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四十五話

 結局は娘にこの様に脅されては頷くしかない父親である。


 ケルカムは唸りつつも無期限の襲撃計画停止を呑んだ。


 とは言え、これまでに集めて来ていた暴の空気を纏う者たちを雇っている金額がある。


 赤字をこれ以上垂れ流しにしない為にもケルカムはそこも気にしなければならない訳で。


「雇った者たちを解散させるにしても納得の行く理由を示さねばならん。金はしっかりと前金は渡しているから不満を漏らす者は少ないと思うが。ソレでも契約の打ち切りだ。信用はかなり落ちるだろう。その点はどうしてくれる?」


「その様な事はこちらには関係の無い事だ。娘が五体満足で、傷物にならずに戻って来た事だけでも充分だろう。何が不満なのだ?それとも娘が帰ってこなかった方が良かったのか?そうだったのならば正直に不服だとそう言えばいいだろう。」


 まだ粘って来るケルカムの言葉をメーニャはバッサリ。


 ケルカムはコレに物凄く不機嫌な顔に変わる。


(まあそれだけこちらの事を信用して無いって現れなんだろうね。とは言え、娘がこうして助かった事に対してその見返りに「その襲撃、待った」って求めはそんなに呑み込めない事だったのか?)


 娘の無事を確認した時のケルカムの態度は本気での安堵だった。喜びも本心だろう。


 だけどもこうしてメーニャに対してここまで不審やら不信を露わにしつつこちらへと「補填しろ」などと言って来るのは少々度が過ぎている。


 これ程にこちらに責任転嫁して来る様な言い方は有り得ないだろう。厚かましいとか言う範囲を超えていると思う。


(何で僕らが商会の金やら信用の補填やら補償なんてしなくちゃいけないんだよ。ちょっと所じゃ無く行き過ぎだ)


 恩人に対して良くもまあここまで面の皮が厚くなれるモノだと思ってしまった。


 娘が無事に戻って来た事で余計な欲をケルカムは描いたのだろうか?


 商いをする者としても、親と言う立場で見ても、どう考えてもケルカムのこの態度は恥知らず、恩知らずと僕には見えてしまう。


 とは言え、魔法で姿を消してこの場に居て正体を現さずに経緯を観察している僕である。この時点で余り良いモノじゃないって言う感覚を持っている僕である。


 本当なら堂々と姿を見せるのが誠意だと言えるんだろう。


 だけどもそんな事をすれば大事になるのは火を見るよりも明らかだ。


 だから一々遠回しな形、メーニャに頼んでこの様な茶番みたいな事をして貰っているのである。


 僕がケルカムの事を余りゴチャゴチャと言えるモノでは無い。


 しかしこの分だとケルカムが後々に約束を反故にして勝手に動き出さないとも限らない。


 ミーチェにソレを阻止して貰う為にもケルカムの側で見張りをして貰わねば。


「娘よ、そ奴が暴走しない様に見張っておけ。もし約を破る様な事をしでかそうものなら、それ相応の覚悟をして貰う。余り私を舐めるなよ?」


 メーニャのこの発言にミーチェが反応してビクッと体を震わせる。そして直ぐにケルカムの側に駆け寄って。


「お父様!絶対に!絶対に!その様な事が無い様に!そんな事を為さったら本当に、本気で!私は家を出ます!冗談ではありませんから!と言うか!破滅します!止めて!本当に!この商会が無くなる所ではなくなってしまいます!」


 この様な必死な、そして狼狽えるミーチェを見たケルカムが困惑の顔を浮かべる。


 コレでケルカムが守ろうが、守るまいが、一応は約束を取り付けたと言う事で僕はメーニャへと撤退の指示を出す。


(戻ろうかメーニャ。情報収集と「衝動解消」は明日以降って事にしておいて)


「ではさらばだ。精々愚かな選択をしない事だな。」


 そんなセリフを最後に残してメーニャは部屋を出て行く。


 僕もソレに付いて部屋を後にした。

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