九十六話
それからはアッと言う間に二十日が過ぎた。
メーニャは町へ小悪党狩りへとちょくちょく出かけては勇者の動向情報と小銭を回収してくる。
その間の僕は拠点?地下に作ってある隠し部屋で御留守番だった。暇で仕方が無かったのだが、そこは我儘を言う所では無いなと思い止まって我慢した。
メーニャは「任務」、そう、仕事として町へと繰り出しているのだからと言い聞かせて。
ならば僕が留守番と言えども遊んでいて良い訳じゃ無いと思ったのだ。まあソレも今さら何を言っているんだと他から見たら突っ込まれる所ではある。
そんな間にも何度かミーチェの所に出向いて野盗や強盗、山賊などが出ていないか等の情報を聞きに行ったりもしている。もちろんメーニャが、だ。
僕は外に出ずに相変わらず引き籠っている。
それで新規で一件、また街道に犯罪者が出たと言う情報を仕入れてメーニャがこれを潰しに行っていたりする。
この際にもメーニャはその犯人どもを「生きながらにして殺す」と言った方法で魔族の持つ人族に対する衝動を解消していた。
その後のそいつらの処理は町の守備、衛兵たちへと丸投げと言う。
生きて地獄の責め苦を受けた者たちの末路は良くて錯乱、狂乱、発狂。基本的に廃人にさせられて魂が抜けたかの様にさせられている。
メーニャがどの様な拷問を行っているのかは、未だに僕は知ろうとはしていない。聞いちゃいけないと勘が叫んでいたから。
「噂になったねぇ。悪事を働けば死神がやって来てその魂を刈り取るだなんてさ。メーニャってば、この町ではすっかりと有名人になっちゃって。二回だけなのにね、動いたのはさ。」
どうにもその二回だけでも衝撃が強過ぎたのか、この件を担当した兵士が話を外に漏らしたらしくアッと言う間に町中に広がった様で。
「魔王様、もしかするとこの噂を嗅ぎ付けてあの人族がここへとまた戻って来ると言った事があるでしょうか?」
「いや、心配しないでも良いんじゃない?また来たら、うん、逃げれば良いよ。本当は悩まされたく無いから今後の為にも消えて貰いたいけど。うーん?何て言えば良いのかなあ?あの調査官には関わっちゃいけないって、そう思っちゃうんだよねぇ?どうしてだろう?」
「魔王様がそこまでお気に為されるのならば、わたくしが王都にて調べて参りましょうか?」
「いや、それは止めて。幾らメーニャが優秀でも不測の事態が起きる可能性も否定はできないよ。信頼はしてるし、信用もしてるけど。ソレは最後の手段に取って置いてくれないかな?」
「はい、畏まりました。魔王様の信頼を裏切らぬ様、今後も精進してまいります。」
「かたい・・・かたいなぁ・・・もっと気を緩めてくれても良いのに。」
メーニャが未だに僕への態度を少しも柔らかくしてくれない所にほんの少しの寂しさを感じるが、ソレもまあ仕方が無いと諦めておく。
僕としてはメーニャにもう少しだけ気を楽にして緊張を緩めてストレスを溜めない様にして欲しいだけなのだが。
とは言ってもマードックに対してみたいな遠慮の無さ過ぎる所までぶっ飛んで欲しいとは思えないけれども。
そんな事を考えつつも、あの調査官の動向は物凄く気になりはするのだが、嫌な予感しかしないのでなるべく今後も無視をしていく予定である。
「よし、それじゃあ商会の抗争の顛末も知ったし、ある程度ここで過ごしたし、流石にもうバークの町から調査官は去ったよ・・・な?うーん、よし、町を出ようか。」
ここマルートに戻って来た目的は時間稼ぎみたいなモノだ。
幾つかその他の用事も含んではいたが、それらはもう済ませてしまっている。
ならば目的達成として動くべきだろう。今後の事を見越して。何時までもこの町にしがみつく意味は今の所無いのだから。
「良し、行ったり来たりだけど、バークの町に向かおうか。」
こうしてまた再びトンネルを掘っての移動となった。




