七十五話
町のあちこちで小さい衝突が起こりはじめた。切っ掛けになったのはメーニャの煽りで貴族が焦りを見せた事による。
貴族がこの騒動をさっさと終息させる為に自らが雇っている者たちの前に姿を出したのである。
そこに反抗組織の者たちに襲撃を掛けられたと言う始末になっている。
貴族が顔を出したと言ってもだ。私兵集団の集まっている隠れ場所に出向いてお説教をしているだけである。
やれ今回の事が起きた原因はお前らにあるだとか、お前らが普段からつまらない真似をしていたからだとか。
屋敷を襲撃して来た犯人をさっさと捕まえろだとか、反抗組織の奴等を早く壊滅させろだとか。
要するに口先だけ。雇い主に迷惑を掛けるんじゃない、総括するならそんな内容の無いものである。
ここに反抗組織の武装した者たちが殴り込みを掛けて、そしてサッと逃げて行ったのだ。恐ろしく手際良く、短時間だけ。
コレには流石に貴族も私兵集団も危機感を覚えただろう。
情報が反抗組織に流れている、しかもかなり正確に、数多くが。そう判断するはずだ。
こうなって被害が出ているのは貴族側だけ。ここでバッチリ、ハッキリと組織の統率の差が出た。
「あー、どうやら与えた情報を有意義に使っているのは反抗組織の方みたいだねぇ。このまま嫌がらせをしつつ磨り潰しに掛かるのかな?」
見事にこの襲撃は貴族に一切の傷を負わせ無かった。傷を負わされたのは私兵たちのみ。器用なモノである。
そして欲張らずに即座の撤退。こうなると面目丸潰れだろう貴族は。そして私兵たちもこんな舐めた真似をされて黙ってはいられない訳で。
こうも馬鹿にされる様なやり方をされちゃジッとなどしてはいられない。
貴族は流石にコレに怒って動かせる全戦力を町へと投入、恥も外聞も無い。
そうやってあっちこっちで反抗組織の構成員とバッチバチにやり合い始めたと言う訳だ。
貴族の方は人海戦術で押し切る構え。反抗組織はあくまでも一当てしたら逃げて戦力を温存しつつ相手を削って行く心算の様で。
その各場所のぶつかり合いをメーニャ視点で僕は視聴している。
前の町では大盤振る舞いであらゆる各所にこの便利な魔道具をこれでもかと設置していたけれども。
それらが残念にも回収できていないのでその様な贅沢な事が今回は出来ていない。
なので現場の様子をメーニャにこうして中継して貰って視聴している訳だ。
「おー、中々の迫力。とは言え、どっちも戦力が少数精鋭になり始めたからなぁ。集団戦から段々と個人戦に変わってるね。」
弱い者からやられて行くので残る者たちは自然と強者だけになる。
するとそう言った者たちがやりあったら中々に決着は付かない。
そこに反抗組織の方が戦略として「逃げ」を選択しているので勝負はお預け、みたいな感じで撤退をする。
「コレを不用意に追っかける奴らってこの後で罠に嵌められて落とされるんだよねぇ。上手いもんだ。」
反抗組織の方はワザと不利な体勢を取って撤退をし始めるのだ。
これに騙された者が追いかけて突出、誘導される。その先で待ち伏せしていた者たちに襲撃されてアッサリ殺される。
釣られた者は罠に掛かりやられる、ソレが分かり始めると貴族の私兵たちは不用意にこれを追い駆けられ無くなって、やがて。
「そうして中途半端に一方的にじりじり削られる状況ね。」
この追い駆けっこ、或いは隠れんぼだろうか?はまだまだ続くのだろう。貴族側が何か逆転の一手を打てない限り。
「でも、これ、言ってみれば何処まで行っても只の時間稼ぎにしかならんのだけどなぁ。反抗組織の方は何か隠し玉でも持ってるのかな?その為の時間稼ぎなのかねぇ。」




