〜修学旅行はいいですよね。とても楽しいです〜
~主な登場人物~
・野村由紀
不思議ちゃん
中一
身長165センチ
星座はインフルエンザ
血液型はクワガタ
好きな食べ物はない。甘ければなんでもいい
不思議すぎて、一人でいることは多い
・西田義隆
主人公
中一
身長145センチ
星座は水瓶座
血液型はA型
ただ単にコミュ障
虫苦手だが、触れられなくはない
ただ、虫触ると、つぶしそうなので、掴めない、触るのはできる、手のひらに載せるのも、手に這わせるのもできる
精通は小四
「西田ぁ、修学旅行の行動班一緒になろうよ‼︎」
野村が話しかけてきた。
冬休みが明けてから、すぐ僕らは京都に修学旅行に行くらしい。
「…いいよ」
「やったぁ‼︎」
「あの…ごめん、ちょうど今、うちの班に入ってもいいって言ってる子がいたから、どっちが入るか、じゃんけんで決めてくれない…?」
そう提案してきたのは足立麗美。確か、体育祭で、審査員をしていた人だ。
野村と同じ行動班の人間らしい。
「なんだ?なんだ?西田もうちの班入るのか?いーぜ。俺、たまに、遠目にお前のこと見てたけど、お前はいーやつだ。なんなら、好きだ。あ、変な意味じゃなくてな?だから、うちの班入れよー」
そう僕を勧誘してきたのは、北村優吾。手提げの件で僕に野村に手提げを借りた時に話しかけてきたやつだ。
「ねぇ、今じゃんけんで決めようとしてたじゃん。話をややこしくしないで。班員の人数は決められてるの。先生言ってたじゃん。あと、班長は私。優吾はだまってて」
足立さんはさっき野村に話しかけた時とは全く違ったオーラで北村に結構キツいことを言った。
何か北村に恨みでもあるのだろうか。
「なぁー…西田ぁー、こいつ、俺のこと好きすぎて、俺だけに当たりキツイんだよぉー…なんとかしてくれよー」
「ちっ…違っ!違うしっ!ばーか!」
足立さんはわかりやすく顔を赤くして、北村をパシパシと叩いた。
「え…えー…うーん…あはは…」
いや、人前でいちゃつくなよ。
恥ずかしくないのか。
って、僕らも人のこと言えないか。
というか、キツいこと言ってても、自由に班員を決められる班決めで、二人が同じ班になってる時点で仲良しこよしなのはお察しである。
「まっ…まぁ、いいや…とりあえず、もう一人の子とじゃんけんしてくれない?」
「えぇ〜誰ぇ〜⁇」
野村は足立さんに聞いた。
「名倉くんだよ、あの足めちゃくちゃ早い…」
そう言って北村の後ろからぬっと出てきたのは名倉将司。体育祭で休んでいた陸上部のやつだ。
「ども」
「あぁ…どぉもぉ…」
僕は萎縮してしまう。
だって身長が野村よりも高く、ガタイがいいからだ。
「じゃ…じゃんけんとかって…やりますか…?」
(僕は何を聞いているんだ…!?)
「たまに」
(たまにするのか…)
「すっ…好きな手は…?」
「グー」
(殴られる!?)
「僕も…です…ふへへ…き…ぐうですね…」
「…」
(返事があんまし返ってこん!)
でもしかし…なるほど前までの僕もこうだったのか…。
野村が病んで家出するのも、頷ける。
「最初はグー!」
硬直した空気を破壊しようとしたのか、足立さんが叫ぶ。
まずい僕も手出さなきゃ。
「じゃんけんぽん!」
「西田くんの負けー!」
(は?好きな手はグーって言ったじゃないか!)
