八十四話
あれから三日で僕の我慢は限界に達していた。
なので幾らかの雑な理由を付けて今扉の前まで来ていた。
「僕は魔王なんだから、恐らくは魔神が崇められているだろう教会で危害は・・・加えられたりしないよね?」
「魔王様・・・ご無理をなさらずとも宜しいかと思われますが?」
「だって、余りにも何も無さ過ぎて暇に殺される所だったよ。極端にこんな誰も来ない様な山に避難何てせずに別の町に移動するくらいで良かったよねぇ、後から考えたら。」
自分の勘に素直に従い過ぎて過剰に怯えていたのだ。
あの調査官は所詮は人族であり、言ってみれば単独行動だった。
僕とメーニャが力を合わせれば幾らでもどうにか出来たのではないかと今更に考え直したのだ。
そう結論が出せるだけの充分過ぎる時間があった。暇過ぎた。
「さて、メーニャ、一緒に入ろう。閉じ込められる罠が発生した場合の為に外に一人残って開閉スイッチの所に待機、って事も考えたけど。罠が発動した際、中だけじゃ無く外でも罠が発動する何て事が有ったら結局はどっちもヤバいしね。それなら一緒に行動していた方が幾分か安全だし、安心だ。ソレに僕一人だけだと心細くてね。」
「畏まりました。このメーニャ、命に変えましても魔王様の御身を御守りさせて頂きます。」
「いや、メーニャは自分で自分の身の心配をしてね?無理に僕の事を庇おうとしなくても良いからね?」
「ソレはできません。こうして魔王様の御供をしているのです。自身を魔王様の盾にする事は決定事項です。」
この態度に僕は何も言えなくなって小さく溜息を吐きつつ扉を開くボタンを押した。
以前と同じで瞬間的に一気に扉は開く。
こうして僕らはこの「魔神教会」の中を冒険する事に。
「一歩踏み込んでみて警戒してみたけど、何も起きる気配は無いね。」
「・・・ですが魔王様、背後をご覧ください。」
「・・・無いね。今さっき入って来たばっかりの入り口、消えてるじゃん。」
後ろを振り向いてみればそこには無限に広がっているのかと思える程に何も無い空間。
「前も後ろも何も無いね。さて、どうしようか?出来るとしたら一応は床に目印を付けておくくらいかな?」
出入り口があった場所に手を伸ばしてみても何らの変化も感じられない。
どうやら閉じ込められたと言って良い状況だった。
「メーニャ、何か他に意見はある?」
「・・・このまま無闇に歩き回っても恐らくはこの空間から抜け出す事は不可能かと。しかし、解除の仕掛けを見つけるにも行動を起こさずには見つけられそうにないですね。此処から見える視界範囲内には何も違和のある場所は無さそうです。」
「何も無い空間で迷子とか何の冗談だ?ってなっちゃうよねぇ。」
他にどんな物が仕掛けられているか分かったモノでは無い。
なのでなるべくメーニャと離れない様にして並んで先ずは少し進んでみる事にする。
しかし幾ら歩き続けても何らの変化も無し。
「ここ、無限ループしてる?とは言っても、まだ僕が床に付けた傷の所に戻って来たって訳でも無さそうだし。このまま継続して歩いていて良いのかなぁ・・・」
不安になって来る。右も左も後ろも前も、何処を見ても何も無い、同じ景色。
もしここが何かしらの力によって破壊されても修復される様な仕掛けが働いていたら床に付けておいた傷も治って目印が消えているなんて事もあり得た。
そうしたらお手上げだ。そうなると最終手段を採らざるを得ない。
「等間隔で床に傷を入れて目印を継続して入れて来ているけど、うん、別に振り返ってみても治って元通りになっている様には見えないし、もう少しこのまま行ってみようか。」
まだまだ入って来たばかりなのでもう少しだけ今の状況を粘ってみる事にした。




