七十九話
アレコレやり始めてもう五日も経った。
その間に何かに遭遇したと言った事も無く、他の何かが見つかった訳でも無い。
この怪しい人工物、メーニャが言うには古代遺跡だと言う建築物の周囲の土を魔法で操って退かして行く作業。
ソレを続けたおかげでやっとその全貌が出始めてきた所だ。
しかもこれはどうにも埋まっていた部分は地表に近かった。
土を退かして行けば巨大建築物だった事もあって外へと出てしまい「もう良いか」と、隠す必要も無いかと思ってそのまま作業を継続していた。
「人族の建てる神を敬う為の教会の様ですね。しかしソレとは大幅に違う所が多い様ですが。しかもこの規模は・・・」
メーニャからのその感想に僕も思う所があった。
「うん、どれもコレも装飾がかなり禍々しいよね。って言うか、これ、絶対に魔神を崇拝する為に建てられた物だよね・・・」
僕らはこの「魔神教会」とも言える内部にはまだ一歩も踏み込んではいない。
早く入って来い、そう言わんばかりに日の光に照らされて正面入り口の扉が美しくも怪しく黒く輝いている。
「コレは魔法的な何かが掛けられていてずっとこの形状を保てていたのかな?」
「恐らくはそうだと思われます。」
「僕が最初に繋げた穴が何時の間にか塞がっていた事が恐いよ余計に。」
「恐らくその修復されたのも何かしらの魔法が掛けられているからだと推測されます。」
そう、何かがあると知って穴を掘り、その先にあったこの「魔神教会」の壁にも穴をあけてしまっていたのだ最初。
その開いた穴から僕らは「コレなんだ?」と、その時はその中へと踏み込まずに覗くだけに終わっていたのである。
だけどもその開いた穴を放っておいたら何時の間にか塞がっていて軽く驚かされた。ちょっとしたホラーだった。
「こうしてまあ、全体像も出て来てコレが何なのか推測はできたけれども。うーん、やっぱり中に入ろうとは思えない部分があるなぁ。明らかにおかしいよね。ここまでやったけど、情報が乏し過ぎて何ともなぁ。」
ここに入ろうとは思え無い幾つかの理由の一つに「巨大過ぎる」がある。
横も縦も奥行きも、何もかもが巨大。教会などとは言ってみたモノの、本当はその規模を言えば「城」だった。
「こんな山にあの調査官は来ないだろうからって理由でここに来たけど。まさかこんな頭が痛くなりそうなおっきな問題を発見する何て思いもしないよねぇ普通。」
絶対にこの教会が建てられた背景に「魔神」が関わっている。そんな確信が心の中に浮かんで来ていた僕。
ここで中に入らないと言った選択肢もあるけれども。
もしかしたら色々と知りたい事が分かるかも?と思ってしまう所もある。
「・・・入るのは止めておこう。扉を開けて正面から中を覗いて見る程度に抑えておく。それくらいであればきっと何が起きても対処は大丈夫・・・だと思う。直ぐに逃げられる、と思うんだけども。不安だなぁ。」
僕は自分の掲げた目的、目標を忘れた訳では無い。臆病だと誹謗中傷されても。
別に勇者から逃げ続けるのに、この建物内部に入って必ず調査をしないといけない、と言った訳でも無い。
ここに入るのは何かがヤバイ、そう思うから慎重になる。
慎重になるから、ちょっと中を覗くだけにして踏み込まない、などと言った方法を選ぶのだ。興味を多少は満たす為に。
「真正面から中を見れば何かしらの情報が得られるかもしれないし?」
好奇心は時に自身を危険に晒すかもしれ無い。
けれども行動してみなくては得られるモノは一切無い。
(その匙加減が本当に難しい)
こうして僕は正面出入り口の巨大な、そして黒く怪しく輝くその扉に手を掛けた。




