九十二話
ミーチェとの交渉をして三日経った日の事、軽い感じでお宅訪問。
「・・・突然の御来訪をされるとこちらは何らの御持て成しの御用意も出来ませんので前触れをできれば頂きたいのですが・・・」
物凄く嫌そうな顔をしてミーチェがそんな事を口にするけれども。
こっちも周囲に余計な者が居ない事を確認してから声掛け、接触をしている。その点はこちらの都合ではあるけれども、結構神経は使っているのだ。
さて、ミーチェのそんな態度にもメーニャはマトモに取り合ったりしない。単刀直入だ。
「先日の件、何か情報などは?」
「・・・はい、今は無きブレッツ商会の残党、と言っても良いのでしょうか?雇われていた私兵たちの一部が街道で野盗働きをしております。既に被害が二軒発生しております。死人は出ていないのですが、奴らが調子に乗って来たら、ソレも時間の問題かと。」
「詳しい詳細などがあれば今出してください。」
どうやらこの度の騒動で捕まえ損ねた者たちの一部がその様な事を起こした様だ。
話には加わってはいないが、僕はこの会話をメーニャの作った例の音声の魔道具で聞いている。
この度の訪問は僕の気まぐれと言った事では無く、メーニャの為である。
これまでの三日の間にはメーニャには暇を与えて休息を取る様に言ってあった。
ずっと働かせてばかりいたのでここで一度大きめに休みを入れる様にと。
とは言っても町に繰り出してメーニャが何らの憂いも無く散策やら観光が出来る訳では無い。
メーニャも僕から休めと言われても困惑してしまっていたので、せめてと言う事で情報収集などの仕事を気にせずに町を歩いて回って気分転換でもして欲しい、そんな頼む形の命令になると言うおかしな話になった。
なのでメーニャはこうしてこの町に戻って来てから一切の活動をしていないのだ。
勇者の動向情報も、町でのその他の噂話ですら収集をしていない。
そうこうしている内にメーニャは大体の話をミーチェから聞き終えていた。
「では魔王様、行って参ります。」
『うん、気を付けてね。何時も言ってるけど、危なくなったら直ぐに引き返して来てね。」
「お心遣いに感謝致します。では。」
こうしてメーニャがミーチェの前から姿を消す。文字通りに。魔法で。
メーニャが向かうのは今回情報を得たその野盗の所だ。奴らの隠れている拠点の凡その場所すらも判明していた。
そこへとメーニャが向かっている途中で僕は注意する。やり過ぎない様に、と。
『メーニャ、あんまりにも非道過ぎる事は無しでね?とは言え、以前から悪行を重ねて来ていた奴等らしいし、それ相応の目には遭わせる所までは構わない。』
魔族が持つと言う人族に対しての「発作」は相当に強いと言うのは知っているので、勢い余って殺してしまったとなっても、そこはしょうがない事だと理解はしている。
けれどもその殺人衝動とやらをメーニャはある程度は制御できる様にはなっているのだ。
なるべくならそのストレスを一番解消できる方法を見つけて今後実践できる様になって欲しいと思っている。
そうすれば今後にも何かと生かせる場面があるのではと期待していたりする。
何故なら、幾らでも直ぐにポコポコと湧いて出て来る物では無いからだ、悪党と言うのは。
効率良く潰し過ぎれば数は減る。それは今後のメーニャの衝動解消の為の資源が減る事を意味するから。
なので管理が必要になる。衝動のままに悪即斬をし続けるのはメーニャの為にならない。
今後もスッキリする為の種や枝は残すのが得策なのだ。
僕がそう思っていた事をメーニャは分かっていた様で。
「安心してください魔王様。程良く、生かさず殺さず管理致しましょう。」
(うん、自分で言っておいてなんだけども、コワイなぁ)
メーニャのこのセリフに僕はちょっとだけ背筋が寒くなった。




