18 聖女、素材を集める
私は早速レオナの案内で、城から2時間ほど馬車で揺られ、郊外の草原へと足を運んでいた。
早くポーションの素材を手に入れなければならないからだ。
細い月明かりの道は足場は悪かったが、レオナの灯りを灯す魔術のお陰で躓かずに目的の場所までやってこれた。
レオナは私の手を引きながら、時折りこちらを伺う。
「足元にお気を付けくださいね、ポーラ様」
「ええ、大丈夫よ、レオナ。あなたの灯のおかげでよく見えてるわ」
「それは何よりです。何かお困りでしたら、何でもお声をお掛け下さいね」
まるで崖のような山肌から、大きな川が流れるのが見える。
サクラモンの自然は雄大で、月明かりの景色は美しい。
そんな私の注意力を見透かしたのか、レオナが心持ち強く手を握ってくる。
「……そろそろ着きますよ。私も注意を払ってますが、野生の獣にもお気をつけください」
「相当、郊外ですものね。もちろん、気をつけるわ」
そうして、歩いているとぼうと淡い青に光る草花が見えてきた。
私は思わず駆け寄って覗き込む。
「……ミカヅキソウ!」
そこには希少な草花であるミカヅキソウが群生していた。
月の明かりにのみ反応し、淡く光る小さな草花で、ポーション作成で最も重要な素材の一つだ。
レオナはじっとミカヅキソウと私を見つめてくる。
「どうでしょうか? 手にとってお確かめください」
私はミカヅキソウの一つを摘み、じっと見つめてみる。
これは類似のものではなく、本物だ。
「うん、間違いないわ。セルデュクに生えていたものと成分に違いがないか、調べる必要はあるけど、おそらく大丈夫よ」
レオナはホッとしたように胸を撫で下ろす。
「良かったです。これで1番採取が困難なミカヅキソウが入手出来ましたね」
それにしても、辺り一面ミカヅキソウが群生している。
これなら、ポーションの素材に当分困らないだろう。
出来るなら、自家栽培のやり方も研究したいところだが、おいおいそのメソッドも考えたい。
とりあえずの急場は凌そうだ。
私はレオナと一緒にミカヅキソウを摘みながら礼を言う。
「ありがとう、レオナ。あなたのお陰よ。この調子で素材を集めていきましょう。」
レオナは微笑みながら答える。
「……いえ、我が国にとってもポーションはこれからもっと必要になりますから。それにポーラ様の為なら骨身を惜しみませんよ」




