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六十九話

 とは言ってもその後、二週間は別段これと言った動きは起きなかった。


 当然の事と言えば当然なのだ。どちらの勢力もいきなり介入して来た存在の調査にかかりっきりになってそれ所では無いのである。


 その正体を幾ら探ってみても不明、何処の誰か、或いは何処の所属かも調べが付かない。


 そんなの当たり前だ。何せその犯人は魔族なのだから。


 人族の中を幾ら走り回って聞き込みをしようともマトモな情報など得られるはずも無い。


「武力衝突にはならないねぇ。とは言っても、こっちもこっちで勇者の情報を仕入れて精査していた所だし、別に急いでる訳でも無いしね。だけど、もうそろそろ場を整えてまた暴れられる機会は作った方が良いかなぁ。」


 少々退屈してきている。ずっと引き籠って居たから。


 ソレとメーニャも町を回って情報収集をしていたので我慢させている。


 そう、魔族の持つ衝動を抑えられる方法が幾つか有るとは言えだ。かなりの鬱憤が溜まっている事は事実なのである。


 ソレを僕の前ではおくびにも出さないメーニャは立派である。


 だから僕は命令を出した。メーニャにそう言った我慢で遠慮をさせない為に。


「メーニャ、ちょっと襲撃を掛けようか。とは言っても、怪我人などは余り出さ無い方向になっちゃうけど。いわゆる「脅し」?って感じで、貴族の屋敷を軽く、ドッカーン!ってやっちゃってよ。」


 いわゆるガス抜き、一時的な対処でしかないけれどもメーニャには多少スッキリとして貰う。


「私兵集団に危機感を持たせると言う事ですか?ソレを煽って反抗組織への対応を過激にさせて動きを誘導するのですね?」


「そこまで深い考えしてた訳じゃ無いよ。アイツらを余計に慌てさせて今後にどんな動きをするか見てみるってだけだね。」


 僕には人を操る様な才は無い。だからメーニャにその様な評価を貰う謂れが無い。なので否定はしておく。


 メーニャに痛い目を見させられた私兵集団の動きは慎重で、これと言った派手な動きをしていなかったのだ。


 これまでは派手に市勢で好き勝手に暴れていた奴等だったのに。だから無理やりにでもここで動かざるを得ない様に仕向けるのである。


 ソレとは別に反抗組織の方もこれと言った動きを見せずに静かに潜伏して一向に動き出さずに隠れ続けていた。


(それでもメーニャには探し当てられて色々と話を盗み聞きされちゃってるけども)


 メーニャの優秀さが凄過ぎる。既に反抗組織の潜伏先、隠れ家やら集会場所などを調べ尽くしたとの報告を受けているのだ。


 ソレをたったの三日程で済ませたのだと言う。これを聞いた時の僕は戦慄したものだ。


 でもメーニャはこれと言って別にこの仕事っぷりを何の苦労も滲ませずに「簡単でした」の一言だけで済ませたのだから、そこに恐怖も感じる。


(こんな凄いメーニャが何で僕なんかに付いて来たんだかねぇ?いや、本当にどうしてだろう?)


 そこに信用や信頼が先に浮かんで来る前に僕は疑問を抱いてしまう。


 頼もしいと思いはするけれども、でもそんな相手が僕に付いて来て良い様に使われていると考えると申し訳ない気分が少し浮かんで来る。


 魔王などと言う立場とか、存在とか言ったモノでメーニャを縛り付けていないか?そんな風に思えてしまう。もちろんこうして一緒に居てくれる事は物凄く有難いのだけれども。


 最初にメーニャにはその理由を問うてみたけれども、その答えに対して「まあ良いか」と思っていた僕が今さら何をとも考えるけれど。


 この優秀さをマードックの下で使えば勇者なんて直ぐにでも始末してしまえるんじゃないのか?そんな事を考えてしまうのだ。


 そんな思考は既にもうこうなってしまっては意味は無い。


「では行って参ります。」


 そう言って出かけて行くメーニャの背中に僕は一言。


「いってらっしゃい。怪我しないで戻って来てね。ありがとう。」


 と声を掛けて見送った。

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