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  作者: OBOn


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23/37

〜レモンの味って酸っぱいから苦手です〜

~主な登場人物~


・野村由紀


不思議ちゃん

中一

身長165センチ

星座はインフルエンザ

血液型はクワガタ

好きな食べ物はない。甘ければなんでもいい

不思議すぎて、一人でいることは多い


・西田義隆


主人公

中一

身長145センチ

星座は水瓶座

血液型はA型

ただ単にコミュ障

虫苦手だが、触れられなくはない

ただ、虫触ると、つぶしそうなので、掴めない、触るのはできる、手のひらに載せるのも、手に這わせるのもできる

精通は小四

やばい。今日は技術の授業で作った貯金箱(駄作)を持ち帰る日なのに、手提げを持ってくるのを忘れた。

学校指定のカバンもパンパンでもうこれ以上入らないし、どうしたものか…。

………。

……。

…。

「野村、手提げ持ってる?使ってないやつ」

「うーん。多分ロッカーに持って帰り忘れた手提げがたくさんある〜。勝手に取ってってい〜よ〜ぅ」

「ありがと」

「ロッカー中ぐちゃぐちゃだから気をつけてねぇ〜」と野村が大きな声で言った。



ほんとだ。めっちゃ汚い。二ヶ月前に配られたプリント。乱雑に積まれた教科書類。その下に折りたたまれずに教科書の重みによって、ぺちゃんこに折れている手提げ×4。その他よくわからない紙切れ。何かのプリントの残骸だろうか。



「へぇえー西田ってこーゆー手提げ持ってたんかー」

帰りの会の前のクラスのみんなが片付けをしている時に話しかけてきたのは、北村優吾。確か同じクラスの男子だったはずだ。


「違う…これは…」


野村に借りた…とも言い出しづらく…僕は黙る選択をした。

「いいと思うぜー、かわいくて」

「…ありがとう」

「ってか野村さんとおそろじゃない?その手提げ。前持ってたの見たぜ。もしかして、知ってて同じの買ったのか?好きなの?」


「べっ…別に…!」


と、背後に何か恐ろしい気配がした。


振り向いて見ると、野村だった。


「の…む…ら…」


「…」

野村はしばらく沈黙した後、その場を立ち去った。

「あーあ、あとで謝りにいけよー?」

北村もそう言って、どっかに行ってしまった。



今日も野村と一緒に帰る。


「その手提げ、かわいいよね」


「うん…」


「私が持つよ」


僕は野村に手提げをぶんどられた。

まずい。かなり怒っている。

と思ったら、野村の口から飛び出したのは、意外な言葉だった。


「ねぇ、デートしようよ」

「あ、や、その野村…ごめん」


「何が⁇行こ」


やっぱり少し怖い。



「まぁ、カラオケデートなんだけどね‼︎」

野村はカラオケの店の前でばばーんと効果音がつきそうな様子で腕を組み、ふんぞり返って言った。

野村がいつもの様子に戻った。

機嫌を直したのだろうか?

