七十八話
到着した。随分と時間が掛かったが、コレで一安心と言った気分になった。
どうしてもあの調査官には不安を覚えさせられて仕方が無い。
「アレが勇者とか言わないよね?」
「はい、アレは確実に勇者ではありません。わたくしが保証します。」
「その根拠は?」
「魔族は勇者を視界に入れると瞬間的な、それでいて激烈な怒りを覚えますので。」
「え?そうなの?それは知らんかった。あの調査官はそうじゃ無かったんだね。でも、この不安は多分・・・勇者に関連した何かだと思う。この魔王の「身体」が多分反応してそんな感覚を覚えてる、そんな風に感じるんだ。」
僕は山の内部、地下にてここでも隠れる為の部屋造り。もうすっかりと慣れたものだ。
そんな作業をしつつメーニャとそんな会話をしつつこの山の調査の件を話し合う。
「メーニャ、一応なんだけど、この山の事を調べておいて欲しいんだ。何も無いと思っていても、もしかしたら僕らの知らない何かが存在してるかもしれ・・・あ、なんかある・・・」
部屋の中の内装を弄って居たら壁の奥に引っ掛かる何かを感じた。
なのでそこへと集中的に僕は魔力を流して自在に壁を掘っていく。
そして何かを感じたそこへと一気に開通させてみれば。
「穴開いた・・・で、しかも中は、うん、これって・・・」
そこには人工的に作られたと思わしき建物内部。
「メーニャ、もしかしなくてもコレ、ヤバイやつ?」
「・・・恐らくは古代遺跡だと思われます。わたくしもコレは流石に把握できておりませんでした。」
「この山の内部にこんなのが埋もれていたなんて誰も予想できないし、しないと思うよ?うーん?どれくらい古い昔なんだろ?と言うか、昨日に造られたばっかりと言っても信じちゃう位に綺麗だよ?どう言う事?」
まだ僕らはその内部へと足を踏み入れていない。安全か危険かを判断できないのにいきなり踏み込む何て真似ができるはずも無い。
もしかしたら魔族が入り込んだら致死の毒ガスが充満する罠でも仕掛けられているかもしれないし。
入り込んだ瞬間に敵性の何かがいきなり現れるとかあり得るかもしれないし。
「放置するのが一番安全だと思う。見なかった事にして元通りに埋めてしまうのが。けど、やっぱ内部を探検してみたい気持ちが強いなぁ。」
もしここが僕らだけが知る場所であったなら良い。
けれども別の場所に正式な入り口があって、そこからここへと出入りしている者が居たとすれば?
その者と鉢合わせしてしまう事が起きうる。
魔法で姿を消した状態にしてしまえば良いのでは?と思うかもしれないけれども。
「・・・メーニャ、ここ、何かおかしい。むやみに入り込むのは止めよう。対策を考えてからじゃ無いと多分ヤバイ。」
視線だけで内部の観察を続けていたけれども、それだけでもこの場所はヤバいと僕の中で警報が鳴る。
中に入るのを躊躇わせる何かがある事は確かだ。
そこはかとなく僕らを拒絶する力が働いている様に感じる。
けれどもソレと逆に受け入れる様な包容力も同時に感じていた。
奇妙なその感覚に警戒心は上がるばかりだ。
「よし、不安感を晴らす所から始めて行こう。見えているのが、見えるのがこの場所、この部分しか無いからこんな感覚を覚えるんだ。この古代遺跡を、丸裸にしよう。」
「え?」
メーニャからの驚きの目を向けられても平気で僕はこの遺跡の周辺へと魔力を流していった。




