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六十一話

「ちッ!毎度の事に逃げ足だけは早い。だが、今日は追い詰めた。罠を張って待ち続けた甲斐があったぜ。」


 男の一人がそう口を開いて女を睨んでいる。


「テメエには何もかもを吐いて貰うぜ。なに、素直に全て曝け出せば痛い目を見ずに死ねるんだ。俺たちも拷問で無駄に痛めつけて楽しむ趣味はねぇ。とは言え、今まで散々に手間かけさせられてるからなぁ?その分をその体で存分に楽しませて貰うのは確定だけどな。」


 下ひた笑いを込めつつそんな言葉を女へとぶつける男の顔には暗い愉悦が滲んでいる。


「・・・おい、何か言ったらどうなんだ?ちッ!顔は良い癖に可愛げが無いとかつまらんだろうが。まあ、その顔をこの後はしっかりと歪ませてやるからよ。楽しみだぜ。」


 女は絶体絶命だ。しかしその顔には諦めたと言った感情は乗っていなかった。


 寧ろその手には小さなナイフを隠し握っていて限界を見極めている。


(うん、こりゃ反撃する気だな。もしくはソレが無理だと判断したら・・・自害するかな?相当に決まってるね?覚悟が)


 僕は屋根の上でその場面を観察していた。もちろん魔法で姿は消してである。


 メーニャがこの時点で何処に居るのかと言うと、男たちの背後に魔法で姿も気配も消して待機中である。


(男たちは女がナイフを手にしてるのを気づいて無いね。さて、どうなるかな?)


 メーニャには僕の合図が出るまでは待機でお願いしてあった。


 この男たちと女の関係がどの様なモノであるかを確認したかったからだ。


 とは言え、男たちの口から発せられている先程からの言葉は聞くに堪え無い汚いモノばかり。


 もうそろそろメーニャが限界だな、そんな風に感じた時点で僕は合図出す。


「やっちゃって良いよ。」


「畏まりました。」


 このやり取りは男にも、女にも聞こえていた。


 だけどもそんな事を気にしていられないだろう。男の方も、女の方も。


 何せ宙に浮いたのだ。男の一人が。ソレはメーニャがやった。投げ飛ばした。こんな夜更けに人が突然に空を舞う。


 そしてドスっと地面に叩き付けられたと同時に男の「うぐっ!?」と言う驚きと呻きが混じった声が暗闇の中に響くのである。


 その後はシンと静まり返る夜の路地裏。


 残りの男四人は信じられないと言った様子で固まっているが、ソレは余りにも甘過ぎる。


 メーニャがそんな隙をそのまま見過ごす事など有り得ないから。


 投げ飛ばされて地面に横たわる男は気絶していて既にもう声すら上げていない。


 だけどもソレを分からなかった一人が「オイ!どうした!?何が!」と叫んだ所でそいつの脚が本来なら曲がら無い方に「ブギッ」と言った鈍い音と共に折れ曲がる。


「げがッ!?・・・脚が!俺の脚がぁ!?」


 当然コレはメーニャがやっている。だが男たちの視界にはメーニャの姿は映ってはいないだろう。蹴りの瞬間を捉えられずにいたはずだ。


 動いた後は当然に男たちの視界の死角に既に回り込んでその身を安易に晒す事などしていないメーニャである。


 しかも今は周囲は闇、夜の時間だ。そこかしこの影やら陰に素早く移動する存在に気付くのはそもそもにかなりキツイだろう。


 その証拠にその後の残りの男三人の処理も手早い。全員脚を折られて地面に転がされている。


「ぐがッ!?一体何がぁ!」

「い!?いぃぃ!?いってぇぇぇ!?」

「えがッ!?な!なんだよコレはぁ!?」


(五人の中で一番幸せだったのは最初に投げ飛ばされた奴なんだろうなあ)


 痛みで地面に転がっている四人を見て僕はそんな下らない事を考えていた。

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