7話「勇気を示す祠」
今回はちょっと長いですが、大事な回となっているのでぜひ最後まで見てください!
前回のあらすじ
森の主の住処の洞窟で、森の主の困りごとを解決したムギたち。森の主のおかげでとうとう森から出れる目処がついたのだった。
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「あるじ、森の端が見えてきたよー。」
森の主に森の抜ける道を教えてもらってからずっと、外に向けて歩き続けている。そしてとうとう、その森の終わりが見えてきたのだ。
今思えば、この森はこの世界に来てからずっといた場所でハクとヨモギと出会った場所でもある。ずっと怖かったが、いい思い出もたくさん残っているのかもしれない。
「プギィィィィィィ」
「投擲スキルの見せ所がキタァ!」
「あるじってそんなキャラだっけ?」
そんなことを言っている側から後ろからオークが襲ってきたが、自慢の投擲スキルレベル6でヘッドショットだ。
実は蝙蝠討伐をした時に投擲スキルの練習として石を投げまくり、スキルレベルは上がりさらに投げれる石をこのバッグに敷き詰めて、いつでも投げられるようにしているのだ。
少し興奮してしまったが、無事オークの頭に直撃しオークを一撃で討伐した。
【レベルが1から2に上がりました。各ステータスが上昇しました。スキル投擲がレベル6から7になりました。】
とうとうきた。待望のレベルアップだった。早速ステータスを見てみよう。
「ステータス・オープン。」
name ムギ・ワタシロ
レベル 2
ジョブ テイマー
HP 25
MP 16
STR 11
VIT 9
DEX 36
AGI 18
INT 21
LUX 100(MAX)
スキル:「テイム:もふもふ」「鑑定Ⅳ」「言語理解」「投擲Ⅶ」
相当ステータスが上がっている。多いところだと2倍だ。特に上がったのはHPとDEXか。HPはたいていのファンタジーで上がりやすく設定されてるものだから、まあわかる。DEXは器用さを示す数値だ。やっぱり投擲スキルの影響だよな…。
それとさりげなくレベルアップに伴って投擲スキルがレベル7に到達した。
軽く投げてみた感じ、特に変わったことはなく少し当たりやすくなったとかその程度のものだろう。
そういえば、ハクとヨモギは上がってないのか?何かステータス画面から勝手に見るのは失礼な気がして本人たちに聞くことにした。
「ハクとヨモギはレベル上がった?」
『多分だけど、僕たちが倒した経験値の一部はあるじにいくけど、あるじが倒した経験値は僕たちには入らないんだよ。だから僕たちはあともう少しかなぁ。』
『テイマーの特徴の一つだよ、マスター。』
全く知らなかった。とはいえ、一部なのだからこの2匹の方が僕より倒している数が多いだろう。そろそろレベルアップしてもおかしくないな。
レベルが上がってからは敵に会うことなく、森の端に到着した。
「森を抜けた…。やっとだ。」
『マスター、喜ぶのは少し早いかも。』
ヨモギに言われヨモギが見ている方を見る。
森と目の前に広がる見渡す限り平坦な草原は、大きな川で遮られている。
これが森の魔物が草原に出さないようにしているのだろう。
その川を渡るための橋の前に大きなオークが座っている。まるで「ここは通さんぞ」というように。
『どうしようか、ここを通らないといけないよね。なんか思いつく?あるじ。』
「いや、とりあえず通りたいことを伝えてみない?もしかしたら通してくれるかもしれないし。」
『やってみる価値はあるかも、善は急げだよ、早く行こう。』
とにかく話しかけてみようと座っている大きなオークに近づく。
「あの、そこ通りたいんですけど…。」
「なんだ?お前ら。ここを通りたいのか?」
「はい、通していただきたいんですけど。」
「じゃあお前ら、力を示せ。この先にある祠に勇気の証がある。それをここにもってこい。勇気のあるものこそが力を持っている。」
それがないとここを通す気はないのだろう。仕方がなく従うことにし、僕たちはオークが指を刺した方に向かって進んでいくことにした。
道中現れた魔物を倒しながらしばらく進むと、古びた祠が見えてきた。
「ここか。入るよ、ハク、ヨモギ。」
『『はーい。』』
中に入るといきなりそれぞれ一人に分断された。きっと他の人ができたのを見て試練を突破することがないようにするためなのだろう。
