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九十四話

 建屋の中に居た者たちは蹂躙された。メーニャに。


 怒号に叫喚、泣き叫ぶ声、悲鳴、などなど大騒ぎ。


 しかしソレも少しずつ治まっていき、次第に嗚咽やら呻き声だけが残った。


「全員生かさず殺さずとしておきました。魔王様、こやつらの処分などに指示が御座いましたらご命令を。」


『それじゃあ、そうだなぁ。メーニャが自由にして良いよ。ソレと魔道具の通信はその間切っていて良いや。存分に楽しんで。』


「魔王様の心遣いに感謝します。では。」


 そうして通信は切れた。静まり返った部屋の中で僕は独り言ちる。


「うーん、メーニャがこの後でどんな「お楽しみ」をするのか想像したく無いなぁ。でも、ソレはソレは凄惨な事になるんだろうなぁ。」


 魔族が持つ人族に対しての殺人衝動はかなり業が深い。


 それこそ魔王が存在する時には確かその効果が二割増しだとか言っていた様な気がする。


 それでもメーニャはこれまでにその瞬間沸騰を抑え込む訓練を積んで来ていた。


 我慢に我慢を重ねたソレがここで爆発するのだ。ソレを思うと恐ろしさしか感じない。


 そうしてかなり長い時間が経ってからメーニャがこの地下の隠し部屋へと戻って来た。


「お疲れ様。報告は要らないよ。メーニャが衝動を解消できたならそれで良いからさ。」


「はい、今回の件で色々と試させて頂きました。今後暫くは衝動は小さく出来るかと思います。」


 どうやら様子を窺ってみれば、メーニャはどうにも物凄くスッキリとした表情になっていたのが窺えた。


 何時もならそんな顔色の変化などを読み取れない程に能面なメーニャなのに。


(気になるけど、聞いちゃダメなんだろうなあ。けど、ちょっとだけ・・・いや、ダメだ。けどなぁ・・・)


 ソレでも少しだけ聞いてしまった。後悔するかもと思いつつも。


「一人残らず始末したの?」


「いえ、全員生かしてあります。ありますが、生きた屍と言って良い様な状態ですね。」


「え”?」


 僕は背中がぞわッとした。メーニャの口から「生きた屍」などと言った言葉が出て来るとは思っても見なかったから。


(生きてる?生きてるのに、死んでるの?屍って・・・どんな事したらそんな事に・・・うぅ、怖いよ)


 聞かなきゃよかった、ソレに尽きる。


 だって魔族は人族を見ると殺したくて堪らなくなる、いわゆる呪いとでも表現していい衝動を抱えている。


 なのに殺さない、殺さなかったのだ、今回メーニャは、誰一人として。


 そしてその衝動をソレでも解消し、スッキリと出来ているのである。


(何をどうしたらそんな事になるの?・・・これ以上は踏み込まないのが正解だよね・・・)


 綺麗サッパリと殺すよりも人を「廃人」に追い込む方がよっぽどに衝動解消の効率が高いなんて思いもしなかった事実だ。


 これは知りたくは無かった。


「・・・それで、そいつらのその後の処理は?生きてる、んだよね?」


「町の衛兵詰め所に情報を投げておいたのでその内に捕縛されるかと。」


「あ、そうなんだ・・・」


 これには流石に僕も悪党どもを憐れむしか無かった。

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