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七十三話

 既にもう周囲には戦力が配置されていて逃げ道を塞いでいる。


 反抗組織は準備を直ぐに終えていつでも殴り込みをかける事が出来る様にしていた。


 メーニャは魔法で姿を隠し、ここ周辺の、一番高い屋根の上からソレを眺めている状態だ。


 反抗組織の動きは手に取る様に把握できている。


 今回もメーニャの主観視点での映像を隠れ家の壁に写してソレをまるで娯楽の様に視聴する僕である。


「メーニャはどう動くんだろ?ぶつかり合う前に密かに?それとも滅茶苦茶に混戦し始める頃?それとも?」


 自由にやって良い。そう伝えていたので今回のメーニャの動きが気になった。


 とは言え、混戦になったらなったで双方の戦力の見分けを付けて一々判断して反抗組織側の者たちを排除するのは面倒だろう。


 ソレにそんな中でメーニャが無力化した反抗組織側の者たちは私兵集団側の奴等が殺してしまうだろう。


 そうなると僕の命じていた「死人はなるべく出さない様に」が実行できなくなるのでメーニャは混戦に乱入と言う手法は採らないはずだ。


 そこまで考えた所でメーニャが動いた。屋根から飛び降りて静かに移動し始める。


「やっぱり静かにやるつもりなんだねぇ。とは言え、何人まで無力化して、どれだけを残しておくかはメーニャの判断次第だなぁ。」


 具体的な数は指定していない。なのでメーニャがここで暴走して全員叩きのめしてしまう事も想定しておかなくてはならない。


 そんな事になったらその前に僕が声を掛けて止める心算だった。


「貴族の屋敷をアレだけ壊したから、ちょっとはスッキリ出来ていると思うんだけどねぇ。」


 やはり魔族の衝動を完全に解消するには人族の殺害をしないといけないと言うのであれば、メーニャには今回も無理をさせる事となるけども。


 しかしメーニャは冷静だった。それが分かったのは先ず一人目の犠牲者が出た時だ。


「ぐぁ!?・・・な!何だキサマは!?」

「こ、こいつ!?まさか!?コイツは例の奴・・・って!うわッ!・・・いてぇ!ほ、骨がぁ・・・」


 建物の陰に隠れて二人一組になっていた者たちを襲撃である。


 そいつらは腕に怪我を負わされてこれで戦力外になった。


 一人は腕をナイフで少し深めに切られる。これは重傷とは言え無いまでも戦線を離脱せねばならないだろう。


 もう一人は腕に蹴撃を食らって見事に骨を折られた。


 この叫びに周囲の者たちが集まって来る。メーニャはたちまちの内に囲まれ、無かった。


「まあ当然だよね。逃げ道は上にもあるんだから。」


 そう、メーニャは跳び上がって屋根の上へとまんまと逃げおおせたのだ。


 そして再び別の位置に居た者たちへと不意打ちを仕掛ける。


 そいつらも二人一組で行動していた。どうやら一つ一つの道をそうして塞いで逃走を図る敵を逃がさぬ様に配置した様で。


 コレが駄目だった。メーニャは魔法で自在にあっちにこっちにと跳び回ってそう言った者たちを次々に襲ったのだ。


 まだこれに襲われていない者たちは叫び声とドタバタとし始める味方の動きに何か異常事態が起きたと察して警戒を上げてどんな事にも対処できる様にと身構えていたけれども。


 二人程度の数では魔族を到底止められるはずも無い。配置の仕方が致命的。


 なので次々にメーニャの餌食となった反抗組織の構成員たち。


「そしてメーニャの徹底した猟奇的犯行がヤバいね・・・」


 襲撃を受けた者たちは必ず腕を一本、左右どちらかを怪我させられている。


「これって多分メーニャの気分なんだろうなぁ。」


 メーニャがこれを意図的に狙ってやっているのは分かるが、多分そこには深い意味は無いだろう。


 だが、ここで生きて戻った者たちが後に今回の事を会議した際にはこの事を勘違いをするのでは無いだろうか?


 何か意図があるに違いない、と。


 襲われた者たちは確実に腕をやられている。これは何かのメッセージなのでは無いかと。


「それで余計に混乱を加速する、と。そんな事を恐らくはメーニャは考えちゃいないだろうなぁ。」


 反抗組織の今回用意した戦力の三分の一を無力化した所でメーニャが撤退を開始した。


 そこに僕は「お疲れ様」と声を掛けたのだった。

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