八十二話
中には何も無い、広さだけが目の前にある。そこで僕はふと思いついた。
「これって、ダンジョンと似て無い?ほら、アレも中に入れば別空間でしょ?ここも、もしかしたらそうなんじゃないかな?」
「・・・それにしては雰囲気も、空気感も大きく違う様に感じますが。」
「あっちは神が創っていて、こっちは魔神がやったんじゃない?何だか、こう、おどろおどろしい感じが見るだけでしてるし?」
「その様な話をわたくしは存じ上げませんので何とも・・・」
「あり得るか、そうで無いかで言うと?」
「無いとは言えませんね・・・」
勇者用に神がダンジョンを創っていると言うのであれば、魔族用にも魔神が創っていてもおかしくは無い。
「あー、でも、そう言う話はメーニャから教えて貰った内容の中には無かったよねぇ。じゃあもしかして、これ、隠されていたのかなずっと?」
「それは・・・神が隠したのでしょうか?」
「ソレはどっちか分からないね。今の僕らには情報が圧倒的に足りないし。調べようとしてもそう言った資料なんかが存在しているのかすら分からないんだし。」
逆に魔神が隠していたと言ったパターンもあるかもしれないのだ。けれども、その場合はどうしてなのかの理由が全く分からないが。
神が隠したと言うのであれば、それは分かり易い。魔族を強化させない為だろう。
神は自分の下僕の勇者を勝たせたい訳で。敵になる魔族が強くなってしまう施設など消し去ってしまいたいはずだ。
勇者が負ける要素など少しだって神は存在させたくは無いと考えるハズ。
「全てが全て憶測でしかないからね。ここが何なのかは、中に入って調べてみない事には分かるはずも無いよ、ここからじゃね。」
まだ一歩も踏み込まずにその場に突っ立って僕らは建物内部を観察しているだけだ。
こんな怪しい所にそう簡単に突撃などするはずも無い。
何かしらの確信が一つでもあれば中へと入ろうと考えただろうが。
「よし、それじゃあもう一つの突起を押してみよう。どう言う仕掛けになっているのか確かめてみないとね。」
こうして僕は「▶・◀」の方を今度は押してみた。
「何で閉まる時は物凄く遅いんだろうか?開く時はそんな速度必要?って言うくらいに高速だったのに。」
扉が閉まるその速度に少しだけおちょくられている気分になる。
けれどもソレも少しの間だけだ。完全に扉が閉まった後に僕は言う。
「うん、面倒だけど埋め直そうか。」
「良いのですか魔王様?」
「うん、良いよ。何か入る気無くなっちゃったからね。と言うか、最初っから入る心算無かったけど。中をちょっと覗くつもりだっただけなのに・・・何でこうなった?」
所詮はここに人族はやって来ない。
ならばこの行動は幾らかの暇潰しにでもなったと思い直す事にする。
この「魔神教会」を埋める作業も別に人力じゃない。魔法で土を操ってわっさわっさと被せていくだけだ。
そこまでの疲労も苦労も僕は感じないのだから別にそこまでここに執着する事も無い。
(相当にデカいから埋めるのにも、幾ら魔法を使うからっていえども時間はかかるんだけどね)
元々の状態、周辺から見ても違和感が無い様に埋めるのは至難かもしれない。
一度掘り返した土をそのままに被せ直すだけだとその後の表層部分の茶色で周辺と比べたら目立ってしまう。
偽装工作はしておかなくちゃいけないのでそこは最後に一緒にメーニャと共同作業をしてせっせと掘り返した跡を整えるのだった。




