ないのか? せめて大通りから各区画に一本ずつ太い道通しておけば、逃げやすいし、騎士団も動きやすいのに)
「……たま、見ろよ。あそこ、詰まってるだろ? ああいうの、ちょっといじるだけでだいぶマシになるんだよ」
「ナァ(あんた、ほんとそういうとこはホント有能よね)」
俺は望遠鏡を下ろし、ベランダの手すりにもたれた。
(……結局さ。みんな“根性”でなんとかしようとしてるんだよな。俺のいた世界もそうだったけど……根性より“仕組み”いじった方が早いんだって)
頭の中で、フェルゼンの地図がざっくりと組み上がっていく。
城門、城壁、詰め所、市場、井戸、畑、住宅街――それぞれの位置関係と、人の流れ。
(詰め所をもう一箇所増やして、城門前の渋滞を分散。市場はゾーン分けして、真ん中に通路。井戸は増設か、貯水タンク+配水。見張り台の位置調整して、巡回ルート短縮。畑は水路と畝の方向を統一して、共同道具置き場設置……)
自分で考えながら、思わず苦笑した。
(……俺、何やってんだろうな。怠惰の玉座欲しさに、領地の都市計画考えてるとか……)
でも――
スマホの画面に表示された“残りポイント”を思い出す。
(……でも、欲しいもんは欲しいんだよな)
俺は小さく息を吐いた。
「……よし。もうちょい本気でフェルゼン改革、考えるか」
たまが「ナァァ……」と、諦め半分の声を出した。
(安心しろたま。俺は動かない。動かないけど……世界には動いてもらう)