僕はパーを出した。
しかし、名倉はチョキを出して、僕は負けた。
「じゃあ名倉くんうちの班に入っ…」
足立さんが名倉を勧誘する。
「これ五回戦勝負だから‼︎」
それを叫んだのは野村だった。
「え、あっ、そうなの?じゃあ…」
足立さんは野村の元気の良い叫びに圧されたらしい。
北村は言われた通りずっと黙っている。
「じゃーんけーん」
しかし、名倉は色々察したのか。
「いや、俺は違う班に入るよ」
そう言って、その場を去った。
「あっ、なっ…名倉!」
僕は名倉を呼び止めた。
「なに」
「今度、ジュースおごる」
「ありがと」
「こちらこそ」
ありがとう。名倉。
カッコ良すぎるぜ。名倉。
流石強面イケメン。名倉。
後、最後に名倉にお願いだ。
察しても言いふらさないで欲しい。
ただそれだけ。
◇
修学旅行初日は奈良の大仏を見て、鹿と戯れて終わった。
修学旅行の夜。
今日泊まる宿では名倉と北村と僕で一部屋である。
口火を切ったのは、北村。
「なぁ、お前ら。恋バナしようぜ」
「…」
「…」
それは…僕は良いとしても、班決めの時のことも考えると、名倉は気まずいだろう…。
北村は空気が読めない。読めないが、そのおかげで僕に話しかけてくれて、仲良くなれた気がする。
でも、やっぱり空気が読めない。
「あっ、そうだ。名倉。これコーラ。さっきそこの自販機で買ってきた。良かったら」
「あぁ。ほんとにもらえるとは。ありがとう」
「なんだよ。なんだよ。無視すんなよ。お前ら、恋してないのー?」
「してない」
ぶっきらぼうにそう言ったのは名倉だった。
「けど、愛している彼女なら他校にいる」
「「!?」」
「だから、俺が二人の立場なら彼女とは同じ班がいいと思うからそうしただけ。俺は彼女が同じ学校だったらいいなってよく思うし。共感しちゃったんだ。だから、西田。気をつかわなくていい」
「…え?…あぁ…いゃ…」
僕は呆気に取られて反応が遅れてしまった。
強面イケメンだから、彼女がいることはまぁ、頷けるけれども、それより…
名倉はこんなに饒舌に喋れたのか…。
その事実に一番驚いた。
というか、こいつ、愛しているとか言うようなキャラだったのか…。
「え!?まじ!?え、出会いどこよ?いつから!?きっかけは!?彼女のどこが好き!?」
北村はガツガツ名倉に質問攻めをする。
本当に気をつかっていない。
というか、気を使わなくていいと許可を出されたのは僕であって、北村ではないんだぞ。
「出会いは陸上部の大会。夏休みの大会から。彼女が他校のマネージャーやっていて、俺が一目惚れ。ほっぺぷにぷにしてるところ」
聞いててこっちが恥ずかしくなってくることを淡々と語る名倉。
「うわぁ!おまっ!まじで好きなんだな!」
「うん」
「いいなぁ!いいなぁ!」
北村は北村で結構恋愛脳なんだな。意外だ。
「にしても、驚いた。名倉はなんていうか…その…恋愛には興味ないと思ってた」
僕も思ったことを名倉にぶつけた。
「そんなことはない」
「そうだったのか…いいな」
「で!?西田はどうなんだよ!?」
しまった。僕がうかつに発言したせいで、北村の興味の対象が僕に移ってしまった。
「どう…って…なんだよ」
「ごまかしたら、また怒られるぞー?」
によによ顔で僕をからかう北村。
なんか、誰かに似ているなと思ったら、北村は、恋愛脳なだけの野村だ。
「仲良い」
「おぉー!」と一人で盛り上がる北村。
名倉は僕を黙ってじっとを見ている。
「きっかけは?」
「別にいいだろ!黙秘権!」
「なぁ!気になるよなぁ!?名倉」
「とても気になる」
なんなんだ。名倉。めちゃくちゃ強面イケメンのキャラが崩れてきてるぞ。まあ、僕が勝手にイメージして作ったキャラクター像だから、元々こーゆーやつなのかもしれないけれども。もっとクールなやつだと思っていた。
