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七十六話

 そいつはやって来た。この町へと。メーニャが魔道具で中継しているその映像に映った。


「何で来ちゃうの?あー、もしかして反抗組織の方が呼んだのか?」


 ソレは前の町に来ていた奴、魔道具を見抜いた例の調査官。


 そいつが反抗組織と私兵集団の小競り合いの場に近づいて来る。


「メーニャ、直ぐに戻って来て。もし見つかったら嫌な展開になりそうだ。」


 僕は即座に撤退を指示してメーニャに戻って来て貰う事にした。


 そして今後に一切関わらない事を決める。覗き見も中止だ。


 そうして隠れ家に戻って来たメーニャへと僕は問いかける。


「あいつ、どうしてこの町に来たんだろう?メーニャはそこら辺を把握してる?」


「いえ、ここ数日は双方の動きへの情報収集はせずに奴等の衝突を監視していたのみでしたので。不覚です。」


「そうだね。反省はしても今の問題は別だ。頭を切り替えて行こう。ここで来るとは僕も思っても見なかったよ。とは言え、反抗組織の方と、貴族の方でどっちが呼んだんだと思う?いや、そもそもが偶々ここに帰り道に寄っただけとか?」


「直ぐに調べて参ります。」


「いや、ダメだ。ソレはしない方が良い。と言うか、絶対に止めよう。嫌な予感がするから。」


 僕は曖昧な感覚に身を任せてメーニャを止める。


「あの調査官にはちょっとでも僕らの事を気にさせちゃダメなんだと思う。ホンの、それこそ微かで、普通なら気にも留めない様な情報すら与えちゃいけない、そんな風に感じる。」


「畏まりました。それではあの者がこの町を去るまでは一切の動きを停止するのですね?」


「うん、そうだね。あー、そうすると暇潰しはどうしようか?せっかくここまでやったのにね。」


 これまでの合間にもメーニャには少しではあったが勇者の動向情報だけは集めて貰っていた。


 なのでそれを纏めて今後の予定を話し合うと言った事も出来るのだけれども。


 ソレをしたって一日も持た無いだろう。ちょっとだけ聞かせて貰ったが、その内容はまだまだ勇者は国の首都の周辺を巡っているとの事だったからだ。


 勇者が本格的に旅に出て首都から離れてくれないと僕らはここに足止めをずっとされる事になる。


 僕たちの方から勇者にワザと近づく何て事はなるべくならしたくはないのだ。


(別に直線で国の中心に向かわなくちゃいけない訳じゃ無いからなぁ。曲がりくねって別の所に向かうって事も視野に入れれば良いだけなんだけども)


 この町に居続ける意義も意味も拘りも別に特には無い。


 だから少し考えなおす。


 ここまで町の情勢をヒッチャカメッチャカにしたのだから、その結果を見届けるのか。


 それとも調査官に絶対に嗅ぎ付けられない為に別の場所へ向けてさっさと移動するのか。


「別に急ぐ訳で無し。ゆっくりと考え直そう。相談に乗ってくれる?メーニャ。」


「はい。わたくしなどで良ければ幾らでも相談してくださいませ。」


 こうして僕は調査官が来た事で情勢の見通しを修正する話し合いを始めた。

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