八十九話
さて、マルートに戻って来た僕らは早速、何時ものアレを作る。そう、地下の部屋だ。
快適に日々を過ごせる様にする為に必須である。
慣れた物で、僕はササッと内部装飾にまで手を掛けてパパッと部屋作りを終える。
「さて、じゃあメーニャ、町の様子を確認したいんだけど、前に設置した魔道具の反応はどう?」
「・・・八割と言って良い数が破壊されている様です。まさかとは思いましたが、どうやらあの人族、侮れぬ者であったらしいです。」
作り出した机の上、そこに置いた町の地図へと、前に設置した魔道具の位置を示すバツ印をメーニャが付けて行く。
その中で破壊された物には〇で囲んでいた。
「あの調査官がやったって事で間違いないかぁ。数が多かったはずだし、ケルカムから人手を借りて広範囲に一気に潰したのか、或いは一人で時間を掛けて全部やったのか。うん、そこは重要じゃ無いか。所詮は人族って思って気にしない様にって考えてたけど。ひっくり返されたなぁ。」
ソレでも残り二割が気になった。コレはどうして残っていたのかと。
「メーニャ、残りの二割には接触しない方角で。ソレと通信?も止めておこう。使わない方針で行く。」
「それは何故でしょうか?残りを使えば瞬時に町の様子は確認できるかと。」
「・・・どうもねぇ、何かしらの作為を感じるんだよ。メーニャが言う八割は全体の数として、だよね?じゃあ、残りの二割の「配置」はどう?」
「・・・配置、で御座いますか?」
メーニャが作った魔道具をこの町には設置している。この魔道具で撮った映像を遠隔へと送る事が出来る。
コレで僕は前に隠し部屋でその映像を観賞していたのだ。ケルカム商会とブレッツ商会の衝突を。
「妙ですね・・・残された物は絶妙な間隔が開いています。しかもどうにもこれは・・・」
メーニャが自身で作った魔道具なのでそれがある場所などをこうして感知する事が可能だった。メーニャ有能過ぎる件について。
「意図的に残されている、と言う事でしょうか?何故?いえ、コレはハッキリとした「罠」で御座いますね。魔王様の慧眼、感服いたしました。流石魔王様です。」
「うん、接触するか、通信するかでその罠が発動するっぽいよね。想像でしか無いけどね。何かしらが仕掛けられているとすると、触らない方が良い。とは言え、これ、邪魔なんだよなぁ。こっちの手で壊しておく方が後々安全確保の意味でも良いよね。」
もしかしたらこの魔道具を逆利用されている事も考えられた。
あの調査官が魔道具を弄る事の出来る知識と技術を持っていたとすれば乗っ取られていると言った可能性もある。
「勿体無いけど、メーニャ、戻って来た最初の仕事はこの魔道具を壊して回る事・・・あ、いや、それも止めよう。止めておこう。せめてこれらの残りに姿が移らない様にする事くらいで抑えて動く方針で。」
「それは何故でしょう?壊してしまっても構わないのではないでしょうか?・・・いえ、魔王様が恐れている事はあの人族にわたくしたちの存在を知られる事でしたね。そうすると・・・道具が壊された際にあの人族にその連絡が飛ぶと言った機構を組み込まれていた場合は・・・」
そう言う事である。自分でも何でここまで疑い深いのかと苦笑いしそうになる。
だけども慎重に、バレない様にと常々思っているとこういった場面で直ぐに疑心が浮かんで来る様になったのだからしょうがない。
想像、妄想、空想、なんだって良いのだ。何かがヤバイ、そんな風に感じたり疑ったら即座にそう言った勘に頼って、一歩を踏み出す前に思い止まれるのであれば。




