九話
とは言え、そんな風に叫んでもこの部屋から出られ無ければソレも虚しいだけだ。
この様にして基礎を履修した僕が次にしなくちゃいけないのはこの封印結界の解除なのだけれども。
「・・・ねぇ?この結界ってさ?どうやれば解除できるとかは、メーニャは知ってたりする?」
「兄の独自に編み出した魔法だと言うくらいしかわかりません。御力になれず申し訳ありません。」
「そっかぁ、独自、うーん?独自ねえ?じゃあ僕も魔法が熟練の域に達したら、独自の魔法とか作れちゃうのかな?」
「え?」
「え?」
メーニャがここで驚いた顔になった事に納得がいかなくて僕は追加でここでメーニャの顔を見て説明する。
「なに、かな?マードックが作れたって言うなら、僕にも出来ないはず無いじゃん?だって、魔法何でしょ?同じ魔法なら僕にもこうして使える様になったわけだし?この封印を解除出来る魔法を創れちゃったりするんじゃない?」
僕のこの見解にメーニャは感嘆を漏らしている。
「・・・考えた事もありませんでした。」
「と言うか、メーニャがそんな反応するって言うのなら、魔法を独自に編み出すって言うのは常識的じゃ無いって事?」
「はい、そうで御座いますね・・・今魔王様からそう言われてハッと目を開かされた思いに御座います。」
「ちょ、大袈裟過ぎる・・・とはいえ、熟練にならなくったって出来そうじゃない?ほら、魔力ってこんなにも自在にあらゆるモノに変える事ができるんだもん。この封印魔法もどんな方法で張られているのか解れば、ソレを紐解いていくだけで解除はできそう。・・・あー、でも、僕はそのマードックの見れている「魂」って言うのが全く解らないからなぁ。解析する所から難航し過ぎだよねぇ流石にコレは。」
結局の所、この結界の解析の元にするべき僕の「魂」とやらが僕自身には見えない訳で。
「うーん、コレは参ったなぁ・・・」
=== === ===
「などと言っていた事も、ありました・・・」
ズルい。はっきり言ってこの「魔王の身体」は。
先ずは実験として結界に魔力を流して全体の概要だけでも軽く感じてみようと思ったに過ぎない。
メーニャが僕へと魔力を流してくれたから、僕はこの「魔王の身体」に流れる魔力と言うモノを理解できた。
ならばこの結界に僕の魔力を流して隅々まで確かめてみたら、逆に何か分かるのではないかと実行したのだ。
そうしたらあっさりとこの結界の「ツボ」?みたいなのを見つける事が出来てしまった。感じ取れてしまった。
「メーニャ、どうしよう?多分ここに僕の魔力を込めて内部から結界を破壊すれば出られると思うんだけど。」
「魔王様は何を躊躇われているのですか?この結界から出る事が一番に優先されると魔王様自らがおっしゃられていましたが。」
「こうもあっさりと物事が自分の都合良い様に進むと、何だか不安に思えちゃってね。本当にこのまま壊しちゃっても良いモノかどうか、何故だか悩んじゃったんだ。どうしてだろうねぇ?」
その結界の「ツボ」はこの部屋の天井、その中心にあった。
そこに僕が意図的に魔力を込め続ければ恐らくはこの結界を解除、と言うか、壊す事が出来ると確信があった。
そしてこうも物事がトントン拍子に進む事に疑いが湧いて来る。
でも僕の今後を考えても選べる選択肢は非常に少ないと言える。
ここでその迷いを誤魔化すみたいに僕はふと気になった事をここで今更にメーニャに質問する。
「ねぇ、メーニャ、質問、良いかな?僕が目覚めた時点から大分時間が経っているけど、魔族、魔王って、食事はどうしてるの?睡眠は?生殖・・・はいいとして、この二つを聞きたいんだけど。」
食欲、睡眠欲、そう言った生命維持に必要な部分がどうなっているのか?
僕がここから出て行ったとしても、その部分が不安定になってしまうと逃亡の日々にも影響が出てしまう。
だからこの様な事を聞いたのだけれども。
「はい、食事はしておりません。魔族は自然界に満ちるあらゆる存在から魔力を吸収し、存在を維持しておりますので。食事が出来ない訳ではありませんが。経口摂取、胃や腸などの消化での食料からの魔力吸収は所謂「趣味」と言った所でしょうか。睡眠も軽く一週間は摂らずとも連続して起きている事が可能です。」
「え・・・?ナニソレ鉄人過ぎん?ヤバ過ぎる・・・」
返って来たこの様な答えに僕は正直にドン引きした。