八十五話
床は正方形のタイルが敷き詰められている。それへと等間隔で傷を入れて目印にして歩き続けているのだが、周囲には変化は全く無い。起きもしない。
「コレは本当に何処まで行っても果てが無いのかなぁ。ここってどう言う理由で建てられて、隠されたんだろ?」
「魔王様、このまま直進し続けますか?」
「暫くここで待機してみようか次は。何かしらが起きたらその時はその時で。」
対処は行き当たりばったり。とにかく何かしらが起きてくれないと、何も無さ過ぎて寧ろ辛くなってきている。
そこでふと床に視線が向いた。そこにはここまでずっと目印代わりに等間隔に雑に刻み付けて来た傷。と言うか、溝と言うか、抉れと言うか。
「時間経過でこの傷が直るのかどうかを観察してみよう。短時間では修復され無くても、長時間で直っちゃうって言うのなら、少々所じゃ無くヤバイからね。」
確認し易くする為に付ける傷の長さや太さなどを調整して行う事に。
その際にはメーニャが何処からともなくナイフを取り出していて、ガリガリと傷を床のタイルに付け始めたので僕はびっくりした。
(いや、何処に持ってたのソレ?いや、ここでソレをツッコむのは止めておこう)
ここまでに床に付けて来た傷は僕が指の爪で軽くガリッとやって来たモノだけ。
ソレでも軽くやっただけなのにかなり深く削れた最初はビビったけれども。
何度も繰り返して行ってそれも慣れた。
今は確認実験の為に雑な印ではダメなのだ。丁度良いと思ってメーニャへのツッコミは無しにする。
そうして観察を初めてかなりの時間が経過した頃にソレは突然に観測された。
「魔王様、傷が消え始めました。急にです。」
「あー、どうやら傷を目印に、ってのは余り良い方法じゃないみたいだね。」
僕はここまでに一直線に、そして等間隔に付けて来ていた床の傷の方に視線を向けた。
するとソレはゆっくりと、視界の奥から時間差で、まるで何も無かった様に傷が塞がっていく。
まるでソレは「視認した事で意識されたから」と言った感じで一気に。
そこには何かしらの意思、或いは意図が絡んでいると見られた。
そしてとうとうメーニャが刻んだ床への傷が一切の痕跡を残さずに消えてしまう。
「コレは少しマズイ事になって来たなあ。まあそこまで焦ってもしょうがないし混乱はしないけど。」
この先をどうやって進むかを考える。この果てが無いかに感じる空間をどの様な方法で突破するか。
「取り合えず行き止まりにすら辿り着け無いから、鬱屈した気持ちになっている訳で。無限、何て言う余りにも無茶な構造にはなっていないと信じる事しかできないよねぇ。」
どうせこのまま歩いて進んでも、走って進んでも、飛行して進んでも、果てが訪れないのじゃ無いかと思うのだ。
目に映る視界の限界には何も無い。
だからここで少々乱暴な方法を取って見る事にした。
「次の段階に進んでみよう。実験は、こうだ。」
僕は手の平を前へとかざして出来るだけ全力を込めた。そして。
「思いっきり・・・飛んでけえ!」
魔法を放った。




