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九十七話

 あっと言う間にバークの町に到着の僕ら。


 前に来た時よりもそのかかった日数が短かったのは慣れた物だったからなんだと思う。


 もう何度こうして地下道を掘って移動をして来た事か。幾ら何でもこれ程に長距離を移動するのに手間を掛けているのは世界広しと言えども僕くらいなモノだろう。


 目撃されない事を目的としての移動方法だ。これが別段見られても良いと言うのであるならば、魔法で空を飛んで移動すれば良い。


 そうすればもっと短い日数、と言うか、一日未満で移動は済んだだろう。


「早速だけどもメーニャ、町の様子の確認を頼むよ。」


 あの調査官がまだ滞在しているとは思えないが、それで大胆な動きが出来る訳じゃ無い。


 ここまでこれ程に慎重にやって来たのだから、これで僕らの事がバレてしまうのは避けたい。


 メーニャもその点は分かってくれているだろう。「畏まりました」と言ってバークの町へと出かけて行く。


 その確認の間の僕はいつも通りの御留守番だ。


 メーニャが戻って来る間に部屋の内装を整えるのだ。


「いやー、凝れば凝る程に腕前が上がっていくなぁ。何だかコレが趣味になって来た感あるね。」


 僕はそんな事を溢しながら報告を待つ。そうしてメーニャが戻って来て説明してくれた情報にホッとする。


「どうやらあの者は王国へと帰還した模様です。集めた話を元に計算すると、どうやらこの町を我々が撤退した翌日にはこの町を出て行った様で。そこから推測すると既に首都に着いていてもおかしくは無いかと。」


「いやー、コレで心配が一つ減ったと言っても良いね。あの調査官が居るだけでソワソワさせられていたからなぁ。良かった良かった。」


 これで心置きなくゆっくりと出来る、そんな風に思っていたら追加情報がメーニャの口からまだ続いた。


「それと魔王様、その調査官の正体が掴めました。どうやら王国では「剣聖」と言う呼ばれ方をしている者の様です。」


「・・・はい?」


 僕はその情報に頭が付いて行かなかった。だって。


「いや、そんな御大層な呼び名を受けている者がこんな辺鄙な所にまで出張?御供も付けずに?え?ソレ何の冗談?」


 そうだ。そうなのだ。国でその様な名を付けられた存在が一人で辺境に派遣されてそこの問題を任される?


 馬鹿を言っちゃいけないと思うのだ。だけどもソレは実際に事実として僕らは目の前にしている訳で。


「いや、そんなのが何で?訳が分からない。意味が分からない。嘘でしょ?」


「いえ、これは確かな筋の、まあ言うなればこの町の管理に正式派遣された国の文官からの情報です。確度は高いです。」


「いや・・・何でヨ・・・」


 メーニャがそんな人物から情報を得て来たと言う事もビックリ過ぎる。


 どれだけの短時間でそんな内部に入り込んでそこまでの情報を得て来たのか?その方法は?


 ソレを悩むと頭が痛くなって来そうで止めた。ついでに本人から聞く事も止める。


 優秀な事は別に悪い事では無いからだ。前々からメーニャが優秀「過ぎる」と言うのは分かっていたのだから。


 考えを放棄した方が僕の心に優しい。今回の事はなるべく頭の奥に仕舞っておく事にした。


「ソレと、魔王様。どうやら勇者が本格的に国を出てダンジョンの攻略へと乗り出した模様です。」


「今その情報・・・まあ、うん、じゃあ僕らもゆっくりと王国の首都に・・・はぁ、ぼちぼち向かおうか。」


 僕らの移動目標、それは王国首都の地下への潜伏。


 誰も魔王が王国の地下に潜むなどと言った事を思いもしないだろうし。


「何もしないで静かに過ごす」とは考え付きもしないだろう。


 そう、僕の狙いはこの先、ずっとずっと、それこそ勇者が寿命で死んでしまうまで一切の接触が出来ない様に隠れ住む事なのだ。


 勇者と対峙してしまえば「魔王」の命運尽きたも同然。ソレを回避する為の策なのである。


 絶対に生き延びたい僕は殺されるのなぞ真っ平御免。


 人族も魔族も関係無い。僕は僕であり続けたいだけなのだ。

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