四十三話
「お父様!」
「ミーチェ!」
感動の再会を僕は魔法で透明になって見つめている。
この様にして町にやって来たのはちゃんとミーチェが父親を説得できるかどうかを見届ける為だ。
送り届けた者としての役割はメーニャにして貰っており、フードが付いているマントを羽織って正体を隠して貰っている。
顔はフードを深く被って、一応は魔法でその顔も変えてある。人族に見える様に。
「お父様、今直ぐに襲撃の計画を止めてください。私を助けてくれたお方のお求めです。」
「・・・何だと?ソレはどう言う意味だ?」
「詳しいお話は後でします。ですが、今ここで中止に関しては頷いてください。」
「訳が分からん。説明は?そもそもお前が無事でこうして戻って来れた事を喜ぶ時間も無くか?」
「はい、何も聞かず、問わず、只答えだけを。そして、ソレを守ってくださいまし。」
ミーチェのこの真剣な求めに黙ってしまった父親は非常に不服そうに眉根を深く顰めるだけ。
「・・・ソレは、承服できん。この様な真似をして来た輩をのさばらせておく訳にはいかん。ブレッツ商会にはこの町から、いや、この世からその存在していた証拠すら消えて貰う。」
「お父様!」
ミーチェが説得に失敗している。
と思ったらまだ続きがあった様で。
「しかし、大事な娘を助けてくれた方の願いだ。受け入れぬなどと言う事は恥知らずであろう。だが、父親としての感情が許す約束出来る期間は、一週間だ。これ以上は、この場では、そう、この場では何も聞かん。しかしこの後でしっかり、ちゃんと、ミーチェよ、何があったかを説明してくれるのだな?いや、納得が出来る説明をして貰う。そうで無ければ・・・この様な怪しい者の求めなど反故にするぞ?」
今この場ではこれ以上はとやかく言わずに話を先へと進める為に呑み込む、そう言って来た。
(懐は深いらしいなぁ。色々と直ぐにアレコレ知りたい事がある所をしっかり我慢してる。相当なヤリ手なんだろうなぁ)
「やるならばこちらが知らせを出した後だ。一週間などでは無く。」
ここでメーニャが発言する。そう、この商会の主、ケルカムへと。
商会の名はそもそもミーチェの父親の名をそのままに付けたものなのだ。
メーニャの要求はそもそもが一週間などでは無く、知らせをこちらが送るまでは襲撃は止めておけと。
この怪しい恰好の、顔すらマトモに見せない状態のメーニャにケルカムは厳しい目を向けて言い放つ。
「ソレは何時になる?この怒りを、憤りを、正当なる報復を、後どれ程に抱え続けなくてはならん?商会の主としては、我慢できるだろう。奪われたモノが娘でなかったら、我慢も出来た。だが、父親としては無理だ。この腹の奥から煮え滾る憤怒は抑え込もうにも難しい。もしも娘がこの様に無事に戻って来てい無ければ、私は徹底的に、全ての力を振り絞ってこの町の腐った部分を叩き潰していた所だ。」
覚悟が決まり過ぎていたケルカム。どうやら賄賂やら袖の下等で買収されてる輩、役人たちにも制裁を加える気でいた様子。
(ギリギリ間に合った感。もうちょっと遅かったらこの町、壊滅所じゃ無かったんじゃないか?)
過激派どころの騒ぎじゃ無かった。大事な物を奪った者たち、それに関係している輩も一切合切、余さず一人残らず殲滅、ぶっ飛び過ぎだ。
「コレを抑えるだけの理由があるのか?ソレが無ければ幾ら恩人の頼みとはいえ、聞けんぞ?」
「お父様、抑えてください、堪えてください、お願いしますから。どうか、どうか。」
ここでミーチェがそう言ってケルカムを慌てながら宥めた。