奥に進むと、看板がありこう記されていた。
「ようこそ、勇気の祠へ。ここは勇気のある者のみが進むことができる。心が揺らげばあなたはこの祠に挑戦する資格はない。後ろの扉から引き返せ。勇気のある者だけが奥の扉へと進め。」
本当のことをいえば行きたくはない。とはいえ、こんなところで一生を過ごすのはごめんだ。
覚悟を決めて奥の扉を開けると、下が見えない崖を挟んで、奥に扉がある部屋だった。きっとこの崖をどうにかして肥えろということだろう。またあった看板を読むと、
「この部屋は勇気のある者のみが進むことができる。ここは見えない床を渡ることで奥に進むことができる。ただし、この崖にはもちろん床のないところもある。勇気を示せ。」
なるほどな。前世に見た映画が役に立つ時が来た。あの映画では本当に見えない床があって渡ることができたんだよな。いくしかない。
「いくぞ、僕。」
あれこれ考える前に足を動かした。思い切って大きく一歩目を踏み出すと、そこには透明な床があって歩くことができた。そうして、反対側まで来ることができた。
扉を開こうとすると、そこにはまた看板があり、
「よくぞわたり切った。最初の一歩を小さく踏み出していたら今頃君はここにはいなかっただろう。次の部屋へと進め。」
扉を開きながら考える。きっとさっきの崖は手前の方だけ、透明な足場がなかったのだと思う。
次の部屋は、マグマの海だった。
入った瞬間、熱気が押し寄せ凄まじい熱を浴びた。この部屋に看板はなく、どうやら自分でどうすればいいのか考えろ、ということなんだろう。
試しにバッグから石を持って投げてみる。投げた石はマグマの中に水しぶきを立てずに入っていった。
普通なら特に違和感も感じないのだが、この祠にいたこともあってなのかこれがマグマではないことに気づいた。そもそもマグマならコポコポ音を立てているか、もっと黒いドロっとした液体だ。だというのに、このマグマもどきはトロッとしている。
何も考えずに全身からマグマに飛び込む。その瞬間身体中に焼けるような感覚が走った。熱いと思うと同時にここは異世界なのだからマグマが違うということに気づく。先入観を捨てきれなかった僕の負けだ、とおとなしく認め自分の命が尽きるのを待った。
おかしい、と思ったのはそれからしばらくしてからだった。
もうあのマグマと熱さの中にいればとうに死んでいるはずなのに、いつの間にか熱いという感覚はなくなり、涼しい何かが頬を撫でていた。しかし、まだ液体の中にいる感覚はあり、目も開くことができなかった。
きっと水では何かの液体の中にいることがわかり、上に向かおうと泳ぎ出す。顔が出るとそこはマグマの海の部屋ではなく、どこかの洞窟の中だった。
この洞窟は今自分がいたこのよくわからない液体と一つの玉座のような椅子しかない不思議な部屋だった。
液体から出て玉座まで向かう。玉座には白骨となった人がすわっており、頭には王冠をつけていた。手を合わせ、一歩下がると、玉座の横にあった箱のようなものを見つけた。なんの飾りもない木箱だったその箱に体が吸い付くように箱を開けた。
箱の中には、一枚の紙とカードのようなものがあった。
紙を開き中を見ると、そこには彼の希望が書かれていた。
「やあ、勇気のある異界の者よ。きっと君はマグマに潜ってしまったのだろう。普通の人なら横の抜け道を探しマグマに飛び込もうなんて思わない。私は日本という国からやってきた異世界人だ。同じ出身として一つだけ伝えておこう。この世界は神様に支配されている。このままではいずれ近いうちに崩壊するだろう。しかし神は遊び程度に思っているこの世界を助けてくれはしない。君には神を討って欲しい。そのためにこのカードを授ける。このカードはオーバースキルというものを解放する神具だ。私にはこれを扱いきれなかったが、ここまで来れた君ならきっと大丈夫だろう。信じているぞ、同じ故郷の者の一人よ。」
衝撃を受けた。僕の他にも同じように異世界から来ていたものがいたなんて。初めて会った日本出身の人からの頼みだ。聞かないはずがない。
託してくれたオーバースキル解放カードを手に僕は再び謎の液体の中に入った。
目を開けるとそこはクリアの間だった。
予想通り、あの人がこの液体をテレポート先にしていたのだ。
僕はあの人の無念を果たして、神様を討つことはできるのか。
僕の冒険はこれから激化するのだった。