「ほら!名倉も気になるってよ!」
「きっかけ…って言われてもわかるか!知らん!」
「いつのまにか…ってやつかぁ!いいなぁ!あぁ!もう!お前ら大親友!大好き!あ、ちなみに、俺はね、あいつのこと可愛い可愛いとか言って、いじってたら顔赤くして面白かったから!でさ…」
その後北村の足立さんへの愛をこれでもかというほど聞かされた。
僕に初めての友達が二人できた。
◇
「なぁ、ここの部屋のベランダから下みると、女子風呂見えるらしいぜ」
と北村。
「どんな欠陥建築だよ」
「あ、信じてないな?去年ここの部屋泊まった先輩から聞いたんだよ。ホントだぜ?」
「いや、んなわけ」
「信じないやつだな。いいや、名倉!覗こうぜぃ!」
「俺には彼女がいる」
と名倉は一蹴。
めちゃくちゃ彼女のこと好きなんだな。
「いいよ!俺だけ見てくるよ!もう!」
と、北村はベランダの窓ガラスに手をかけた。
とその時。
「なぁ!ここ!女子風呂見えるんだってぇ!?」
と、クラスメイトのほぼ全員が僕らの部屋に押しかけて来た。
「あぁ!見えるらしいぜぃ!一緒に覗こう!同志たち!」
わぁわぁとみんなは騒ぎ立て始めた。
もう収拾がつかない。
まさにカオス。
僕は部屋の端の方で静かに正座していた。
名倉はこんな状況でも、どっしりと腰を据え、僕の隣であぐらをかいている。
しかし、その時、もう一つこの部屋にドタドタと走ってくる音が聞こえた。
結構重めの鈍い足音だ。
まさか…。
「他の部屋入るな!戻れ!外部のお客さんもいるんだ!静かにしろ!貸切じゃないんだ!あと、そんなもん見えるわけないだろ!アホか!」
生活指導の桜井先生が僕らの部屋に来て、北村と僕とその他大勢のクラスメイトを叱った。
なぜか僕も怒られたのだ。
僕の隣であぐらをかいていたはずの名倉はいつのまにか部屋を出ていて、先生が僕らを叱って、クラスメイトたちが全員出ていって、先生も出ていった後すぐに帰ってきた。
「名倉…どこいってたんだよ」
「危険を感じたから、廊下歩いてた」
こいつの危機察知能力は化け物だ。
◇
夕食も終わって、就寝時間の二十二時まで自由行動時間だ。
近場であれば、ホテルから出かけることもできる。
「なぁなぁ隣に豚・キホーテがあるってよ。いこーぜ」
「いいよ。お菓子とか持ってくるの忘れたから、ちょうど買いたかったんだ。名倉もいこうよ」
「ああ」
「よっし!決まりな!」
◇
「じゃーん!十八禁エリアー!」
北村は、豚・キホーテ店内にかかっている「これより先十八歳未満立ち入り禁止」と書かれているのれんにむけて、手をひらひらと振る。
「…北村…」
こいつただの恋愛脳じゃない。性欲に人生の全てを振り切った猥褻猿だ。
「さぁさ!入ろーぜ!」
「北村は18歳未満立ち入り禁止の文字が読めないのか」
「なんだよー!お前ら健全な男子中学生のくせにエロいことに興味ないってのかー!?」
「いや…まぁ…そりゃ…あるっちゃあるけどさぁ…」
嘘はつけない。
「じゃあ、入ろーぜ!ほらっ!名倉も一緒に!」
北村は僕と名倉の腕をがっしりと掴み、禁じられている場所に足を踏み入れた。
◇
「なぁ!これ見ろよ!おっぱいボールだってよ!500円だぜ!」
片手で一個おっぱいボールなるものをにぎにぎしながら、もう片方の手で僕にもう一個のおっぱいボールなるものを手渡してくる北村。
それは、乳房のようなものがついたシリコン製のボール。
形はさながらおっぱいだ。
「おぉ…すげ…じゃなくて!早くここからでよう!バレたらまずいって!」
「バレない。バレない。ほら、名倉も」
そう言って、北村は名倉にもおっぱいボールを手渡した。
無表情でおっぱいボールを受け取る名倉。
