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21 聖女、助手を育てる

 戦場に近い街の病院に、重傷患者が運び込まれ、私に治療の要請があり、治療チームを組んだ私はすぐに急行した。

 私の体力、集中力を鑑みて外科手術は二、三日に一回が適量だ。

 とにかく手術が出来る人材を育てる事が急務と私は考える。



 患者の右腕は上腕から先が無くなっており、患部は赤黒く血が滲んでいた。

 手術台に乗せられた患者を見ながら、私は助手たちに語りかける。


「いいですか。切断された腕や指は、氷水に直接浸けて冷やしてはいけません。細胞が死んでしまいます。そうすれば、魔術や手術でくっつけても、壊死してしまってるので意味がありません。千切れた部位はタオルや薄い布で包んで冷やして保存してください」


 助手たちは患部を見ながら、諸々の反応を見せる。


「……そうなのですか 知りませんでした」


「ただ氷水に突っ込んで冷やせばいいものと」


 そう、正しい処置を施せばこの患者さんも腕を治療することが出来る。

 この患者さんの腕はタオルに包んで保存されており、再建は可能。

 まだ、この人は運が良い方だ。


「ええ、仕方ないですが、間違った知識ですね。出来るならば多くの人に周知していただきたいです」


「……助かります これからの医療の発展に役立てます」


 私は保存されていた腕を確認しながら、手術台に置いた。


「ええ、頼みますね。では…… 手術を開始します。本日の対象患者は25歳男性。戦闘中に、剣によって右腕を切断され昏睡状態。脈も呼吸も弱く、心音も弱い」


 手術をすると同時に、助手たちにやり方を教えながら、医療者として育てなければならない。

 私は助手たちに、傷口を洗浄させるとチューブに繋がれた針を動脈に打ち込む。


「まずは麻酔をかけます。施術による激痛で起きて暴れる可能性もありますので」


「……なるほど」


「勉強になります」


 強めの灯りを点し、患部を照らさせなから、私は患部の傷口を弄る。


「さて、まずは千切れた神経を繋げます」


 神経を見つけると、細い糸で千切れた部位のものと繋ぎ始める。

 助手たちは驚きながら息を呑む者も居れば、じっと冷静に見つめ続ける者もいる。


「よく人体の構造を見て、覚えて下さいね。いずれあなたたちにもやってもらわないといけない時がきます」


「……わ、わかりました」


 神経を繋げたら、骨の処置に移る。

 レオナが私の汗を拭い、適切なサポートに努めてくれる。


「骨はプレートで繋げ、歪に削れた部分も整えます」


 骨を特殊なプレートで固定する。

 ここまでで、三、四時間は経過しているだろうか。

 血を見て、耐えられず退場してしまった助手もいた。


 手術は知識に加えて、胆力、集中力、体力が必要な作業である。

 でも、ここまで残った助手たちには成長が期待出来る。


 千切れた筋肉を縫合しながら、私はようやく手術を終える。


「最後に筋肉を縫合し…… 後は快癒を待ち、リハビリは患者に頑張ってもらいます」


 残った助手たちは、様々な表情を見せながら、メモを取っているようだった。


「……鮮やかなお手並み、さすが聖女さまです」

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