四十八話
「魔王様、明日にはケルカム商会に報せを出して後始末を付けさせ様かと考えております。その後は如何致しましょう?お考え等がありましたら教えて頂ければその様に動きます。」
「ああ、もうそんなに片付いちゃったのね。うん、なら今回の事の騒ぎが落ち着いた所を見届けてから引っ越しをしようかと思っているんだけど、どう?」
「引っ越しで御座いますか?ならば王国からより離れた土地へと?ここよりも?」
「いや、その逆だね。もっと大胆に行こうかと思うんだ。」
僕のこの発言にはメーニャも流石に首を傾げた。
逆、そして大胆。ソレは要するに勇者の居るだろう王国、首都へと近づくと言っている様なモノだ。
逃げると言うのであれば遠ざかる、ソレが常識だ。
けれどもその常識の反対を僕が口にしたことでメーニャも「ソレは無い」と思ったんだろう。
「あの、ソレは危険なのでは?」
幾ら何でもそんな行動は心配どころの話じゃない。メーニャの表情はそう言っている。
けれども僕は軽い感じでソレを否定しておく。
「いや、そうでも無いんだよねコレ。思考の死角って言うか、想定できるはず無いと思えるんだよね流石にこれは。」
僕はこれまでに勇者と魔王の戦いの歴史と言うものをメーニャからある程度学んで来た。
その結論からして一つ考え付いた事がある。
ソレは幾らでもある僕の暇な時間を使ってこれでもかと言える位に脳内でシミュレーションを繰り返した。
その結果、この作戦は非常に成功率が高いと見込んでいる。
「魔王様の御考えがどの様なモノかはわたくし如きには窺い知れぬ深謀遠慮、御命令とあらば何処へでも付いて参ります。」
メーニャは僕が考えを変える事が無いと察したのか、メイドと言う立場、魔王の部下と言った視点で答えを口に出すけれども。
「うん、じゃあそこら辺を納得して貰う為にも今から説明するから。」
只単に僕の命令だからという形でメーニャには何でもカンでも従って欲しくは無い。
あからさまに「間違っている」との答えがあるのであれば、ソレを恐れず引かずに示して欲しいのだ。
この世はまだまだ僕には分からないことだらけ。メーニャにはその点のフォローをして欲しいから。
だからここで僕は脳内で何度も繰り返したシミュレーションの内容とその根拠をゆっくりと時間を掛けて丁寧に解説していく。
そこでメーニャには何かしらの疑問があればソレをその都度に質問して貰い、そこで僕がその答えを出すと言う問答もした。
これは僕では見逃していたり、間違った根拠等でシミュレーションしていないかどうかを確かめる為でもある。
途中で根拠や元ネタが間違っていると、その先で思考して推論から出た結論もズレてしまったりする。
ソレは後に致命的になりかねない事だ。早急に発見、気づいておかねばならない。
そう言った部分があったら早期に修正を加える為にもメーニャに僕のこの結論までの経緯を確認して貰うのだ。
これは非常に重要で必要な事である。
「とまあ、こう言った感じで人族、王国も僕らのこの行動が「あり得ない」との結論になって考える余地も無いと放棄するんじゃないかな?そうなれば、もうコッチの勝ちだよね。」
僕の説明が終わるとメーニャは言葉には出さなかったが「コレハヒドイ」と言った感じの表情に変わっていた。