「名倉は…身長も高いし、大人に見えるから、レジに持ってっても、年齢確認されずに買えるんじゃないか!?」
と少々興奮気味の北村。
やめてくれ。エロ猿が興奮してしまっては、もう収拾がつかなくなってしまう。
それに対して、冷静にじっくりと手渡されたおっぱいボールを観察する名倉。
と。
「こんなに柔らかいわけないだろう」
名倉はやっぱり冷静に言った。
「…」
「…」
「どした」
「生々しいからやめてくれ…おっぱいってのは空想上のものだから、笑えて楽しいけど、名倉がいうと…グロい…」
さっきまでの調子はどうしたのか、北村はなんとも言えない表情で言った。
「別に空想上のものでもないだろう」
「あー!あー!やめてくれー!ききたくないー!」
耳を塞ぎ大声を上げる北村。
「お前ら、どうせキスもセックスもやることちゃんとやってんだろぉ!?」
「…」
「…」
「うわぁー!西田まで黙るなよぉー!やめてくれやめてくれ!聞きたくない!」
「いや…僕は………………」
何か言い訳しようか迷ったが何も思いつかなかったので、黙ってしまうことになってしまった。
「うわぁぁぁぁ!もう、お前らが一番エロいよ!」
北村。お前にだけは言われたくないぞ。僕も名倉も。
◇
「よっし!そろそろ出よーぜ!」
北村は十八禁エリアに飽きたらしく、のれんをくぐって、一番先にエリアから出た。
しかし、そこで、北村が止まった。
北村が出口で止まっているせいで、一刻も早くこんな空間から出たい僕たち二人が十八禁エリアから出られない。
すると、のれんの向こう側から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「なっ…なんであんた…じゅっ…十八きっ…~!」
声の主はどう考えても足立さんだった。
そういえば、ここの豚・キホーテは、時計を売っているところの奥に十八禁エリアがある。
推測するに、おしゃれな時計を見にきた足立さんが偶然十八禁エリアの前を通った時に、偶然北村が十八禁エリアから出てきたのだろう。
もはや奇跡だ。なんとも間の悪いやつである。
「え?あぁ!健全な男子中学生だから!」
とそれを聞くや否や苦虫を噛み潰したような顔になる足立さん。
のれんの隙間からよくよく見ると、足立さんの隣に野村もいる。
野村も足立さんも僕と名倉は気づいていない。
これは、のれんの内側にいて正解だった。
と思ったのも束の間、野村と目が合ってしまった。
「え⁇西田⁇なんで西田もいるの⁉︎」
と若干引き気味でびっくりして聞いてくる野村。
観念して、出口で邪魔になっている北村を押しのけて、のれんをくぐった。
「いや…まぁ…これは…北村が強引に…」
「ゆっ…優吾!あんた、西田くん無理やり…えっ…エッ…!な所に引き連れてったの!?」
「んぁ?まぁ、そうなんのか?ってか名倉も一緒だぜぇー…ってあれ?」
北村がキョロキョロしている。
また、いつのまにか名倉が消えていた。
危険を感じて、どっかに行ったのだろう。
名倉の危機察知能力恐るべし。
「何してんのよ!ごめんね…西田くん…優吾がご迷惑を…」
「いやぁ…まぁ…うん」
「別に迷惑じゃなかったよなぁ?おっぱいボールとか一緒に触ったもんな?」
「なっ…おまっ…ばか!」
野村もいるんだから、そういうことを言うのはやめて欲しい…。
「なっ…なっ…おっぱ…ボー…」
ぷしゅーという音を立てるように、ショートしてしまった足立さんはその場に倒れそうになった。
しかし、その足立さんは野村が支えた。
「わっ、私はいいと思うよー‼︎いいと思うからねぇー‼︎ 」
とだけ言い残して、足立さんをおんぶしながらその場からすたこらさっさと離れていく野村。
野村よ。それはフォローになってないぞ。
それにしても…
「相当かわいいな。お前の彼女」
