第18話:ポイント爆増は正義
--- 一ヶ月後。
俺はソファに寝転がりながら、いつものようにルミナショッピングを開いた。最近は特に変わったこともなく、平和そのものだ。
(まあ、外が静かすぎる気はするけど……静かなのはいいことだよな)
画面をスクロールしながら、いつもの“日用品”カテゴリを眺める。洗剤、ティッシュ、カップ麺、コーラ箱買い……。うん、いつも通り――
「……ん?」
画面右上の“現在のLポイント”を見た瞬間、俺は息を飲んだ。
【所持ポイント:80,004,250L】
「……は?」
(え、ちょ……八千万? 桁、間違ってない? 昨日まで三千とか五千とかだったよな? なんで八千万? 宝くじ? 俺なんか当てた?)
たまが足元で「ナァ」と鳴いた。
「……たま、見ろよこれ! 八千万だぞ八千万! 俺、働いてないのに!」
「ナァ(働いてないからよ……)」
「すげぇ……! これ、人生勝っただろ……!」
いや、もう人生勝ってるけど……さらに勝ったなこれ。
俺は震える指で“ポイント履歴”を開いた。
【フェルゼン防衛体制の改善:+80,000,000L】
「……は? フェルゼン? 防衛? 改善? 俺、何もしてないけど?」
いや、紙に落書きしただけだよな? あれで八千万? コスパ良すぎない?
さらにスクロールすると、見慣れないカテゴリが追加されていた。
【精神:精神力アップ 20,000,000L】
【怠惰:あなたの怠惰を守ります 20,000,000L】
【魔導冷蔵庫:鮮度そのまま 10,000,000L】
【翻訳プリンタ:全部翻訳します 5,000,000L】
「……なんだこれ!? めっちゃ便利そうじゃん!!」(精神力アップ? 怠惰を守ります? いや、怠惰守ってくれるの最高じゃん……! 魔導冷蔵庫とか絶対欲しい!)
たまが「ナァァ」と鳴いた。
「……たま、これ買っていいよな? ポイント余ってるし!」
「ナァ(やめなさいってば!!)」
「よーし、まずは“怠惰を守ります”だな。名前がもう最高だし」
(これさえあれば……俺の怠惰ライフがさらに強化される……! 世界よ、もっと俺にポイントを捧げろ……!)
その時、画面の下に“新着メッセージ”が表示された。
【ルミナショッピング運営より】
《ゼクト様、いつもご利用ありがとうございます。フェルゼン領の安定化に伴い、世界の“負荷”が大幅に軽減されました。その功績により、特別ポイントを付与いたします。今後とも、どうぞ“動かずに”世界をお導きください。》
「……動かずに導くって……俺のことじゃん!」
(いや、俺の生き方、世界に評価されてる!? 最高かよ……!)
俺は満面の笑みでポイント画面を見つめた。
(……なんかよく分からんけど……とりあえず、ポイントが増えるのは正義だよな)
「よし、“怠惰を守ります”購入っと」
【購入完了:怠惰】
(名前が最高すぎる……俺のためにあるアイテムじゃん)
続けて“精神力アップ”もタップした。
【購入完了:精神】
両方グレーアウトして選べなくなった。
「……おお、なんか“コンプリートした感”あるな」
さらに“翻訳プリンタ”も購入。
【購入完了:翻訳プリンタ】
勢いのまま“魔導冷蔵庫”も購入。
【購入完了:魔導冷蔵庫】
その瞬間、画面が光り、新しいカテゴリが追加された。
【怠惰強化】【精神・加護】【生活魔導具】【結界・防衛】
「……増えた!? なんで!?」
スクロールすると、魅力的すぎる商品が並んでいた。
【怠惰の玉座:怠惰が安定 50,000,000L】
【魔導ベッド:素晴らしい寝心地 60,000,000L】
【遠隔:遠くても大丈夫 80,000,000L】
「……なんだかわかんない商品だな。でも全部欲しいな」
しかし、右上のポイントは――
【所持ポイント:25,004,250L】
「……足りない」
(八千万あったのに……俺、そんなに買った……? いや、買ったな……)
たまが「ナァ……」と呆れた声を出した。
「……くそ……“怠惰の玉座”欲しい……!絶対欲しい……!あれに座ってダラダラしたい……!」
その時、画面に小さく表示が出た。
【※世界の安定度に応じてポイントは随時付与されます】
「……世界、もっと安定しろ……!」
(いや、待てよ……世界が安定すればポイントが増える……?)
俺はゆっくりと画面を閉じた。
(……フェルゼン改革すれば……ポイント増えるんじゃね?)
「……よし。やるか、フェルゼン改革」
たまが「ナァァ!?」と叫んだ。
(いや、違うんだよたま……俺はただ……“怠惰の玉座”が欲しいだけなんだ……)




