3話「ハクって強い?」
この小説が初めての投稿作品です。至らない箇所も多いと思いますので、ご指摘いただけると嬉しいです。
前回のあらすじ
ムギは、ついてきてしまった子犬をテイムすることができ、ハクと名付けたのだった。
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テイムに成功したとはいえ、いまだ苦しい状況にあることは変わらない。
早めにしておかなくてはならないことは、寝床と食料の調達をすることか。
「そういえば、ハクってどんなステータスなの?」
ふと気になったことを口にする。
『鑑定で見れないの?えっと、あるじ?』
あるじ、と呼ばれて身体中に電撃が走った。あるじ…なんていい響きなんだ。もふもふの動物にあるじ、なんて呼ばれる日がやってくるなんて地球にいた頃は考えもしなかった。
あまりにも嬉しかったのだと思う。目から涙が溢れ、ポロポロと目からこぼれ落ちた。
『あるじ、どうしたの。大丈夫?』
あるじ、と呼ばれてまた涙が出る。ああ、幸せだ。
それから1時間ぐらいたったころ、ようやく会話できるほどに復帰した僕はステータス画面と睨めっこしていた。
「どうして鑑定スキルのレベルが上がっているんだ…?」
ハクを鑑定してみようとした時にふとステータスを開くと、鑑定スキルがレベル1から2に上がっていたのだ。
考えられる仮説は2つ。スキルが上がるのは寝たり気を失った時ということ。これなら気を失っていた時に上がっていたと考えられるから、辻褄は合う。
もう一つは最後に鑑定した時にレベルアップしていて通知などがないため気づいていなかったということ。ともかく、これからは鑑定するごとに確認してみるか。
『あるじ、鑑定できた?』
そうだった。レベル2になって何が変わっているのか、ハクでみてみるか。
「鑑定」
鑑定内容
名称:ハク
レベル1
種族:ムギの眷属
レベル1の鑑定が名称だけだったのに対して、レベル2はレベルと種族が見られるようになった感じか。
となると、レベルのない植物はどうなる?
試しにそこらへんの草で鑑定してみるか。
鑑定内容
名称:月見草
状態:良い
分類:月見草類
なるほど、レベルの代わりに状態、種族の代わりに分類がわかるのか。でも、まだ安全かどうかとかの説明が見れない。食料確保が難しいな。
内容が増えたとはいえ、ステータスとは言い難い内容だ。僕が欲しいのは数値とかスキルの情報だ。
「見れないや。どんな感じなの?」
『うーん。あるじのステータスから見れない?』
僕のステータス?そりゃハクのは見れないと思うけど。まあ、やってみるか。
「ステータス、オープン。」
ステータスを開くと、僕のステータスのテイムしたモンスターの欄にいるハクの文字がクリックできるようになっている。
試しにクリックすると、画面が突然変わりハクのステータスが表示された。
name ハク
レベル 1
種族:???(ムギの眷属)
HP 38
MP 26
STR 25
VIT 19
DEX 6
AGI 15
INT 9
LUX 42
スキル:「身体強化Ⅰ」「威嚇」
強すぎる…。全ステータスが僕よりも高く、2倍以上ある数値もある。
考えないようにしていたのだけれど、やはり僕は弱いのか。
いや、まだこの世界で他のモンスターに会っていない以上、そうも決めきれない。
まだ、ハクがとんでもなく強い可能性が残っているし。そういうことにしよう。
それにしても、種族の欄が鑑定結果と少し違うな。鑑定の時は僕の眷属というだけの表示だったのに、ステータスでは???になっている。
神の血筋だったから種族として定められていないということか?
とはいえ、これでハクが強いことがわかった。これなら多少の戦闘ならどうにかなるだろう。となると、当面の問題は森の脱出方法の模索と、食料問題になる。
どうしたもんだろうか。鑑定のレベルさえ上げることができれば、食料調達は安全にできるだろう。やっぱり鑑定しまくるしかないのか?
「とりあえず、僕は鑑定しまくってみるよ。ハクはどうする?」
『そうだなぁ、ハクも暇だしそこら辺を見てるよ。』
「わかった。それじゃ何かあったら伝えてね。」
『はーい。』
それから周りで鑑定したものはない、と言い切れるぐらいの数を鑑定し続けた。鑑定を始めて2時間が経とうとしていた時だった。
【鑑定スキルの熟練度が一定に達しました。鑑定スキルがレベル2からレベル3になりました。】
アナウンス!ということは仮説はどちらでもない、ということになる。条件は一体なんなんだ?いや、今はひとまず鑑定の変わったところを確認して…。
『あるじ、逃げて!』
ハクの緊迫した声で顔を上げると茂みの奥から、斧を持った豚のような見た目をした二足歩行の魔物がこちらを眈々と狙っていた。
気づいたタイミングでそいつはこちらに向かって突進してきた。
『あるじ!』
ハクの声でハッとする。急いでその場から飛び退き、敵の攻撃を喰らうことはなかった。
ハクもこちらに戻ってきて、2対1は作れている。とはいえ、喧嘩とは無縁な人生を過ごしてきた僕にとって、戦闘なんてものをしたことはない。
敵の突進をきっかけに戦闘は始まった。