「ふふん。だろ?あ、でも、俺のだからな?浮気しちゃダメだぞ?」
「するか」
「しない」
「まぁ、そうだよな。やっぱ、俺、お前らのこと好きだわ!ってうわぁ!?名倉ぁ!お前!いつ戻ってきたんだよ!?びっくりしたぁ!」
「さっき」
と十八禁エリアの出口で三人で円になって騒いでいると、
「お前らこんなところで何してる…」
と低い声が聞こえた。
恐る恐る後ろを振り返ってみると、またもや、生活指導の桜井先生だった。
「え…いや…あの…」
「これは学校の修学旅行で勉強を目的にしてここに来てるんだ。自由時間であったとしてもだ。勉強とは関係ない外れた行いをしてる時点でアウト。しかも制服着てるし。そんなの他のお客さんに見られたら、ウチの中学にクレームを入れられる。お前ら学校戻ったら、反省文な」
僕と名倉は思いっきりとばっちりだ。
と思ったら、やっぱり名倉はまたまたいつのまにかいない。
あいつ…まじですごいな。
「「えぇ…」」
僕と北村は仕方なく反省文を書くことになった。
「十八歳マイナス年齢の枚数反省文書けよー。西田は五枚で良いけど、北村は確かまだ十三歳にもなっていなかったはずだから六枚な」
「「そんな…」」
ヒドイ〜!と叫ぶ北村の声は豚・キホーテ内を響きわたり、それはそれで怒られた。
◇
宿に戻った僕らは寝る準備をしていた。
「今夜また三人で抜け出して、十八禁行こうぜ」
「誘い方がヤリモク男。絶対行かないからな」
「いやいや、逆に考えろよ、五、六枚反省文書くだけで、十八禁コーナー入れるんだぜ」
「それが嫌なんだろうが」
ピロン♪と僕のスマホが鳴った。
スマホの画面を見ると、野村からのLIMEだった。
「今日は通話できない⁇」
「できないかも」
「そっかぁ」
「少しだけならできるかも」
と、野村からピリリリリリと電話がかかってきた。
僕は慌ててベランダに出て、電話に出る。
「さっそくか」
「えへへ。ごめんね。ちょっと声が聞きたかった」
「それは僕もだけど…」
「旅行来てからしゃべれてないなぁ…って思って」
「たしかに…」
「ふへへ…」
「寂しい…?」
「それは西田でしょ〜」
「うん」
「やけに素直だね」
「だって」
いつのまにか野村のことばかり考えるのが癖になってしまっている。
野村のことを考えるだけで楽しくなって仕方がない。
それだけで僕は幸せなのに。
野村が横にいるともっと幸せだなんて。
そんな、野村がいなけりゃ気づきもしなかったこと。
野村と今日一日しゃべることができなかっただけで簡単に気づいてしまえたこと。
そんなことが知れて今にも泣いてしまいそうなほど嬉しいだなんて。
悔しくて、恥ずかしいけれど、知らなかった。知れなかった。
「私はね、楽しみだよ⁇」
「楽しみ?」
「うん。楽しみ。今は西田とあんまりおしゃべりできてないかもしれないけど、今度会った時、西田と今まで以上にいっぱいおしゃべりするの。それがとっても楽しみ‼︎」
「素敵な考え方」
「でしょ〜」
「うん」
「えへへ」
「もうそろそろ寝よっか」
「そうだね」
「また、明日。おやすみ」
「おやすみぃ〜」
と僕が電話を切ろうとしたその時。
「なぁ!西田ぁ!下ネタワードじゃんけんしようぜぃ!」
ベランダに空気を読まない男、北村が入ってきた。
慌てて電話を切る僕。
北村の声が拾われてなければ良いのだが…。
「なんだよ…下ネタワードじゃんけんって…」
「自分が思いつく限りどエロい言葉を言い合って一番エロいこと言ったやつが勝ちってルールのじゃんけんだ!」
「じゃんけんなのか…それって…」
「ちなみに審判は俺だ!」
その後三人で下ネタワードじゃんけんなるものを北村にやらされた。
しかし、勝ったのは名倉だった…。
◇
次の日。
僕らは金閣寺に行った。
自由行動班で散策している。
