四十七話
要するに、僕は自分の事以外の面において雑、気にしちゃいないのだ。
気まぐれである。
今回の事はたまたまに興味を惹かれたから関わったみたいな所だ。
万が一にも今、勇者がもしこの町に現れて僕の事を、「魔王」を発見して戦闘になったとしたら?
僕はそうなればそこで勇者に言うだろう。「ここで戦闘したら死人が多く出る所か、町も壊滅だよ?」と。
そんな脅しをして逃げる心算である。卑怯と言われ様ともそんなモノは幾らも僕には響かない。
自分の命以上に僕には価値の高い物など無い。優先するのは僕自身、僕の命、それは変わらない。
メーニャがもし危険に陥ったら、自分の身の安全を確保できる確信がある時だけは助けを出すと思う。
これに薄情と言われても、僕は自分の命を懸けて他者を助けようとは思えない。
だからこの町でメーニャが大暴れしている事も、余裕があると思っているから自由にやらせている部分がある。
(もしこの事が勇者の耳にでも入ればここの町へと真っすぐに向かって来る可能性が否定できないからね。でもそんな事になる確率は低いと思っているから、メーニャにこうして好き放題やらせている所があるし)
一応は勇者は王国の首都でまだまだ修行中?だと言った噂話を仕入れていた。
その情報もかなり以前のモノだし、今はどうなのかの最新の情報が無いので現状がどの様になっているのかサッパリだ。
どうにもこの町は経済が盛んであり、商人がかなり多く出入りしていて情報の巡る量も多いと言う事らしいけれども。
しかし王国からは相当に遠い「ド」が付く田舎という距離であるらしいし。
もっともっと勇者の、王国の動きに関する直近の情報が得たいならば、この町から移動して別の町の側にでも拠点を作ってそこに隠れて情報収集した方が遥かに効率は良い。
辺境の地と言えるこの町に別段これと言って執着も愛着も無いし、今回の件の収拾が付いたら何処か別の場所に引っ越すのが良いと考え始めている所だ。
(まあアレだけ凝って巨大な迷路にした第一拠点?って言ったらいいのかな?そこをほったらかしにするのはちょっと思う所もあるけれど)
そうは言ってはいられない。僕は自分の身可愛さに魔族の事も、人族の事も知ったこっちゃ無い。
自分が助かる為に、そしてこの先も悩み無く楽しんで生きて行く為に、幾らでも身を隠していく気でいる。
「そう簡単に殺されて堪るかって言うね。神も魔神も知った事か。僕には全く関係無いんだから、こんなただ殺されるのを待つだけの運命なんてポイ捨てだね。」
この「魔王」の身体は魔神が創り出した物だろうけども、だからと言ってその中身に入っているのはそれらに何らの関係も無い「僕」と言う魂である。
魔王は勇者に毎度の事に討伐される。そこに何かしら魔神に思う所が在るのか、無いのか。ソレも分からない。
こんな神同士の都合に振り回され、理不尽に晒されている事に素直に従う気は毛頭無い。
そんな理から逃げるだけ逃げて、抵抗するだけ抵抗して、最後に僕が死ぬ様な場面になったら言ってやるのだ。
(へっ、ざまあみろ、ってね。これまでとは全く違う勇者と魔王の追いかけっこを楽しんで貰うさ、精々ね)
神側に余りにも優位な規則はこれまでに幾度も、それこそ数えきれ無い程の回数、人族を勝利させて来ただろうけれども。
神々からしたら只の盤上遊戯の様なモノであっても、僕にしたら命がけで、しかもこちらが負けるのが確実と言って言い様な殺し合いだ。冗談では無い。
そんなモノに一々懇切丁寧に真面目に乗って付き合ってやる義理が僕には一切無い。
僕は、僕と言う魂は、どうにもマードックからしてみれば何処からどうしてこの「魔王」の中に入ったか分からないと言っていた。
僕も自分で自分の事が一切何も分からない。ついでに分かった所で僕は変わる気は無い。
分からないなら、自らの中から湧き出て来る生存意思に従って動くのみだ。
魔族の悲願とか、魔神の思惑?とかも僕からしてみれば「勝手にやってろ」であるからして。
「さて、近日には全部清算して来るってメーニャが言ってたけど。ソレが終わったら引っ越し、かな?」




