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七十話

 先ずは敷地を囲っている防犯柵から破壊が進んだ。


 メーニャは手刀を作るとそのままサクッっと柵を切り裂いていく。ソレはもう乱雑に。


 これでもかと言わんばかりにその範囲を広げてジャンジャカ切り裂く。


 当然に防犯用の物であるので素材は鉄。故に切り裂かれ地面に落ちたそれらの棒はカランカランと派手な音を周囲に響かせる。


 その音を聞いて衛兵や屋敷防衛用の兵たちが現場に駆け付けるけれどもそこにメーニャは既に居ない。


「いや、物凄く素早いんだもの。そりゃ時間差があるからねぇ。早く追い付かないと屋敷の全周丸裸だよ?」


 僕はいつもの様に例の地下部屋の壁に映し出された映像を見てそんな事を呟く。


 今回もまた映像はメーニャ視点の主観映像だ。迫力があって非常によろしい。


 そして気持ち良いくらいにスパスパと切れてすっ飛んで行く柵の破片を見てスカッとスッキリしていた。


 どうやら僕も体を動かしたいと思っているらしい事をそこで気づく。


 まあ僕も魔法で姿は消せるとは言えだ。余り外に出ない方が良い事は自覚している。


「代わりにメーニャにこうして頑張って貰ってるんだ。我儘は言わないでおこう。」


 そんな事を思っている内に既にメーニャはこの貴族の屋敷の裏手側にまで破壊を進めていた。


 柵をぶっ壊す事に少々の飽きが来ていたんだろう。


 今度はその裏庭に侵入してそこら中の地面を魔法で吹っ飛ばし始めた。


 ドッカン、どっかん、そんな重低音が何十発も鳴り響く。


 流石に屋敷内に居たのだろう召使いたちも驚きで近場の窓から顔を出して何事かと確認し始めている模様で。


「ひッ!?」「な!?何だ!襲撃!?」「地面が吹っ飛ばされてるって事は魔法か!」


「は、早く避難しなくちゃ!」「おい!逃げるな!」「馬鹿野郎!持ち場に戻れ!」


「あいつを捕らえるぞ!こんな真似して只で済むと思うなよ!」


「あんな威力の魔法を何発もぶっ放す相手にどれだけ数を揃えても相手なんてできるかよ!」


「俺はやってられねえ!逃げさせて貰う!」「こっちには魔法使える奴が居ねーじゃねーか!やってられるか!」


 などなど。使用人やら私兵やら、どうにも屋敷内にも様々な者たちも待機していた様で大騒ぎだ。


 そこに一人の男の声が響いた。偉そうな態度と声音だ。


『お前らぁ~、侵入者を退治した者には金貨百枚を追加してやる。さっさと騒ぎを止めてこい。』


 そこら中でメーニャの放つ魔法で爆音が酷かったが、その声はその爆音の合間に偶々響いて私兵たちの耳に入った様子だった。


 逃げようとしていた者も追加報酬に目が眩んだらしくその足を止めている。


 その光景が映し出されたのを見て僕は呆れる。


「あーあ、どうせ美味しい所を横取りすれば自分がその報酬を総取りできるかもって思ったんだろうなあ。卑しいねぇ。」


 もしかしたら、万が一、と言った可能性。そこに金に目が眩んで足を止める。自分の命の方が大事だと僕は思うのだが。


 そもそもに金貨百枚などと言った先程の声は多分この屋敷の主、貴族のモノだったんだろう。メーニャの視点からでもこの魔道具に声が届いたと言う事は近い所に居るのだと思われたが。


 随分と危機感の無い、緊張感の無い、管理意識の無い、間延びした声だった。


 金で何でも解決できる、する、そんな認識が入った様な傲慢な響き。こんな異常な状況なのに、なんて間抜けな奴なのか?そんな風に思えるセリフだった。


「この貴族、現場の事なんて一切把握して無いな?そうじゃ無きゃ呑気にしていられる状況じゃないって分かりそうな物なんだが。コレは相当な馬鹿か、肝が据わっている人物って事になりそうだけど。さて・・・大馬鹿の方が確率が高いな。」


 メーニャの破壊行動はまだまだ止まらない。ここからが本番だった。

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