六十四話
ついでに言えば、その際に盗み聞ぎした会話内容まで報告してくれる。
「どうやらこの町を治める貴族に対抗する者たちの組織の所属の様です。」
「えぇ・・・?それってどう言う事?でも、まあ、そこまで聞いて想像でき無いって訳でも無いんだけどさ。」
住民に反発されている?そうなればその貴族の出している政策に不満を抱えていると言う事で間違いは無いんだろう。
「その貴族って言うのは何をどの様に敵視されてるのかな?重税?横暴?圧政?」
「重税ですね。とは言え、コレは仕方の無いモノだと思います。」
メーニャが仕方が無い事だと言い切ったので何事だと僕は考え込んだ。そして出た答えが。
「え?もしかして勇者の?いや、でもそれは結局の所はどうなんだろうか?蓋を開けてみればって感じになっちゃうの?」
勇者への支援金の為の追加徴税、ソレを負担、不満に思っての事なのかと考えたけれども。
ここでもう一歩踏み込んで考えてみた。貴族がその金を掠め取っているのかと思ったが。
「いえ、特にはこれと言って貴族がその金を不正に懐に入れていると言った事は無い模様でした。」
「えぇ・・・?じゃあ何だろうね?どう言う事なんだ?」
既にもうメーニャは諸々の深い部分の調査まで終わらせていたのだ。仕事が早過ぎる。異常だと僕はコレに判断せざるを得ない。
何で昨日の今日でここまでの情報をメーニャは調べているのか?優秀を通り過ぎて僕にはメーニャに対して恐怖を感じる部分である。
「どうやらその対抗組織はその貴族に対して直接に恨みや不満、不審を抱いている訳では無さそうなのです。その貴族が設立した私兵集団がどうやら貴族の権威を後ろ盾として利用して「適度な悪さ」を繰り返している事に反発、と言うよりも、正当な怒りを持っていると言った感じでしょうか。」
「ややこしくなってるなぁ。ソレは貴族はマトモな感性を持っているけど、無能って事で合ってる?」
「詳しく言えばもう少しありますが、まあ、その様なモノと捉えて頂いて宜しいかと。」
この言い方に気になって少し詰めて詳細を聞いてみれば、どうやら不正をする程の度胸など持たない貴族であるらしい。
それと自身の差配する領地の事はまるっきり関心が無いらしく、どうにも「ぐうたら」で配下に全ての仕事をほっぽって堕落しきった生活をしているそうだ。
「いらねえぇ。」
思わず僕はそう溢してしまった。しかしこれは許して欲しい。
何せ本当に「居なくても良い、寧ろ居ない方が良い」と言いたい様な人物らしいからだ。
上から来た指令を下に流すだけの役割、そんな存在は居ても居なくても良い。寧ろ要らない。
その貴族が居るから、そしてそいつが雇っている私兵たちが悪さをしているから、ソレに対抗する、反発する組織がこうしてできているのである。
それこそ下手をすれば不満が爆発してその組織と私兵集団の抗争が始まる事となるはずだ。それは時間の問題。
寧ろ昨日はその抗争、その爆発に火を付ける様な決定的な事件だった。
ソレが僕の気まぐれで着火しなかっただけだ。
とは言え、このままでは直ぐに火が付いて導火線が燃え始めると言える。
昨日の男たちの命は無事なのだ。だからこそ、邪魔が入った、第三者の介入をされたと、そいつらは自分たちの失敗の報告をするはず。
寧ろもう今頃はそんな情報がそいつ等の仲間にしっかりと広がっているはずだ。爆弾にその火が届いて爆発する日は近い。と言うか、今直ぐにどっかーんと暴発していてもおかしくは無い。
と言うか、もう今直ぐにでもと言うか、もう爆発しているのでは?
「ああー、今後の動きはどうしよ?」
貴族の私兵集団が僕たちの事を勘違いしてその対抗組織へと殴り込みを入れる可能性が非常に高い。
とここで僕は冷静になって考え直した。
「あれ?別に僕にとって損にも得にもなる様な事じゃ無い訳だし、悩む必要皆無じゃない?」