北村はトイレに行ってて、喋れるやつが他にいない。
名倉はそもそも別の班だ。
野村は足立さんとか他の人と喋っていて、僕は少し離れたところでぼっちである。
まぁ、なんとなく北村がいなくなったら、こうなることはわかってはいた。
「ねぇ、西田も会話入ってよ。みんな優しいよ⁇」
野村が班から抜けて、僕のところに来た。
「僕が入ったら、せっかくの修学旅行がぶち壊しだろう?」
「そんなことないよ」
「…………他の班がそこにいるから、少し喋ってこようかなって思ってた」
女子が多い班を指さして、僕は少し面倒くさいことを言ってみた。自分で自分が嫌になる。
まぁ、他の班がいるからといって、僕は喋りかけられないので、本当にはったりなのだが…。
「それはダメ」
「なんで?」
「西田は私と一緒の班だから」
野村はまっすぐ僕を見ていた。
「そっか…ごめん…なんか拗ねてた…」
「いいよ、戻って、一緒にお話ししよ⁇」
「うん…」
次の瞬間。
野村は倒れた。
◇
「えっ?ちょっ、大丈夫!?」
野村が仰向けに倒れた。
立ちあがろうとする素振りがない。
「野村?野村っ!?」
返事がない。
意識もない。
確認すると呼吸は少しあるが、少し痙攣をしている。
「みんなぁ!来てくれぇ!野村がっ!」
わらわらと周りの人たちが野村と僕を取り囲む。
とりあえず119番だ。
僕は電話をかけて、消防署の人に現状を説明して、指示に従い、周りの人に助けてもらいながら、野村を横にしたり、上半身を起こしたりした。
すると、野村がゲホゲホと血を吐いた。
僕は野村が死んでしまうと思った。そんなのは絶対嫌だ。心臓が破けそうなくらい鼓動して、頭もだんだん痛くなってきた。訳が分からなくなってきた。嫌だ。嫌だ。嫌だ。怖い。
しかし、消防署の人が、
「咳き込んだと言うことは意識が戻ったと言うことです。窒息しないように、まだ、たまってるようだったら、吐かせてください」
と優しい声で言ってくれてほんの少しだけ落ち着いた。
やっぱり、消防署の人はすごい。
「大丈夫だからね。ごめんね」
と僕は無意識に野村に向かって繰り返して言いながら、背中をさすっていた。
五分後。
救急車が到着して、野村は担架に乗せられていった。
担任の先生もその時には到着していた。
救急隊員の人が、
「誰か一人、二人来てください」
と言ったので、
僕と担任の先生が乗った。
◇
野村は意識が戻ったらしいが、まだ眠ったままだ。
「いやぁ…とりあえず救急車の簡易的な設備で診てみたんですが、目立った異常は見つかりませんでした。おそらく気絶でしょう」
救急隊員の人は言う。
「血を吐いたと言っていたので、診てみたのですが、舌が一部切れていたので、おそらく、倒れて頭をぶつけて、その時に噛んで出血したのでしょう」
そう救急隊員の人は説明してくれた。
「そう…ですか…」
僕は気が気でならなかった。
「一応、病院で詳しい検査をしてもらいましょう」
◇
救急車で病院に向かう途中
「へ⁇あれ⁇ここ、どこ⁇」
野村が起きた
「野村っ!よかった…起きた…よかった…野村ぁ…」
「西田⁇なんで⁇何ここどこ⁇え⁇え⁇」
野村は自分が倒れたことを覚えていないようだ。
「おぉ、起きたか!野村!またまた心配したんだぞ先生っ!でも、よかった…本当に…」
「先生…⁇なんで⁇修学旅行だったはずじゃ…」
「野村さん、僕のことわかりますか?」
救急隊員の人は野村に尋ねる。
「いや、わかりません」
「お友達と、先生の名前わかりますか?」
「西田と、担任の朝倉先生…」
あっている。
どうやら、倒れている間の記憶だけないようだ。
◇
病院に着いた。
野村はその後色々検査を受けた後、結局原因不明と診断され、結局、気絶して、舌噛んで、血を吐いたと結論が病院の先生から出された。
