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五十六話

「・・・コレで終わりかな?後は取り調べでケリがついて僕らも引っ越し・・・あれ?」


 ここで不思議な事が起こる。いや、嫌な予感がする行動を調査官がしたのだ。


 ここで初めて調査官が喋ったのである。


『ケルカム、町中に設置されている魔道具は何だ?』


『は?魔道具ですと?それは一体・・・?』


 ビックリさせられた。調査官は最初から分かっていた様で。


「ヤバイ、気づかれてた。メーニャ、コレどうしよう?」


「直ぐに回収と言うのは不可能です。ソレを無理に実行してこの調査官とやらにこちらに直接接触されるのは大分危険かと。」


「この魔道具は珍しい物とかじゃない?」


「いえ、人族の中でも良く使われている物なので貴重な品と言う程では御座いません。まあ、わたくしが作って設置した数を考えると、そこは異常だと判断される部分ではあるかもしれませんが。」


 どうやら設置されている数の方が問題で、物としての価値はそこまででは無いらしい。


 とは言え、ソレでもこの魔道具がこれ程の範囲で町に設置されているのは異常と判断される数だと言う。


「これでこの調査官に僕らの正体がバレる可能性は?」


「低いかと。」


「せっかく作って貰ったけど、今回はコレ、放置して行くしかなさそうだね。」


 設置されている場所を把握されてしまったのならしょうがない。


 これらを回収しようとしてその場面を見つかりでもすると詰め寄られる事が予想出来た。


 何せこの調査官は鋭い。だって今もケルカムに幾つもの質問を飛ばしていたから。


『今回のこの証拠は何処から集めたものだ?』


『我々が独自に調査した物です。』


『・・・嘘だな。下手な誤魔化しは商会の為にはならんぞ?まあ、これ程の大きさの犯罪組織を潰せたのだからソコは多めに見てやらん事も無いがな。』


『・・・独自のルートで偶然に仕入れる事が出来たとだけ。これ以上の詮索は商会への不当な介入として拒否させて頂きます。』


 即座にケルカムの付いた嘘を見抜いてしまったのだから恐ろしい。この調査官は侮る事をさせてくれそうに無い。


 ケルカムも誤魔化せ無かった事は諦めて、しかし情報の入手先はボヤかす心算らしくそれ以上は口を閉じた。しかも勇気ある発言までする。これ以上は聞くなと。肝が据わり過ぎだ。


 だが二人がこの会話から僕らの正体へと繋げる、気づく所まではぶっ飛んでいないみたいなのでそこはホッとする所である。


「今回の件の切っ掛けはケルカムから調査官に説明はしてあるだろうし、ミーチェを助けた者たちは何者だ?って話はもう済んでるんだろうね。」


 ブレッツ商会を潰す、その犯罪の証拠も押さえた。


 しかしそこに至るまでの、それこそ、そう言った行動に動き至るまでの理由もある程度は説明をしておかなくては調査官が納得はしなかったはずだ。


 国王直属などと説明があった程である。早々に動かして良いハズの組織では無いのは確かだろう。


 今回の騒動に対して「動くべき」と判断させるだけの材料を提示しなくちゃこの調査官も腰を上げなかったのではないか?


 そんな結構どころじゃ無くヤバイ組織との接触、繋ぎが出来る伝手をケルカムが持っていた事も少々気にしなくちゃいけないかもしれない。


 これはどんな所から僕らの正体がバレるか分かった物では無い。


 この町を去る時にはケルカムへの挨拶などをする必要も無いのでさっさと離れた方が良いだろう。


 長くここに滞在する理由も無くなった。取り合えず僕はメーニャに心の準備は良いかと視線を送る。


 きっとケルカムは今回の件で大きな悩みを抱えただろう。


 僕らが今後にどの様に商会に関わって、どんな要求をして来るか?そんな警戒心がド級に上がっているはずだ。


 ソレを僕は華麗にスルーする事に決めている。


 助けて貰った立場の者からすればこの様に事件が解決した後は何かを要求されるだろうと思考するはず。


 でも僕は別に何かを相手から得る為にこの様な行動を決めた訳じゃ無い。


 勝手気ままな興味によって行動したに過ぎない。


 後はこちらの都合もその中に含まれている。


「別に恩に着せようとして動いた訳じゃ無いからね。こっちもこっちの予定と都合って物が在るのよ。さあ、引っ越しを開始しようか。」


 僕はそう言って作業の開始を宣言した。

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