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七十七話

 その結果、この町を明日にでも離れる事となった。


 この地下の隠し部屋は綺麗に埋めて何も無かった事にしてまたトンネルを掘って移動だ。


 しかもその移動は国の首都への直線を目指さない。


 首都へと真っすぐに行く方向から直角に横へと向きを変えてのものである。


 その向かう先には巨大な山があり、一度そこを目指す事に。


 山の中にまた部屋を作って一時的にその中へと身を隠す予定とした。


「こうなればきっとあの調査官も流石にこっちには来ないだろうね。・・・来ないよね?」


 そう信じたいのだけれども、あの調査官の事を脳内に思い描くとどうしても不安が湧く。


 言ってみればその山には何も無い。調査官が寄り道をする様な意味も無いし、そんな軽い感じで足を運べるような距離にも無い。


 だから大丈夫、とは思うのだけれども、そこはかとなく何か嫌な予感が拭えずにいる。


「さて、出発しよう。あの調査官の何が恐ろしくてこんなに逃げなくちゃいけないのかと思うけども。でも、率先して姿を見せて自己紹介、何て馬鹿な事を絶対にする気も無いしね。」


 こうして僕らは町をまた離れる。さらば「バーク」の町である。


 さて、移動中はこれと言って何も面白い事など起きる事も無い。


 只ひたすらに無言でてくてく歩き進むのみだ。


 ここで僕はふと思いついた事をメーニャに聞いてみた。


「ねえ?マードックは今何をしてるかな?魔族の動きってどんな感じになってるか、メーニャは知ってる?」


「はい、そう言った辺りの情報、情勢も仕入れております。御説明を致しますか?」


「ああ、かいつまんでザックリお願い。」


 こうしてメーニャから魔族の動向を聞かせて貰ったのだが。


「・・・軍を編成してるって?しかも、もう既に大きく人族の領域を切り取ってる?もうマードックに任せておけば全部解決するんじゃない?ソレ?」


「いえ、これも恐らくは力を付けた勇者が後々で・・・」


「あー、勇者はズルいねぇ。とは言え、ソレが神の定めた摂理なんだよなぁ。幾ら窮地になっても、毎度の事に勇者に都合の良過ぎる展開に最終的になるって、手に負えないよねぇ。」


 人族に大打撃は与える事が出来ている。


 出来ているけれども、目標としている「勇者殺害」は必ずと言って良い程に達成できず、失敗に終わっているのだ毎度にこれまで。


 コレが幾度も、何度も繰り返されていては堪ったモノでは無い。


 普通なら諦めの境地になりそうなものだけども、魔族の「本能」とやらがソレをさせてくれない訳だ。


 魔族に取ってこれは地獄の苦しみを毎度味わえと言っている様な者で。こんなもの一種の呪いだろう。


 人族への殺意、その衝動はずっと魔族を縛り付け続けている。理不尽にも。


「もっと何も気にせずに自由に生きられれば良かったのにね。魔神ってスゲー陰湿で性格悪いわ。」


 魔族と言う存在をこの世界に生み出したのが魔神だと言うのだから、その性格はお察しだ。酷いヤツである。


 そして魔族が絶対的に不利になる様に条件を付けたのも魔神との話だったはずだ。本当にこいつが何をしたいのかがサッパリ僕には理解不能だった。


 自分で生み出した種族を追い詰める様な、慈悲など感じられないこんなルールを決めたその真意が知りたい所だ。


 僕はその魔神とやらを敬ってもいないし、崇拝してもいない。だからこそこんな事を言える訳で。


(どうして僕がこうして魔王の体に入っているのかも、その魔神とやらの仕向けた事なんだろうか?まあこんな事を疑い始めたって何も分からないんだから考える意味も無いよねぇ)


 考える程に嫌な気分を積んでしまうので僕はこの件を頭から追い出して何も考えずにひたすら進み歩く事にした。

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