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六十話

「勇者は未だに首都からは出ていない模様です。しかし国の周辺、近場のダンジョンは攻略していっている様です。この分では王国を遠く離れるのはかなり先になるかと思われます。」


「そっか。ならこっちもソレに合わせる様にして少しずつ王国に近づいて行こう。勇者と不意に遭遇してしまう何て事は絶対に避けるべきだしね。」


 王国へはノンビリと向かう事がコレに決定した。なのでまだこの町での滞在を延長をする事に。


 そうは言っても何かを為そうと言う事でも無い。


 メーニャにはこのまま町の様子と勇者の動向、その情報集めをして貰うだけである。


 魔王の僕はこの地下の部屋にて引き籠り続ける予定だ。別に外に出る用事も無いのである。


 僕が下手に町へと繰り出してしまうとどんなヘマをしでかしてしまうか分かった物では無い。


 メーニャの様な優秀さは僕には無い。ソレを自覚している。


 幾らこの魔王の体が規格外だとしても、ソレを操る中の「僕」がポンコツなのである。


 とは言え、時には気分転換やら外の新鮮な空気を吸いたくて夜になると魔法で姿を消して空の散歩には出ていた。


 暗い夜空で、しかも姿を魔法で消していれば目撃者も出ないだろうと。


 一応はメーニャにもこの事は相談してから実行している。


 こんな事で「あ、魔王だ」とか人族にバレたら堪ったモノでは無い。馬鹿らし過ぎる。


 なのでメーニャに警戒をして貰いながら僕は今、夜空の散歩を行っていたのだが。


「・・・メーニャ、頼みがあるんだけど、良いかな?」


「御命令とあれば何なりと。」


「あそこの追われている人族を助けてあげてくれない?僕が魔法をぶっ放すと手加減出来そうに無いんだ。あ、追手の方は死なない程度の重傷までで止めてくれる?」


「御意に。」


 町の上空を飛んでいれば奇妙な光景を見つけてしまっていたのだ。


 追われる女性。それを追う五人の男ども。


 こんな夜更けに何で?と非常に気になってしまった。


 しかもそのままその追いかけっこの顛末を見届けようとするのでは無く、追われている女性を助けてみるなどと言う気まぐれである。


 こんな夜中なので追う男たちは声を上げたりせずに静かに女性を追い詰める。


 余り騒ぎになれば衛兵が現れてこの追いかけっこを邪魔する事だろう。


 だから男たちが何も言わないのは理解できたのだが。


 終われる女性の方が叫び声も上げず、助けを求める声も出さずと、逃げ続けているのが不思議だった。


 騒げば女性有利になるはずだ。それこそ衛兵に助けを求めてそこら中を走り逃げれば町の住民の誰かしらが通報をするに違いないし。


 そうなればこの追いかけっこは終わりを迎えて男どもは女性の事を諦めるはず。


 しかしずっと走り続けて男たちから逃げるのみの女性。


「気になるね。でも、余り深くは関わらずにちょっかいを出したくなった時にお邪魔するのが面白そう。」


 僕の性格はどうにも歪んでいるらしい。


 余りにも地下の部屋で暇を持て余し過ぎたのか、どうやら刺激に飢えている様だった。


 そうして僕がそんな性格の悪い事を考えている内に女性がとうとう壁際に追い詰められた。

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