野村は少し病院の個室のベットで落ち着くことにしたらしい。
僕と担任の先生は野村の横に座っていた。
ピリリリリと電話が鳴る。
先生の電話だ。
「野村の親御さんから、電話だ。ちょっと、席を外すから、西田、野村を見ておいてくれ」
そう言って、先生は席を外した。
「…」
「…」
「…ごめんね…迷惑かけちゃって…同じ班の子達にも謝らなくっちゃ…」
「迷惑なんて思ってない。みんなもそうだよ」
「…そうかなぁ…」
「そう」
「ありがとう…色々…」
「うん」
「…」
「…」
「わっ、私…一時的に気失って、頭ぶつけて、その衝撃で舌噛んで、血ぃ吐いただけだってぇ〜なんじゃそりゃあって感じだよねぇ〜あはは〜だから、全然大丈夫っ‼︎元気っ‼︎なんか驚かしちゃってごめんねぇ〜」
「舌だって噛み切ったら死ぬだろ」
「あ…いやぁ…その…」
「…」
「…ごめん」
「……………僕もごめん……なんか…すごく怖かったんだ…野村が死ぬかもって考えたら…もうわけわかんなくなって…どうしようもなくなって…」
いつからだろうか。
僕は気づいたら、ずっと泣いていた。
「そのくらい…」
あぁ…そうか…僕はずっと泣きたかったんだなぁ…野村の前で思い切り…。
「そのくらい…!野村のことが好きだ…!」
僕は本当はわかってほしかったんだ。野村に。僕自身に。
僕も泣き虫なんだって。野村と同じなんだって。泣くくらい野村のことで頭の中がいっぱいで大切なんだって。
誰も知らない僕のことをいっぱい、いっぱい知って欲しかったんだ。
それで、僕は安心したかったんだ。
頭の中には野村しかいない。
言いたいことは一つしかない。
それ以外にどうしようもないほど言い表せない。
「だから…もう…心配させないで…」
その時ちょうど担任の先生が入ってきた。
「野村ぁ!親御さんが、野村の声聞きたいってぇ…うぉ!?え…ごめん…あとにしたほうがいい!?」
先生は驚いた。
そりゃそうだ。
野村がめそめそ泣いている僕を抱きしめて、「ごめんね」と繰り返しながら、ぽろぽろ泣いていた。
「僕…ちょっと…外出ます…」
こんな状況でもないと好意を素直に伝えられないほど、野村を好きになってしまった僕。
僕は外に出て、ぐちゃぐちゃに泣いた。
◇
僕はひたすら泣いて泣き疲れた。
他に行く場所もないので、もう一度野村のいる病室に戻った。
先生はそこにはいなかった。
またどこかに電話をかけに外に出たのだろうか。
「野村…」
僕は続ける言葉がなかなか見つけられなかった。言いたいこと、伝えたいことを全てさっき言い尽くしてしまったような気がしたからだ。
でも。
「僕は、僕のこと…こんな形で伝えたくなかったよ。でも今じゃないと言えない気がした。だから言ったんだよ」
なんでだろう。また目が涙で滲んできた。
「ごめん。私…」
違う。違うよ。僕は謝って欲しいんじゃない。僕が今して欲しいのは…。
「ね…ねぇ…西田ババ抜きしようよ」
ババ抜きでもない。嘘だろ。
野村は呑気なものだ。
二時間前まで、気を失っていたと言うのに。
「…なんで?」
「私のカバンにトランプが入ってたから‼︎」
こーゆーところはまだ不思議ちゃんである。
「いいけど…」
僕らは二人でババ抜きをした。
正直二人でやっても、どっちかがババを持っているとわかる状況なので、面白くない。
テキトーに引いたり、引かなかったりして、
野村が残り二枚。
僕が残り一枚。
で、僕のところにババはないので、野村がババを持っていることになる。
僕のところには今のところ一回もババが回ってきていない。
ババを取ろうとすると、野村の表情がわかりやすく変わるからではあるが…。
「さぁ…どっちかなぁ…⁇」
と野村は背中の後ろでカードをシャッフルする。
(カード入れ替えたりとかして、不正してないよな…?)
