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八話

 この世界は二つの「神」が協力して生み出したモノなのだそうだ。


 その副産物として魔力、要するに神の扱える「奇跡の力」とやらが世界に存在するあらゆるモノに含まれているらしい。


 さて、世界を生み出すだけでは無い。一方の神は人と言う種族を創造し、この作った箱庭に放って繁栄をさせる事を。


 もう一方の神は魔族を創り、その神の創った人に対抗する存在を放った。


 ここで魔族を創った神が提案をする。遊戯をしよう、と。


 人を創った神はソレに乗った。面白そうだ、と。


 コレが後に「神」と呼ばれる存在と、そして「魔神」と呼ばれる存在のやり取りらしい。


 この遊戯は長く長く、それこそ、幾万の回数熟されて来た。気が遠くなる程。


 そして毎回その結末は人の勝利に終わっていると言う。魔族側の勝利など一度も無いと。


 魔族が勝てない、それは何故か?ソレは神と魔神がこの遊戯における「決め事」を敷いたからだ。


 余りにも人に優位なその決め事は毎回効果を発揮して魔族を負け戦に追い込んでいるそうだ。


 しかも魔神はコレに何も抗議もせずにいるらしい。


 神は毎回にこの遊戯に勝ち続けるので優越感に浸り続けているからその決め事の変更など申し出たりしない。


 こうしてずっとこの遊戯は神の勝利と言う結末を迎え続けて、さも「勇者が勝つのが当たり前」の事象と化していると。


 ここで「魔王」の件に繋がる。


 勇者と対になる「魔王」は当然に魔神から創り出されており、その能力は全人類が立ちはだかろうがソレを簡単に蹴散らす事が出来ると言う。


 神の加護を受けている勇者なのだから、そのくらいの力を魔王が保有していなければ釣り合わないと言う訳だ。


 しかし毎回の事に魔王は勇者に勝つ事が出来ていない。


 ソレは勇者が神から与えられた特殊な力「魔王特攻」を持っており、魔王の目の前にまで辿り着いてしまえば絶対に勇者が勝つ状況になるからだ。


 だったらじゃあ魔王が勇者が目の前に現れる前に人類を絶滅させてしまえば良いのでは?と思われるが、そこにはまたしても「決まり事」が魔族を、魔王を縛り付ける。


 魔王は勇者が目の前へと現れるまでは人族を殺してはならないと言う決め事なのだそうだ。


 こうなれば当然の事ながら勇者が魔王の前に現れなければ魔王は自由に人の殺害が出来ない訳で。人の殲滅を実行する事は不可能だ。


 そうして勇者が魔王の前に辿り着いてしまえば、そこは絶対に魔王を殺す事を目的に来ている訳だから魔王をそこで逃がしてしまう様なヘマはせずに事前準備は綿密に行ってからの襲撃となる訳で。


 魔王はもう詰んでいる。そんな決め事であるらしい。


 このメーニャの説明で僕がこれ程に規格外な力を持っていると言う根本は理解した。


 この「魔王の身体」は基本、人族を簡単に絶滅させる事の出来る能力を最初から持っていると言う訳だ。


 だからこんなにも様々な種類の魔法が扱えるし、「何も知らない僕」でもちょっと特訓しただけでこの様に簡単に魔法を扱えてしまうと。


「ねえ?魔族が勇者を魔王の前に辿り着く前に殺害に成功するとかは、これまで無かったの?」


「はい。どうやら勇者は神の加護によって危機に陥る度にソレを乗り越える事の出来る力を発揮できるらしいです。」


「なにそれズルい・・・じゃあ結局は魔族は勇者を足止めするくらいしか出来ないって事だよね?」


「殺害を試みようとも「神の加護」によってその全てを邪魔されております。どの様な罠や謀略を人族側へと仕掛けても、それらは大抵は勇者が割り込んで来て解決してしまっていますね。やっている事は遅滞戦術と変わらないと言えるかと。」


「えぇ・・・じゃあやっぱり僕はここから絶対に逃げ出す事が生き残るための絶対条件じゃん・・・」


 魔族は人を攻撃できるけれども、しかし魔王程の強大、絶大な力を保有する者は居らず。


 人族にも魔法を自在に操れる「魔法使い」は大勢居ると言う事なので、魔族とのこの戦争では一進一退の攻防になり易く、魔族側が一方的に押すと言った事も出来ていないらしい。


 こんなの余りにも理不尽過ぎて僕は絶句だ。神も魔神も何考えてんの?と言ってやりたくなる。


 僕にとってはこの様な神と魔神のやり取りなんて全く以って関係無い。他でやってくれと言ってやりたい。


 神も魔神もどうでも良い。こうなってしまえば僕は僕がこの先で生き残っていく事だけを考えて行動させて貰う。


 魔族の未来も、人族の殲滅も知った事か。


 我慢ならずに僕は「勝手にやってろ!」と叫んだ。

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