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七話

 魔力を感じる事は簡単だった。そして単純だった。


 メーニャの魔力をこの身体に流して操作して貰うだけ。


 たったのそれだけで僕は魔力と言うモノが体内にある事を感じられてしまったのだ。


 体の中を何か得体の知れない、しかし不愉快にはならない蠢く何かがある事を感じられて僕は驚かされた。


 だけどもそんな驚くのとは逆で、覚悟していた以上に楽チンで呆気無さ過ぎる展開に「えぇー・・・」と、ちょっと妙に納得のいかない気持ちになってしまう。


 とは言え、これ程に早く魔力を感じる事が出来たのならば次の段階に進んで良いはずだ。


「じゃあ今度は魔法を教えて貰えるかな?魔力を自在に操れる様にはまだ為れていないけど、それでもこの状態で出来る簡単な物から始めてみたいんだ。」


「はい。ではこれを。」


 そう言ったメーニャが僕へと魔力を流しつつもソレを操作してくる。


 僕の体の中の魔力がそのメーニャの操作する魔力の流れに乗って指先へと集まって。


「うわッ?ほぇ~、指先に火が灯ったよ。不思議。熱はあるのに、熱くないよ?何で?でも、コレが、ああ、うん、魔法なんだね。」


 僕のその火が出ている指は熱く無いのだ。でも、火はその周囲の空気を熱している。


 原理が全く意味不明なこの現象が要するに「魔法」なのだろう。そう納得する。


「魔王様、既にコレで基礎は終了です。後は御自身で上達をするしか無いかと。」


「え?早くない?これでもう?後は一人で?うーん?マジかぁ・・・」


 魔法を使う感覚、ソレは確かに僕の中に宿った。


 メーニャが魔力を操作して僕の身体で出したこの「火」で。


「後はそれなりに時間を掛けて魔力操作を自分である程度は自由に出来る様になって、その後で魔法の発動、それが不自由なく出来る様になってから次に応用、かぁ。道のりは遠いねぇ。」


 今の僕はそんな感想しか出て来なかった。


 ===  ===  ===


「ねえメーニャ?幾ら何でもこれはちょっとおかしいと思うんだ。幾ら何でもさぁ?もう、これは、ねぇ?」


「いえ、魔王様なら当然の事かと。」


「いや、多分この身体が異常なんだと思うよ?だってメーニャは言ったじゃん?子供の魔族でも魔法を習い始めて自在に使える様になるには、早くて二年は必要って。しかも一つの属性に特化させて、とか付け加えてるのも聞いたからね僕?なのに何も知らない、分かって無い僕が魔法を習い始めた短時間でコレだよ?絶対におかしいってば。」


 おかしいのだ。魔法を習い始めたばかりでまだ二時間も経っていないのに、僕の指先にはメーニャから教わった「属性」がそれぞれの指に別々に発動できてしまっている。


「重力、火、水、樹木、土、光、闇、雷、氷、風・・・他にも色々まだ特殊な属性の事も教えて貰ったけどさ?その全部が発動出来ちゃいそうな感じするんだけど?と言うか、出来ちゃう確信があるよ?この「魔王」って、何なの?どう言った存在なの?物凄過ぎない?」


 何も知らない、何も解っていない僕でも、コレは流石に変だと分かる。


 メーニャにはそこら辺の所をもっと詳しく教えて貰いたい。


「そうですね・・・では、この世界の成り立ち、我々魔族、そして人族の存在理由、そして魔王様と勇者の事をもう少し掘り下げてご説明した方が良いかもしれません。」


「えぇ・・・?そんな壮大な。でも、それが関係してるんだよね?じゃあ、聞くしか無いなぁ。」


 こうして僕はメーニャの説明をしっかりと聞く覚悟を決めた。

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