五十八話
休憩など別に取らずともこの体は疲れないのだけれども。
僕の精神の方はそうはいかない。
だからメーニャからのこの声掛けに僕は直ぐに作業を止めた。
「はぁ~。ちょっと所じゃ無く疲れたねぇ。メーニャもゴメンね?ずっとこんな調子だし。付き合わせちゃって。メーニャは別に空を飛んで先に行っていても良かったんだよ?」
「いえ、魔王様をお一人にして先にわたくしだけが向かうなどはできようはずもありません。」
「うーん、まあ、そうだね。僕もメーニャが居なかったら今頃どうなっているか分かったもんじゃないよ。進行方向の微調整とか掘った穴が崩落しない様に注意して貰うとか、そう言う部分を頼ってるしね。助かってるよ、ありがとう。」
「お役に立てて光栄です。」
休憩すると言っても別にお茶を飲む訳でも無く、椅子に座って一息つく訳でも無く。
立ったままで僕らはそんな会話を交わす。
目的地はまだまだ遠いのでそんなにノンビリとはしているつもりは無いのだ。
しかし別段に急ぐと言う程では無い。焦ってはいないのでもう少しだけメーニャと言葉を交わす。
「かなり地下深いけどさ、ここから地上の様子を窺う事が出来る魔法って無いかな?」
「そう言った魔法は聞いた事もありません。・・・今この様な状況はこれまでにはあり得なかった事かと。」
「うーん?そうかな?これまでの歴史の中で「地下からの急襲!」って今までに無かったの?」
「・・・人族の保有魔力ではこれ程の深度までの到達は土台無理な話で御座いましょう。恐らくは百人単位での動員が必要かと。それと。」
「ソレと?」
「この様な規格外の長距離を進もうとすれば数十年単位が必要になるかと思われます。」
「あー、そっか。そんな大掛かりな事になれば隠そうとしても無理な話だね。そんな大掛かりじゃ隠しきれずに直ぐに公になってバレちゃうね。じゃあ魔族だと?」
「似た様なモノかと。」
「そっかぁ。僕のこの「魔王の体」が特別なんだね。それなら余計にバレ難いよね。」
僕はメーニャの説明によりこのトンネル作戦に確信が持てた。
恐らく人族にバレずに王国の中枢にまで進む事が出来るだろう。それとマードックにも知られずに。
そう、僕らは王国の地下に潜伏しようとしている。
勇者が王国での修行を終えたらダンジョンに挑む為に出国する予定な訳で。
そのままダンジョンを攻略しつつ力を蓄えて勇者は魔王の居る場所へと迫る旅に。
「そうやって最終的に城に来たとしても魔王を見つけられずに右往左往して、その後もそのまま見つからずに探し回る旅をして一生を過ごして寿命で勇者が亡くなってくれたら万々歳ってね。まあ僕らはソレを待つ間は物凄く消極的で、物凄く退屈な日々になっちゃうかもしれんけどもね。」
まさか魔王が王国の地下深くに隠れ住もうとしているとは誰も思うまい。
しかも何らの動きも見せずに誰にも発見され無い様にとひっそり暮らしていこうとしているなどと。
そう言った思惑で僕らは王国へと向けてせっせとトンネルを掘って進み続けているのである。
そうして王国に到着したらこれまでの様に隠し部屋を作って内装を整え、暇を持て余しつつも勉強に励み、時にメーニャと盤上遊戯で遊ぶ。そんな生活をして行く心算である。
「さて、じゃあ再開しようか。すっごい地味だけど、成功の暁にはかなりの間は安泰の時間が約束されてるからね。」
こうして僕は作業を再開した。




