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六十二話

 邪魔者はもう動けない。ソレで良い。けれどもそこは気を失っている訳では無いので口は出るのだ。


「な、何だ!何なんだ一体キサマは!」


 リーダーなのだろう男がそう問い詰める。誰を?ソレはマントを羽織ったメーニャをである。


 メーニャはフードを深く被っているし、その顔も魔法で幻影を重ねているので正体を見破られる事は無いだろう。


「誰だと言っているんだ!俺たちをこんな目に遭わせて分かっているのか!何処の誰だテめぇ!ウチのボスが黙っちゃいねえぞ!」


 その姿は情けなく、滑稽だった。男はメーニャへと脅しを掛けるけれどもその恰好が付いていない。


 だって地面に寝転がったままで痛みを我慢してそんな言葉を吐いているからだ。


 脚を折られたのだからしょうがないと言ってしまえばそれまでだけれども。


 脅しを口にするくらいに今の状態で根性が残っていたのならば、そこは片足でだけでも立ち上がっていて欲しかった所である。


 脚を折られた男たちは全員が額には脂汗を掻いていて痛みのせいで表情も歪んでいて地面に転がったままだ。


 しかしそこには恐怖の色は含んでいない。ここに来てまだ自分の命が相手に握られていると言った事実に気付けていない様子だった。


(メーニャがここで機嫌を悪くしたらコイツら瞬時に殺されるって分かって無いとか、どれだけお気楽なんだ?そんなに所属している組織ってのを信頼してるって?馬鹿だなぁ)


 生殺与奪、その自由を今この場で握っているのは目の前の男共をゴミでも見るかの様な目で見下しているメーニャなのに。


 そんな呆れた者たちへの興味を失った僕は女の方へと声を掛けた。


「さて、それじゃあそこの女の人、君は一体何者で、こいつらは何なのかな?教えてくれないか?」


 メーニャには今の時点では黙って貰っていた。質問をするのは僕だった。


 魔法で姿を消している僕の声は路地裏に響いてその出所が分からない様にしている。


 なのでメーニャ以外にこの場にもう一人、部外者が居るとその瞬間に気付いた女はその身を縮こませて警戒をより一層上げた。


 メーニャが乱入した時にも女は警戒心を上げているけれども、そこは「助けが来たのだ」と、メーニャをどうやら自身の仲間だと勘違いしたらしくて気を緩め直していた。


 なのでこの時点での僕の突然のこの質問には身を固くして答えようとはしてくれなかった。


「ああ、答えたくはないか。と言うか、答えられないか。姿を見せてないもんね。敵か味方か分からないんだから、そりゃいきなりこんな事を聞かれても戸惑う方が強くなっちゃっうね。」


 聞きたい事を答えてくれなかったからと言って僕はそんな事で怒ったりはしない。


 まあメーニャが若干のイラつきを滲ませた程度だ。まだまだ猶予はある。


「じゃあそっちの奴等に同じ事を聞こうか。どう?教えてくれないか?」


 倒れている男たちへと僕は視線を移してみたけれども。


「何処に隠れていやがる!姿を見せろこの卑怯者が!」


 ダメだった。メーニャの機嫌がまた一段階、いや、二段階は上がってしまっただけだった。


「どうどう、落ち着いて、ね?僕は今君たちにこれ以上の被害を与える心算は無いんだ。だから、素直に僕の質問、疑問に答えてくれればこの場は見逃してあげるから、ね?」


 随分と上から目線な事を言ってしまったが、これは事実だ。


 僕はこいつらを見逃す心算で居た。


 けれどもこのままではメーニャがマズいのである。


 ここで僕は再び女に同じ質問をした。


「答える気が無いのならハッキリそのつもりは無いと言ってくれるだけで良い。沈黙はしないでくれ。それを聞いたら僕らは退散するから。」


 これは所詮は僕の下らない思い付きの気まぐれな暇潰しなのだ。


 本気にはなっていないのでここで「どうのこうの」と物事への本格的な介入をする気は無かった。

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