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9話「異世界の街」

2章のスタートです!

今後ともよろしくお願いします。

「さてと、これからどうしたものか。」


 森から出ることができたのはいいものの、自分が今どこにいるのか分かってない。


「とりあえず、歩いてみるか。行くよ、ハク、ヨモギ。」

『はーい。』


 しばらく歩くと、先に道が見えてきた。ここがどこかはわからないが、道に沿って進めばきっとどこかに着くはずだ。


 道に沿って進んでいくと、城壁のようなものに囲われた街が見えてきた。


「ここが街かぁ、でかいな」


 近づくにつれて街が大きいことがわかってくる。これからはここを拠点に頑張るぞ!


「身分証明証はあるか?」


 街に入ろうと門に近づくと、門番の人に話しかけられた。

 そりゃそうだよな、身分証明証か。どうしたものかな。


「持ってなくて。魔物に襲われて荷物を全て失ってしまいまして。」

「そうか。それでは通行料として銀貨を2枚いただこう。」


 お金!そりゃそうなのだが、今手元にはお金がない。

 どうすればいいんだ…?


「すまない、これでいいか?」

「ああ、いいぞ。通れ。」

「えっ。」


 なぜか後ろにいた馬車に乗っていた人が僕を助けてくれた。なんかやらされたりしないよね?

 どうしてもそんなことを思ってしまう。


「ありがとうございます。でもどうして…?」

「ははっ、そんなに怖がらないでおくれよ。僕はハルト。君は?」

「ムギです。よろしくお願いします。」


 ハルト。まさか日本人?

 そう思ったが、そんなわけないかと頭の中ですぐに否定する。


「ムギか。この世界じゃ珍しいね。それじゃあまたどこかで会おう。」

「は、はい。またどこかで。」


 この世界。まるで別の世界から来たような言い方だった。

 ハルトと名乗ったあの人は金髪ではあったものの、目は黒く顔立ちも門番のような西洋風の顔立ちではなく、日本人みたいだった。


 もしかしたら彼もこの世界への転生者なのかもしれない。

 そう気づいた時にはもう彼の乗った馬車は見えなくなっていた。


『あるじー?どこに行ってみるの?』

『おーい聞こえるー?』

「ごめん!なんだっけ?」

『はぁ、どこ行くのってお話。』

「そうだっけ。ごめんごめん。」


 いなくなってしまった転生者かもしれない人のことは一度忘れて、初めての異世界の街を観光することにした。



「すごいな…異世界の街って広い…。」

『あるじー次どこ行くー?』


 街の広さは当たり前に日本の街とは比べ物にならないくらい小さくはあるのだが、車だったり電車だったりという移動手段がないというだけでとてつもなく広く感じる。

 移動手段って偉大だな。


 こんなに疲れている僕に対して、ハクとヨモギはワイワイしていてまだまだ元気だ。むしろどんどん元気になっている気がする。


 そういえば、ハクとヨモギと普通に街の中を歩いていたのだけど、どうやらこの世界じゃテイムした魔物と歩いているのは珍しくないみたいで、よく「かわいい!」みたいな感じで話しかけられた。


 魔物がいるから、みたいに避けられたりすることはなさそうでよかった。


 こんなことを考えているうちにもハクとヨモギはどこに行こうかと話している。

 せっかくの異世界の街だし僕も堪能するか。


「よし!どこに行くか決まった?」

『あ、あるじ。えっとこれから冒険者ギルドに行ってみない?もう観光名所は生き終えたしさ。』

「冒険者ギルド?」

『うん、後この町で行ってないところって冒険者ギルドと薬屋と武器屋と…。みたいな感じで冒険者向けの施設だけなんだよ!』


 そんなに他のところ行ったっけ?

 そう思い、今日1日のことを振り返る。街に来て観光名所を全部巡って、グルメも堪能して、お土産とか八百屋とか行って…。

 確かにこの街の入れるお店は大抵回ったかもしれない。

 それでも疲れていないハクとヨモギの体力はどうなってるんだ?