「先にドリンク取りに行こぅ〜」


五階にあるドリンクバーに行き、僕は水、野村はレモンティーをお互いチョイスした。


「たぷたぷにいれるなぁ」

「えへへぇ〜でしょう〜」

ドリンクバーはカラオケのビルの五階にある。

僕らの部屋は四階だ。

僕らは階段を降りた。


「うわっ」


野村がコップの中身をけっこうこぼした。


あんな溢れるか溢れないかギリギリの表面張力に頼った入れ方をしたら、溢れるのは当然だ。


床がびちょびちょだ。

「あー…こぼしちゃった…」


「服にかかってない?」


「うん。だいじょ〜ぶ〜。ごめんね。床拭くから、先行って歌っててぇ〜」


野村はふりふりと手を振った。


僕はリュックの外側に付いているジッパーを開いて、そこからティッシュを取り出した。


「いっしょに拭くよ」


「…ありがと」



「てれってってって〜♪」

部屋に入ってから最初に野村が曲を入れ、歌詞がないパートのリズムを口ずさんで、野村の歌は終わった。

次に僕は曲を入れていない。

「うまい」

「へへぇ〜すごいっしょ〜」

「うん」

「九十点超えたらなんかごほ〜びちょ〜だいねぇ」

「えぇ…」

「じゃかじゃかじゃかじゃかどん‼︎九十九点‼︎」

「すご!」

「やったぁ‼︎」

「おぉ…」

「さぁ〜西田は一体私に何をくれるのかなぁ〜⁇」

そう言いながら、僕の隣に座り、体を密着させてくる野村。

野村の体温が直に伝わってくる。顔も近い。


僕が野村にあげられるものは何があるだろうか…。

野村に持ちうる限りのものをもうすでに全て吸い取られて奪われているような僕に何があげられるのだろうか。


もうすでにそんなものは何もなくて、悩むだけ無駄なことなのかもしれない。


「ぼっ…僕の隣にずっといる権利って…いうのは…?」


「えぇ〜別にいらないかなぁ…」


「えぇ…いらないの?」


「な〜んか、そ〜ゆ〜のは偉そうで嫌だしぃ〜…」


「ごめんなさい」


「改めてもらうようなものでもないような気がするしぃ…」


「たしかに」


「そもそもそ〜ゆ〜のって言葉だけじゃ、不安だなぁ〜…口だけでいいのかなぁ〜………」


野村が言いたいことはなんとなくは分かっている。


でも、それは恥ずかしいんだ。

キザは僕のキャラじゃないんだ。

あとで、心の中でなんであんなことしたんだってのたうち回って一人反省会を開きたくなるのが目に見えているようなことはしたくないんだ。

ああああああ…!!!もぅ!!!


野村のばか!!!


「………なんて………求めすぎかな⁇ごめんね。なんでもない。忘れ…」


「て」は僕が言わせなかった。


目を閉じてしまっているから、野村がどんな顔をしているのかはわからない。


驚いているのか、泣きそうな顔になっているのか。


呼吸がとまった。


厳密に言えば、呼吸ができなかった。


呼吸の方法を忘れてしまった。


心臓が止まったかと思えば、うるさく鳴り響く。


周囲の音が聞こえなくなって、頭がぐるぐるして、爆発してしまいそうなような。


初めてはレモンの味。


なんていうが、本当だ。

さっき野村が飲んでいたレモンティーの味がする。


甘ったるくて、ちょっぴり酸っぱいや。


目を開けると、やっぱり野村は泣いていた。


でも、声を上げて泣くんじゃなくて、目を丸くして、自然と目から大粒の涙が溢れるような様子だった。


「ごめん…ごめんね…わたっ…私、ひどい奴だぁ…西田は西田なりの歩み寄り方をしてくれてるの…分かって…るのに…私…全部西田にやらせてる…全部わがまま聞いてもらって…幸せなのに慣れすぎて…怖く…なって…我慢できなくなってる…ごめっ…ごめんね…」


「それは…僕の方こそだ…もう不安にさせないって思ってたのに。ダメだ。僕は。ごめ…」


「ん」は野村にかき消された。


今度は目を閉じる暇がなかった。


だけど、野村の顔が近すぎてどういう表情をしているのかはあんまり分からなかった。


「言っちゃダメだよ」


ゆっくり僕から顔を離した野村は、目に涙を溜めながら、僕の唇に人差し指を当て、少し僕に怒ったような顔を向けていた。


だから、野村の頬を片手で包み、今度は僕からもう一度。


しばらく見つめ合ってから、もう一度。


抱きしめあってから、もう一度。


それから何回したかはわからない。


僕が変な気を起こす前にはやめた。


起こした方が野村にとってはよかったのかもしれないが、少なくとも今じゃない。


「……………嫌ってわけじゃないんだ。それだけはわかっていてほしい」


「ありがとう」

そのやり取りの後、僕と野村は、野村が次の曲を歌うまで、お互い顔を合わせる事ができなかった。


野村が次の曲を入れたのは一時間後だった。



「私は一人じゃなんもできないダメなやつだなぁ」

「そんなことは…………そうかも」

「ふへへ…正直者め」


特に話すこともないのでしばらく沈黙が続いた。


と思ったら、野村が口を開いた。

「眠たくなってきた」

「膝…使う?」

「めっちゃ使う」

野村は即答し、僕の膝に自分の頭をダイブさせた。

頭を撫でてみる。

しかし、反応はない。

泣き疲れて本当にすぐに眠ってしまったようだ。


しばらくして野村の頭を撫でながらもう片方の手で、先ほどまで僕の唇が触れていた野村の唇を指でぷるぷるさせ、いじって遊んでいると、


かぁぷ。


指に噛みつかれた。

かぷはみはむはもぱっくんちょ。


野村はぱちりと片目を開けた。

「なに⁇」

と僕の指をがじがじ甘噛みしながら聞いてきた。

「え…いや…別に意味は無い」

「そ」

野村は再び開いていた目を淡々とつむってしまった。

と思った矢先、噛みついていた僕の指が生えている手を掴み、僕の指と野村の指が交互になるように絡めて握った。


どきどきばくばく。


もう僕の心臓なんてものはいつ破けてもおかしくはない。

お読みいただきありがとうございます…✨

お口ってえっちですよね…✨

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