五話
「あー、メーニャ、さん?で、良いのかな?僕、これからどうなるの?」
「・・・どうもならないのではないでしょうか。」
「うーん、この状況、何とかなる方法、知らない?」
「お逃げになられたいので?」
「え?だってこのまま閉じ込められるだけの人生?魔王生?とか、堪ったモノじゃ無いじゃない?しかもマードックが人族を根絶やしにして勇者もぶっ倒してくれれば、ソレは良い事なんだけどさ。何だろ?絶対に僕の前に勇者がやって来るんじゃないかと思うんだよねぇ。」
「ソレは魔王様の勘ですか?ええ、まあ、倒せるのであればソレが一番の最良なのでしょうが。こうなってしまってはどうしようも無いと思われますけども。」
「えぇ・・・何とか、うーん、して貰いたい所だけど、僕がそもそも自分でここは積極的にここから出られないか動くべきだよね。最初っから他人に頼るって言うのは情けなさ過ぎるや。ゴメンね、メーニャさん、いきなり変な事聞いちゃって。」
「いえ、兄には魔王様の御世話をしろと言われましたから。この程度は何ともありませんよ。ソレと呼び捨てして頂いて構いません。どうぞメーニャと。」
「あ、そう?それじゃあ・・・って、え?兄妹?そっか、そうなのかぁ・・・」
どうやらマードックとメーニャはそういう関係らしい。コレにはちょっと驚いた僕。
コレには「だからあの様な行動に出られるのか」と、僕は一瞬ここでそう思ったけれども。
「え?実の兄を冷静に戻す為とは言え、大量の冷水をいきなり一気にぶっ掛けるとか、それでも流石に無くない?」
考えてみればソレもソレ、異常だ。その考えを即座に否定した。
幾ら兄妹だからと言ってもあの場で咄嗟にそんな行動に出るとか容赦が無さ過ぎる。
メーニャはマードックの事をどの様に認識していると言うのだろうか?怖ろしい限りだ。
「えー、じゃあちょっと気持ちを切り替えて、試してみようかな。本当に出られないのか。」
これ以上はこの兄妹の事を考える事を止めておいた。
気を取り直してこの封印結界とやらから出られないかと僕は動いてみる事にする。
「うーん?この部屋って出入り口はその正面の扉だけ?」
随分と大きなその扉に手を添えて僕はこの巨体で出せる精一杯で押す。
「うむむむぅぅぅゥ・・・うん!・・・動かないねぇ。マードックが軽く押して開いていたのを見てたんだけどなぁ。僕がコレだけ押しても開かないって、只の力押しじゃあ無理って事かぁ。」
僕のこれからはこの部屋から出た時に初めて、その一歩となる。
「必ずこの部屋から出て行かないとね。時間は、まあ、まだまだ、たっぷりあるだろうし?他にも色々と試してみるべきかな。」
諦めない。やるなら中途半端にせずに、思い付きでも、困難でもいいから、何でも試してみるべきだ。
そう言った訳で僕は扉へと体当たりしたり、飛び蹴りをしてみたりと、衝撃でこの結界を壊せ無いかと暴れてみたけれど。
「うん、この程度で突破出来ていたらマードックがあんなに自信満々になる訳が無いよねぇ。」
ここで僕はやっと納得した。これは魔法なのだと。
単純な物理でドウこう出来る代物では無いと認識した。今更に。
「・・・魔力、魔力かぁ。ソレを先ず扱える様にならないと、僕はスタートラインにすら立て無い訳ね。さて、どうやったらソレを感じられて、操れる様になるのかなぁ。その後は魔法?を使える様にならないとこの封印結界とやらを解除できない、よなぁ。」
僕はそんなボヤキを溢しつつウンウンと唸る。
そしてお手上げになった。