「ジャカジャカジャカジャカ…じゃん!どーんっ‼︎どーっちだ⁉︎」
右のカードを取ろうとすると、野村の顔が曇った。
じゃあ左だな。僕は左のカードを取った。
でも、そのカードはババだった。
マッキーで何か書いてある。
「わたしもすき」
「…って書いてあるん…だよ…⁇」
僕は唖然として、少し放心した。
その間に、僕はババじゃない方のカードを野村に取られた。
「よっしっ‼︎これで私の勝ちね‼︎」
やっぱり野村は不思議だ。変だ。おかしい。どうかしている。
でも…
「あの…」
「なぁに⁇」
それと同じくらい…。
「大好き」
僕も僕自身が不思議だ…。
「ふふっ…もぅ〜知ってるよぅ〜。西田は私のことずぅうっと、大好きなんだもんねぇ〜」
やっとわかった。
僕と同じ。
不思議ちゃんは僕と同じなのだ。
それがわかって安心した。
きっと、不思議というのはわからなくて、ミステリアスという事なのだろう。
野村という人間のことはよく観察すればだんだんわかってくる。
だからこそ、野村のことがますます好きになる。
不思議ちゃんが不思議じゃなくなるのだ。
それでも、やっぱりまだまだ野村は不思議だと思う。
不思議だからこそもっと知りたいと思うんだ。
だから、ずっと一緒にいて、もっともっと大好きになりたいと思えるんだ。
お読みいただきありがとうございます…✨
ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました…✨
『変』はここまでで一区切りで、これ以降は番外編となります…✨
『変』。いかがでしたでしょうか。
西田と野村はお互い違っているようで、とても似ていて、大きな違いと言えば自分の気持ちを我慢できるか、できないか。ということぐらいで、二人の気持ちの形も大きさも同じなのです。
そんな西田と野村は二人で生きていく上で、大切なものを見つけて、純粋な心のまま、幸せに未来を駆け抜けていってほしいとOBOnは思っています。
純粋だからこそ、聞いていてこちらが恥ずかしなるようなこととか、好きだとか、結婚だとかが言えてしまう。
でも、その言葉はただの軽薄なものじゃなくて、だんだん相手に良い意味で依存していって、最終的には共依存になって、心がくっついて離れなくなる。
そんな関係性って素敵だとOBOnは考えます。
中学一年生でこんなに羨ましい体験をしている西田は果たしてインキャと言えるのか?
疑問ですね。
作者視点からすると、自分のキャラというものは可愛くて可愛くて仕方がないのです。
だからこそ、愛着が湧くのですが、実際OBOnが中学一年生の時に西田みたいな羨ましいやつに出会っていたら、そっこー嫌いになっていますね笑。
野村みたいな不思議ちゃんもOBOnは怖くて苦手になっちゃうかもです。
北村は仲良くなれそうですね。
名倉も割と好きかもです。
足立は微妙ですね。
いやぁ、それにしても西田は良い奴ですよ。ホント。OBOn的には理想の彼氏です。
本当によくできた男だと思います。
余談ですが、久しぶりに会った友人が、OBOnと同い年のはずなのに、キラキラ輝いていて、the青春って感じだったので、それに比べて、一体OBOnは何をしているんだ。と嘆きたくなりました。
純粋に青春してた頃に戻りたいですね。何故時間って一方通行なのでしょうか。自由に行き来できたら良いのになんてよく思います。
ですが、そんなことを思ってしまうOBOnはきっともうすでに純粋ではありません。悲しいことです。
何はともあれここまでお読みいただきありがとうございました。作品に少しでも興味を持っていただけただけでもOBOnは嬉しくてたまりません。
それなのに、ここまで読んでいただけたなんて本当に嬉しくて、読者の方々に感謝してもしきれないのです。
OBOnはより一層精進してまいりますので、どうぞよろしくお願いします。




