七十四話
あれからと言うモノ、双方に動きは無し。一切無し。何事も起きずに四日が過ぎた。
だってアレだけの人数を叩きのめされたのだから「さもありなん」である。報復、そんな事を考えても実行には移せまい。
動かせる人員が減ったせいで迂闊に動かせない、動けない、と言った部分が多くを占めるだろうけど。
そこには「また下手に動けば襲撃を受けるのでは?」と言った疑心暗鬼もかなりの分量入っている事だろう。
「まあそもそもに僕らの事を見つける事が出来ていないんだから仕返ししようと思っても出来ないんだろうけどね。」
メーニャがそんな簡単に見つかる様なヘマをする所は想像できないし、する様な事も無い。
「でもこの状況は面白く無いなぁ。うん、そうだ。メーニャ、調べた有用な情報をどっちにも流すってどうかな?」
「ここで潰し合いをさせるのですね?それでは小さい物から少しづつ放出していくのが宜しいかと。」
「そうだね。一気にケリが付いちゃう様な決定的なモノを与える必要は無いね。あー、でも、その情報をどっちも真に受けないかもしれない。怪しい所から仕入れた情報なんて信用しない所か、裏取りする事も無く調べる事も無く切り捨てるかも?」
「逆に今ならソレを元にして大きく動き出す事もあり得るかと。もしくはその程度の浅い者どもであるならば既にもう見どころは無いかと。」
「あー、そっか。癇癪起こしてマトモに取り合わないとかならもう別にどうでも良いか。だけど、こんな状態じゃ一発逆転って感じを狙う空気感が出来上がってるかもねどっちも。」
意見が割れて内部に派閥などが出来上がっているかもしれない。
そうなれば思いもよらない動きを見せ始める事もあるだろう。
それにこうなると屋敷を襲撃されている貴族が黙っちゃいないだろう。
幾らぐうたらの怠け者であっても、ここまで面子を潰されているのだからソレを補填する何かが無ければ威厳が保てないばかりか、貴族の存在する意義も意味もそれこそ暴落して一気に坂道を転げ落ちるに違いない。
「それじゃあ実行しようか。双方が自滅するも、どっちかが潰されるも、結果がどう転ぶのかをここで見物してその行く先をワクワクしながら見届けようじゃないか。」
こうして今度は一転して情報戦で引っ掻き回す事に。
「とは言っても動いて貰うのはやっぱりメーニャしかいないんだけどもね。扱き使ってる感じがして悪いなーって感じてるし、今回は僕が動きたい所なんだけど。」
「行って参ります。」
「そこは有無を言わさずにさっさと行くのね。うん、宜しくお願い。」
こうして僕はまたメーニャを見送る。
=== === ===
とは言え、今回のメーニャは別に破壊をするでも無く、襲撃をするでも無い。簡単なお使いを熟すだけだ。
やる事は別に何て事は無い。反抗組織にも、私兵集団の方にも、それぞれに「有益」な情報が書かれた紙をポイッとして来るだけ。
これを得た奴らがソレをどの様に扱うかはその時次第。
「まあついでに貴族に対しても煽りの手紙を出してるのは面白いね。」
その内容はもちろんメーニャがしたためている。
貴族に対して「お前、もうそろそろヤバいよ?」と言った中身であるそれは。
屋敷をアレだけ派手に壊されたのだから噂が立たないはずも無い。人々の口に戸は設置できない。
これはドンドンと広がって旅商人なども今回の事の情報を仕入れるだろう。
そしてその事実がもしそこから、国の中央にまで流れて役人、もしくは他の貴族、或いは国王にでも知られたら?
この騒動をきっかけにして貴族が起ち上げている私兵たちの悪行までそこから芋蔓式に明るみに出れば?
そうなってからはもう遅いのである。
「さーてね、コレで必死になって貴族当人が揉消しに奔走し始めなかったら本物の怠け者だよ本当にね。」
これでこの町に次はどの様なうねりが起きるのか僕は静かに待った。




