可愛い先輩だと思ってたのに!
「支倉さん、お疲れ様!」
「結木先輩!お疲れ様です!」
この人は、私の直属の先輩の結木春人先輩。
やっぱり、可愛くて癒しだなぁ…
私は、そう思っていた…あの時までは…
「結木先…」
「残業とか、マジでダルすぎ!あ〜!!タバコ吸いて〜!!」
「あ、あの…」
少し、間が空いたあと結木先輩は言った。
「支倉さん、どうしたの?」
「いやいやいや!全然、誤魔化せてないですから!」
「ちっ」
そう。私の可愛いくて癒される先輩はヤニカスで猫かぶってるだけの先輩でした。
騙された…
「騙されたって、顔してるね!」
「えっ」
「こんな、僕でショックだった?」
「当たり前じゃないですか!先輩は、可愛くて!私の癒しだったんですから!」
「そっかそっか!君がどう思おうが勝手だけどさ…」
そう言って、先輩は私の耳元に近づいてこう言った。
「僕の本性のことバラしたら、君が僕の上着の匂いを嗅いでたことバラしちゃうからね」
「な、なんでそのことを!」
そんなこんなで、私は先輩に目を付けられてしまったのです。
そう…私が、先輩の秘密を言わないかどうかを監視するために…
とは言え、こんなに見られてると仕事がやりにくい…
「あの、先輩」
「支倉さん!どうしたの?」
「ヴッ」
いやいや、負けるな私…
「そんなに見られるとし仕事しにくいんですけど…」
「…」
キョトンとした顔で、先輩は私のことを見た。
先輩は、一度ニッコリと笑って…
「支倉さん、ちょっと来て!」
「え!?」
突然、手を引っ張られて職場を飛び出した。
「な、なんなんですか!いきなり!」
「…いや、あんなとこで素になるわけにはいかないだろ。」
「確かに…」
「…お前が、俺の本性のこと言わないか気にしてたけど心配いらなかったみたいだな。」
「え?」
「例の写真も削除したから安心しろ。」
「はい…」
「ところでさ、支倉って彼氏いんの?」
「いないですけど…」
「じゃあ、俺と付き合わない?」
「は!?」
「そんなに、驚くなよ…」
「いや、だって…」
「付き合うといっても、フリなフリ」
「フリ…?」
「そう、女よけってこと」
女よけのために、先輩と付き合う…?
何を言ってるんだ、この先輩は…
「俺の本性を知ってるのは、お前だけだから都合がいいんだよ。」
「なるほど…」
そういうことならと、私は了承した。
「分かりました。付き合いましょう。」
そもそも、私が働いている職場は社内恋愛禁止ではない。
だから、交際をしている人は結構いたりする。
「よし。契約成立!」
「じゃあ、これからは恋人だから俺のことは名前で呼んでね」
「分かりました!春人先輩!」
「ん。そういや支倉の下の名前ってなんだっけ?」
「沙穂ですけど…」
「じゃ、改めてよろしくな!沙穂!」
こうして、先輩の女よけの為に付き合うことになった私…
先輩の本当の彼女になったのはまた別の話…