「わかった。じゃあ冒険者ギルドに行こう!」

『やった!ヨモギ、ほら早く置いてくよ!』

『ちょっと待っててってぱ!』


 ハクとヨモギが遠くへと走り去っていく。

 僕も急いで走って追いかけた。



「迷ったー!!」


 ハクとヨモギを追いかけて走ってきてはいいものの、途中で2匹を見失ってしまった。ここはどこだ?

 2匹に連れられて街を回っていたから街の道が全くわからない。

 どうしたものかな。


「えっと大丈夫ですか?もしかして迷ってたりします?」


 困っていると、背後から声をかけられた。

 パッと後ろを振り向くと、そこには15くらいの女の子が立っていた。


「はい…迷子です。」

「やっぱり!それでしたらご案内しますよ。どこに向かってるんですか?」

「冒険者ギルドです。一緒にいた子達が先に行ってしまって。」

「わかりました!行きましょ!」


 そう言ってその子は僕の手を掴んで歩き出す。

 ここで大事なのは「手を繋いでいる」ではなく「手を掴まれている」ということだ。


 それよりこの子は他に予定とかなかったのだろうか?

 あったとしたら申し訳ない。


 そう思いながら女の子のことを見る。

 よく見ると、この子は純白のドレスのようなワンピースを着ていて髪飾りも高そうなかんざしが使われている。

 もしかしてこの子貴族の子とかそういうお嬢様だったりする?

 いや、流石にか。


「そろそろ着きますよー。」

「あ、ありがとうございます。」

「そういえば自己紹介まだでしたよね。私、ルミって言います。あなたは?」

「僕はムギです。どうぞよろしく。」

「ムギさん、いい名前ですね!」


 こういうことを言えるのは育ちがいい子なんだよな。

 でも苗字を名乗っていない。この世界じゃ苗字があるのは、貴族だったり王族みたいな位の高い人たちだけだ。

 ということは貴族とかではなさそうか?


「着きました!」

「ありがとうございました。本当に助かりました。」

「いえいえー、それじゃ中に入りましょうか?」

「えっ、もう大丈夫ですよ?帰ってもらっても。」

「そんなこと言わずに入りましょー。」


 冒険者ギルドについたと思ったら、ルミさんもなぜか一緒に入ってくる。

 まるで何かから逃げてるみたいに。何かに追われてるのか?

 厄介ごととかじゃないといいんだけど。


『あっ!あるじ遅いよー。どこ行ってたの?』

『まさかマスター、ナンパしてたの?きゃー、わたしたちがいるのに。』

「ヨモギ、バカなこと言わないの。この人は迷子になった僕をここまで連れてきてくれたんだ。」

「どうもー。この子達がムギさんの言っていた先に行ってしまった子ですか?」

「はい、そうです。」

「かわいいー!」


 そう言ってルミさんがハクとヨモギをもちもちしたり、もふもふしたりする。

 最初は2匹も嫌がってる感じだったけど、途中からもっと撫でて?という顔をしていた。


「えっともしかしてルミ・ネー…」

「しーっ。」


 後ろからルミさんに話しかけた冒険者の人が何かを言おうとすると、それをルミさんが静かにみたいなポーズで止めた。

 やっぱりこの人何か秘密があるな?


 関わらないように話を逸らすことにした。


「それで、ハクとヨモギはここで何をするの?」

『えっ?冒険者登録に決まってるじゃん。』

「ハクとヨモギはできないんじゃないかなぁ。」

『うん、だからマスターがするんだよー?』


 えっ。まじで?


 それから2匹に受付まで連れて行かれ、流れに流されていつの間にか冒険者登録を済ませていた。


「あれぇ?」

『これで一文なしから抜け出せるね!これから頑張ろー!』


 えいえいおーとハクとヨモギが言ってぴょんぴょん嬉しそうに跳ねている。

 確かに、職が見つかったのはラッキーだ。それに冒険者としても多分ハクとヨモギがいるからやっていけると思う。

 でも、心の準備って必要だとは思わなかったのかな…?


 こうしてふわっとムギたちの冒険者としての物語が幕を開けた。

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