八十八話
メーニャと話し合って、認識を擦り合わせて、多分コレは神が勇者の為に用意したダンジョンでは無い、と言った所までは結論を出した。
しかしそれ以外には「他に何も分からない」と言う事だけしか分からなかった。
推測や推論、そんな物ばかりが互いの口からは漏れるけれども、ソレらを検証も出来ないし、ソレらを決定付ける事が出来そうな体験もしちゃいない。
そして極めつけがその「魔神教会」が綺麗サッパリと跡形も無く消えてしまった事。
もう二度とあの中に入る事は不可能になった。
「いやー、後でもう一度、壁やら扉を壊してでも中に入って見る、って事が出来なくなっちゃったんだよなぁ。もうコレ、どうしようも無いね。」
「何も起きなかったとは思えませんでしたが。しかし、なんの変化も無い様ですし、本当に何だったのかが不明です。しかし、何かしらの意図があるのが明白ではありました。」
あの時にメーニャが僕の代わりに応えていたらどうなっていたのか?ソレを今さらに考えてみても仕方が無い、どうしようもない。
「その意図が全く分からないってのもあるんだけどね。いや、もうこの話は止めようか。何も分からないって結論しか出なかったんだ。これ以上は不毛だ。今は取り合えず今後の事を考えようよ。」
どうしたって答えが出ない。今後の未来に響くのか、或いはそうでもないのか。何も分からないから、何も対処が出来ない。
今現状で出来る事など何も無い。ならばここでウンウンと何時までも唸っている事は無意味だろう。
そう言う訳で僕は思考を切り替えた。幾ら想像しても、ここに居続ける事に対して暇に殺される僕の姿しか見えてこない。
「そうだな、マルートの町に戻ってみようか。あの商会同士の抗争の結末がどうなったか見に行こう。流石にあの調査官が引き返して僕らとバッタリ、何て事は起きないと思うんだよねこれなら。」
先に向かえばあの調査官が知らぬ間に後ろから迫って来る、何て事がまた起きかねない。
いや、迫って来るなどと言うのは表現が違うか。向こうは僕らの事を認識はしていないハズなのだから。
こっちだって追いかけられているなどとは捉えていない。いや、ちょっとだけ疑心はしたけれども。
それは「追いかけられているんじゃないのか?」と不安になる様な絶妙なタイミングで調査官がバークの町に現れたからビビっただけで。
その調査官も流石にもうバークには居ないだろうからそちらに戻っても良いのかも知れないが。
最後まで見届けられ無かった商会の行く末を見に行ってみるのも良いかと思い直した。
「さて、それじゃあ戻ろう。とは言え、また地下を掘って進むとなれば、方角が肝心だね。此処からだとどっちに掘り進んで行けば良いかな?メーニャ、調べて貰えるかい?」
「はい、それでは行って参ります。」
メーニャはさっさと部屋を出て方角の確認をしに行ってくれた。
(何だかこんなに扱き使うのが申し訳無くなって来るよねぇ。メーニャが優秀過ぎて便利に使い過ぎだ。今度ちゃんとしたお礼をしないといけないよなぁ)
「魔王」と言うものに対して、それを魔族のメーニャが従ってくれるのを良い事に雑に扱い過ぎているのではないかと不安になってくる。
その内にメーニャに愛想を尽かされたり、或いは見放されたりするのでは?と。
(あれ?この考え方はおかしいぞ?これじゃあ僕がメーニャに依存しているみたいじゃ無いか。いや、依存してるね、コレは)
以前に考えていたメーニャに対しての気持ちと今が全く違う事に気付く。
ここまで尽くしてくれるメーニャに対して「無くてはならない」と思考が変わっている。
前は「いざとなったら切り離す」くらいの事は考えていたはずなのに。
(なるほどなぁ。コレが信頼とか、信用を積み重ねるって事なんだろうねぇ)
これまでに僕へとメーニャが積み重ねて来たモノの重さを実感した瞬間だった。
そんな重みを悪く無いモノとして感じる。しかし逆にメーニャは僕の事を本心ではどう思っているのかが少々気になったけれども、気にしない事にする。
ソレを聞く事の出来る機会は今では無いとハッキリと理解しているから。
「さて、気持ちを切り替えよう。メーニャが戻って来たら穴掘りだ。」
僕のこの魔王の体で持て余していると言っても良い魔力の使い道が「地下道を掘って進む」なのが情けないとは思わない。
隠れる事が必要な事だとちゃんと自覚しているから。
こうして僕は「マルートに戻ったら何をしようか?」そんな事を考えつつメーニャの帰りを待った。




