六十七話
ここに有るのはこの隠れ家の一軒だけじゃない。周囲にも他の家は建っている。
延焼して隣の家にまで火が燃え移ったらどうする気なのか?そんな事になれば大火災間違い無しである。
いや、私兵集団どもはそんな事まで考えちゃいないのだ。
反抗組織を潰せればどうだっていい、そんな考えでこの様な安易で危険な行動に出たんだろう。
火はまだままだ全域には燃え広がってはいないし、内部まで燃やし始めている訳でも無い。
だから、まだ猶予はあるとは言える。言えるけれども、少しでも早く消火活動をしなければ直ぐにでもこの隠れ家を丸々燃やし尽くすだろう。
こうなれば中に居る組織員たちは今どう動けば良いかを慌てて話合っていると思われる。
打って出るか、或いは先に消火を急ぐのか。もしくは全力の逃走を選ぶか。
このまま燃えて死ぬと言う選択肢は絶対に無しだろう。
「どうなる?・・・動きが見られない?」
小窓の一つでも僅かに開けて外の状況確認をするくらいの動きがあっても良いハズだと、僕は映像を見ながら思ったのだけれども。
「本当に何も動きが無いな?まさか、誰も居ないって事は無いよね?」
そんな可能性を頭の中に浮かべ始めたらとうとう火が激しくなり始めた。
この勢いの火では少人数での消火は無理だ。かなりの水を用意してかけ続けなくては。
「いや、こりゃもう完全に家を燃やし尽くすぞ?屋根の上が燃え始めたらもうお終いだろ。」
上空からの放水で家の屋根の火を消せればまだマシだろうが、そんな事が出来そうな状況でも環境でも無い。
この場に魔法使いが居て、特大の水魔法で火消しをするのであれば何とか家の原形は留めるだろうけども。
「そんな奴が居るとは思えないしねぇ。」
出来るとすれば、メーニャだけだろう。だがソレをするだけの利がこちらに無い。
この二つの勢力のぶつかり合いを引っ掻き回してやろうとしているのだこちらは。
なので反抗組織を一方的に手助けする事は無い訳で。
「本当に一人も出て来ないよ。丸焼けで死ぬ気なの?・・・あ、もしかして?」
もう燃える家からの脱出が困難と言える位まで火が回った所で僕は気づいた。
緊急脱出用の隠し通路をもしかしたら用意していたのかも?と。
そしてその十分後には家が丸ッと一軒燃え尽きた。
風も無かったので他の周囲の家には燃え移る事も無く無事?に。
「家が密集してる所じゃ無くて良かったよ。ある程度はそれぞれにそれなりの広さの庭付きって言うのはまあ、ここら辺って結構なお高い住宅街なんだねぇ。ソレが幸いしたとか。」
燃え尽きて倒壊した家、そこへと私兵集団は群がって死体が無いかを調べ始める。
見事に真っ黒に炭と化した木の柱を蹴り飛ばして壊して回って焼死体が無いかを確認している。
『チクショウ!あいつら何処に消えやがった!』
「やっぱりなのね。まあ、僕も作ったからなぁ。分るよ。うんうん。」
その後も捜索が続いて一時間以上が過ぎた時にソレは発見された。
そう、地下通路。どうやら別の遠くの場所へと繋がっているであろうソレ。
しかしその入り口はかなり派手にぶち壊されていて瓦礫撤去などをして再び通れる様にするには相当に時間と金と労力と人員が必要になりそうで。
「手際が良過ぎない?」
時間稼ぎだ。どう考えても。
そして襲撃を受ける事を見越していたとしか思えない。
多分この地下への隠し通路が通行可能になったとしても、逃げた者たちの足取りのその後を追うのは困難であろう。
「素人の集まりだと思っていたけど、まさか、後ろ盾?背後に誰か指示を出して操ってる奴が居る?」
反抗組織の方もこの分だとどうにもキナ臭い事になって来た様な感じだ。
もしかしたら煽って、唆して、こうして組織を作らせてと、この反抗組織を躍らせている者が存在しているかもしれない。
そこまで考えてハッと思い出す。
「あ、メーニャ、取り合えず十人程やっちゃって良いよ。御免ね、ほったらかしにしちゃってて。」
『ではこれより蹴散らします。』
当初に考えていた展開から大きく外れてしまう事になったが、しかし大筋は変わらない、変えない。
ここでメーニャに僕は突撃の合図を出したのだった。




