八十話
扉は物凄く奇妙だった。押しても扉は開かない。
「取っ手が無いなら、引く事も出来ないよねぇ?何なんだろ?」
これでは開けられない。押しても引いてもダメなのならば、一体どうしろと言うのだろうか?
「あ、魔力を流して操ってみるとかかな?・・・ソレは何だか危険に思えてやりたく無いなぁ。」
扉のレリーフは何だか良く分からない。何かが彫られているけれども、ソレが何だかイマイチ分からないのだ。
人の様でいて、動物の様でいて、植物の様でいて。まあ取り合えずそんな存在が数多く彫刻されていて、それらは絡み合っているのだ。
「何処かに仕掛けでも有るのかなあ。どっかを押し込むと自動で開く様になっているとか?・・・流石に巨大過ぎてこんなに近くで見ていたら上の方とか何も見えないし、把握できないし。と言うか、複雑過ぎて何かしらの仕掛けが組み込まれていても発見できなさそう。」
僕のこの魔王の背丈などブッチギリで超える程の高さ。
横幅もどれだけの距離が有るんだと言いたくなる長さなのだ。
そこにびっしり所狭しと何がテーマなのかさっぱり分からない彫刻がされているのである。
「単純に重量が重過ぎて押し開けないだけって可能性も出て来たなぁ。」
この扉の開き方のヒントが何処かに無いかを暫しの時間、僕とメーニャは探してみる事にした。
「不審な点が見当たりません。と言うか、魔王様、何処もかしこも不審な点ばかりで、どう言ったらよいのか・・・」
「あー、それは僕も思った。何だか何処を見ても怪しいとしか感じなくなって来ちゃったよ流石に。」
彫刻されてできている窪みや出っ張りなどが視界に入ると「そこにもしや仕掛けが?」と、何処を見てもそう思う気持ちになってしまっている。
魔法で空に飛んで上の方まで細かく注意して怪しい部分をその都度触ってみたりもしたけれども。
「無いね。もしかすると何かしらの決まった条件なんかが満たされ無いと開かない仕様なのかもね。その可能性もあるかぁ。とは言っても、そんなのが在るのか無いのかも、今の時点でその確信すらないけどさ。」
「封印されている、と言う事なのでしょうか?そもそもコレが地中に埋まっていた経緯なども気になりますね。」
そんな会話をメーニャと続けつつも調べ続けたけれども。
「端から端まで来ちゃったよ・・・本当に何も無いね。いや、在るのかもしれないけども。」
「・・・魔王様、アレを。あからさまではありませんか?」
ソレは扉の端の端、本当に端っこにソレはあった。
しっかりと指を掛けられるだろうくらいの窪み。メーニャの身長程の縦に延びたソレ。
「意地悪く無い?何の前情報も無しにこれを見つけられるかは運だよね・・・」
その溝から考えるに信じられない事だけれども。
「これ、引き戸なのね。うわー、変!おかしい!だってこの!扉にはド真ん中に縦の線が上から下までしっかり入ってるじゃん!コレは騙されるじゃん!押し開くんだと思うでしょ!」
ここで僕はちょっとだけキレたのだった。
「ここまでの間の労力を思えば思う程に、これ考えたヤツを小一時間程説教したい。」
そこで僕はそのプチキレの勢いのままにその溝に手を掛けて扉を開ける為に横へと思い切り力を込めた。
のだが。
「・・・え?開かないんですけど・・・」
扉はスライドする事も無く只々に静かに微動だにしなかった。




