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五十七話

 引っ越しとは言ってもだ。移動方法は地味である。


 地下にトンネルを掘って進むのだ。空を飛んで移動するよりも非常に面倒であり、手間も掛かり、労力も掛かり、時間も掛かりと。


 トンでも無く、そして馬鹿げている作業を続けて今僕らは目的地へと進んでいる。


 とは言えだ。僕のこの「魔王の体」には底無しの魔力があるのでソレを地層へと流し込んで後はソレを操作するだけであっという間にトンネルを作り出す事は簡単なのだが。


 メーニャにはその成形の補助に入って貰ったりしている。あと補強も。


 穴を掘るだけでは魔力を抜いた瞬間に崩れて生き埋め、などと言った事にもなりかねない。


 全ては魔法でこの様な事が成立しているのでその点を考慮して僕だけでは無くメーニャにも様々な部分に気を付けて貰っているのだ。


 細かい部分への注意を怠ってこんな所で死ぬ様な事はしたくは無い。


(まあ生き埋め程度で死ぬ様な身体じゃ無いんだろうけどさ)


「メーニャ、大分進んだとは思うんだけど、方角は合っているかな?ズレて来ていたりしないかな?定期的に調べておかないと何だか不安でね。」


「わたくしの感覚では誤差の範囲内に収まっていると感じますが、地上に出て確かめてみますか?」


「そうだね、もう一回分掘ったらちょっと確かめてみようか。でも、地上には出ないで確かめられる方法無いかな?運悪く発見されちゃう様な事は避けたい。こういう時に限ってそう言うのって起こると思うんだよね。」


 一直線、僕がトンネルを掘る時は一気にやっている。


 距離は詳しくは分からないが、視界の限界と言える位に超長距離を掘り進めていた。


 それだけの長さなので少しでも角度が付いていると相当に目的地から離れた方向へとズレて行ってしまう。


 なので時折にこうしての確認作業が必要になっていた。目安が無い、そんなの当たり前。地下であるのだ。


 だけども文句は言えない。この方法を採用したのには理由がある。ソレは「バレ難い」だ。


 移動に関しては当然に空を飛んだ方が早い、楽、手間が無い。しかしバレる率がそこそこに高い。


 幾ら魔法で姿を隠しても、変化させていたとしても。


 それらを看破する魔法も存在するとメーニャから教わっていた。


 これから向かう場所、その目的地にはきっと防衛の為のそう言った魔法を扱える人族が配備されているに違いない。


 そう言った事でこの様にして馬鹿げた様な方法でその目的地へと向かっているのである。


 地面の、ソレも相当深い所からの接近。コレは結構な盲点では無いかと僕はメーニャに提案していたのである。


 コレにはメーニャも「え?地下、ですか?」と言った反応を貰っているので僕は確信を得たのだ。コレは誰にも知られずに行けるな、と。


 そしてこの方法で行こうと言う事で決定したのである。


 とは言え、後悔していない部分が無いと言えば嘘になる。


 飽きて来てしまったのだ。毎度に同じ、何も変わらぬ光景に。


 ここまで進んで来て過ぎたトンネル部分はしっかりと、これまた魔法で埋めて証拠は消している。


 消したらまた進行方向にトンネルを掘り、進んで限界まで行ったら、また埋めてを繰り返しているのだ。ソレも何度も何度も。


 変わり映えの無い繰り返しに飽きてしまうのはしょうがないだろう。僕が発案者だったとしても。


 しかし愚痴は溢すまいと我慢はしていた。だってメーニャは何も言わずに付いて来てくれているから。


 ならば僕もここはしっかりと自分が言い出した事を完遂するまではと頑張る心算になっていた。


 そうして時間の経過も忘れてひたすらに地下トンネルを作っては進み、埋め、を繰り返し続ける事、暫く。


 時間を忘れてちょっとナチュラルハイになりかけた所へメーニャから「休憩に致しませんか?」と声を掛けられて正気に戻った。

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