六十五話
介入しない、などとなったらソレはそれ、つまらない。
僕の気まぐれ、思い付き、我儘でこうして関わったのだから、この先を横からちょっかいを出さないままで居るのはつまらないだろう。
今後の事を傍観者として眺めて楽しむのも、まあ悪くは無いだろうけど。
「イタズラしたくなるよねぇ。さて、どうやって滅茶苦茶にしちゃおうか。」
あの時に助けた女がもしも僕らの事を受け入れていたなら、ここで味方として振舞っても良かったかもしれない。
けれどもそうはならなかった。ならばここは第三者としてこの二つの力のぶつかり合いを横から蹴っ飛ばす勢力として捻じり入ってやろう。
「メーニャ、死人は出さない様に出来る?」
「御命令とあらば。」
「我慢させて悪いね。けど、殺さないならある程度までは痛めつけて良いよ。ぶつかり合ってるそこに飛び入り参加して暴れて来て。あ、最初の内は力加減に失敗するかもしれないし、そこで死んじゃったら事故と言う事で。亡くなられた方には運が無かったと思って貰おう。」
僕は直接手を出さない。メーニャに頼む。
ソレを僕がこの地下部屋で観戦すると言う手筈である。
前の町で設置した魔道具は回収でき無かったけれども、その残りがまだ幾つか残してあったのだ。
なのでこれを通じて僕はメーニャの暴れっぷりを堪能するつもりなのである。
「第三勢力の介入、しかも圧倒的、さて、コレにどんな反応やら対応をして来るかな?」
コレに因り貴族の私兵集団と、ソレに反抗する組織、どちらもメーニャの事を放ってはおけなくなるだろう。
こうなればこの町に混沌が出来上がる。
いや、私兵集団も反抗組織も、どっちも只単に「疑心暗鬼」でバタバタと勝手に勘違いして踊る事になるだけだ。
この抗争に介入する事に僕には何らの目的も無いのだから。
しいて言うならば暇潰し。これを知れば双方、憤慨する事間違い無しな理由だ。
この町の行く末など僕が気にする事じゃない。
僕の目的は勇者から逃げて、隠れて、穏便に過ごす事。
そんな中でそこそこに楽しめる事案が幾らかあればソレで良しなのである。
当然にメーニャにはこの町に滞在中、二つの勢力に介入してドッタンバッタン暴れまわりながらも、勇者の情報は集めて貰う。
僕だって色々な制限やら慎重に動かなくてはいけない理由等が無かったら、もっと自由にアレコレとやって楽しみたかったが。
そうもいかないのでこうしてメーニャに頼むのだ。
「では魔王様、早速行って参ります。」
「え?明日からとかじゃ無く?」
「はい、もう少しすれば反抗組織の場所が私兵集団に襲撃されるかと。」
「んん?その情報、メーニャが流したりしたの?」
「いえ、昨夜の件の後に私兵集団はあらかじめ張っていた二重での罠によってその後の女を尾行していましたので。」
「ああ、失敗した後の事もあらかじめ決めてあったのか。中々に侮れないね、貴族の私兵集団の方。って言うか、メーニャはその当時には既にもうその事にも気づいてたんだねぇ。」
どうやら反抗組織の女はあの後に奴等に尾行をされていた事に気付けなかったらしい。
とは言え、ソレは多分しょうがないのだろう。
絶体絶命の後に正体不明の者に助けられて、ホッと一安心して警戒を大幅に下げてしまったに違いない。
自分を追い駆けて来ていた奴等の脚は折られ、これ以上を追跡される事など無いと、そう思い込んでしまったと。
追いかけて来ていた男は五人しかいなかったと、そう勝手に決めつけてしまった訳だ。
おかげでその場を後にした際に物陰に隠れていた無事だった追跡者をまんまと案内してしまったと。
「あの場にまだ一人居たんだねぇ。僕は全然気づかなかったよ。あ、でもその時に何も教えてくれなかったのは何で?」
「申し訳ありません。女が魔王様の質問に答え無かったので。それならばわたくしもこの事を伝えずとも良いと判断しまして。」
「あー、確かにねぇ。あの場で何も答えてはくれなかったしなぁ。その事をメーニャからあの時に教えて貰っていても、その件を女には伝えなかったかもね僕も。」
もしあの時に女が僕の質問に答えて少しでもコミュニケーションを取っていてくれていたら?結末は変わっていただろう大幅に。
けれどもソレはもう過ぎた事だ。しかもメーニャのイラつきも結構あの時は限界っぽかったので早々に撤退したのだ。ソレは僕の判断でもある。
「しょうがない。もう取返しも付かないし、コレは考えるだけ無駄だね。それじゃあメーニャ、いってらっしゃい。よろしく頼むよ。」




